【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第10回
「盲亀腐木の縁(もうきふぼくのえん)」
太平洋の深い海底に、一匹の目の見えない大海亀が住んでいました。
この大海亀は、百年に一度だけ海上に出てきて、新鮮な空気を吸って、
ふたたび海底にもぐってゆきます。
百年に一度しか海上に出てこない大海亀が、いま浮き上がろうとしているところへ、
たまたま古びれた板切れが一枚ただよっていました。
その板切れのまん中には、穴が一つあいていました。
そして、大海亀がまさに首を海上に突き出そうとしたとき、
目が見えないので古い板切れの穴に首を突っ込んでしまったのです。
このように、めったにないチャンスを「盲亀浮木の縁」といいます。
これを読んでくださっているみなさまとも、こうやってご縁を頂いているのも、
奇しき盲亀浮木の縁なのです。
本当にご縁とは、不思議なものですね。
この言葉を教えてくださったのは、ご紹介している本の著者でもある、大栗道榮和尚です。
今から約30年前に、何を思ったのか、大学の卒業旅行で四国のお寺を1人で歩いてみたくなり、
徳島県と高知県のお寺を1ヵ月かけてお遍路してきました。
そのときに、和尚のお祖母様に、四国八十八ヶ所の十三番の大日寺さんの宿坊でお世話になり、
それがきっかけで、東京に帰ってから和尚にご縁を頂きました。
和尚自体も、僧侶でありながらも、密教の教えを活かし、
当時、広告流通業でアイディアを生かした商品で特許などをとり、
それで財を築き、代々木にお寺(大日寺)を建立された経営センスのある方でもあります。
当時、(20代の頃)「仏教を経営に活かす修行塾」というものに、
会社で働きながら通ってお世話になっていました。
和尚は、残念ながら今年お亡くなりになりましたが、
生前に沢山のことを教えていただきましたが、まさに私にとっては、盲亀浮木の縁でした。
参考文献 『ポケット般若心経』(大栗道榮著 KADOKAWA/中経出版 )