デフォルト対応議論
【カンヌ=宮崎誠、幸内康】3日開幕した主要20か国・地域(G20)首脳会議(カンヌ・サミット)は、ギリシャの内政に振り回される波乱の幕開けとなった。
しかし、ギリシャを巡る今回の混乱が決着したとしても、世界経済の先行きは楽観できない状況だ。
オバマ米大統領は、サミット前にサルコジ仏大統領と会談し、欧州の財政・金融危機の解決が今回のサミットの最重要課題であると強調した。
ロイター通信によると、サミットでは、ギリシャが「突然のデフォルト(債務不履行)」に陥るケースや、ギリシャがユーロ圏を離脱するという「最悪のシナリオ」が起きた場合の影響についても議論しているとみられる。
先進国の経済成長率の見通しは下方修正が相次いでいる。経済協力開発機構(OECD)は10月末、ユーロ圏の2011年の成長率について5月時点の2%増から1・6%増に、米国も2・6%増から1・7%増にそれぞれ引き下げた。
だが、この見通しでさえ、「近いうちに欧州危機と金融システム不安が沈静化する」という楽観的な前提に基づいたものだ。
ギリシャ情勢の行方は不透明な部分が多いが、イタリアやスペインなども財政再建のための緊縮財政を迫られており、ユーロ圏の景気減速が想定以上に進む恐れがある。
ユーロ圏を含む欧州連合(EU)は、高成長が続く中国にとって最大の貿易圏であり、欧州の動向は中国経済にも影響を及ぼす。
中国の胡錦濤国家主席は2日夜、サルコジ仏大統領と会談し、「世界経済は多くの不安定さと不確実さに直面している。欧州の経済回復なくして世界経済の回復はない」と注文をつけた。
欧州危機が世界的な信用収縮につながる恐れも消えていない。
仏銀最大手のBNPパリバが3日発表した11年7~9月期決算は、保有するギリシャ国債に絡む損失が膨らみ、連結税引き後利益は7割を超える大幅減益となった。信用力が下がった欧州の銀行はいまも財務悪化と資金調達に苦しんでいる。
邦銀筋によると、ユーロ圏では大手銀行の一部ですら、資金繰りを欧州中央銀行(ECB)からの資金に頼る綱渡りの状態が続いているという。財務悪化をくい止めるために、貸し渋りなどが世界的に広がる可能性がある。
実際、欧米の投資資金が、新興国から急激に引き揚げられる動きが出始めている。G20では、そうした動きに対して新興国が一時的に規制を設けることも容認する見通しだが、それだけで十分かどうかは不透明だ。
野田首相は3日、カンヌでの講演でこう強調した。
「危機の伝染を遮断することが何よりも重要だ」
(2011年11月4日
読売新聞)
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