土屋龍一郎のブログ

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トニー滝谷1

2006-03-11 21:07:40 | Weblog
 村上春樹著レキシントンの幽霊に収録されている「トニー滝谷」が、市川準監督によって映画化されたDVDを借りた。
 レキシントンの幽霊は出版されてすぐ購入したがその帯(「楽しくて、でも怖い」という唖然とするようなコピー)からして気に入らない本で、最初に読んだ時には「なんだかなぁー」(長野弁風に)と感じて、放っておいたくらいだ。
 しかし何かの拍子に二回目に読んだ時に、「これは!」とはっとしたのが「沈黙」と「トニー滝谷」だ。
 「沈黙」は、集団読書のテキストにもなっていて、私は妻と長女を前にして一時間ほどかけて音読したことがある。
 「トニー滝谷」は村上さんの芸風である喪失感と愛する人が突然死んでしまう不条理をきっちり踏襲していて、しかも他の作品と比べると全体としてはとてもおさまりがよく話が終わっている。
 私は洋服屋にも関わっているので「目の前にきれいな洋服があると、私はそれを買わないわけにはいかないの。」という彼女の気持ちがとてもよくわかる。私も繰り返しセールにかかって売れ残った洋服の中からでさえ吟味して段ボール一杯の洋服を買ってしまったこともある。同じシーズンのパンツを4本買っても履ききれるものじゃないなどと気づきもしなかった。
 そういうものだ。
 そんな「トニー滝谷」がイッセイ尾形主演で映画化されたことを知ってから、いつか見たいと思っていたのだ。