浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

マシーネンクリーガー SS クラッフェンフォーゲル

2010-10-15 19:22:35 | Weblog
 シーカーをゆっくりとめぐらせて、岩場を見渡す。
 彼女の捕らえたデータは、人間の危険認知並に高速で処理される。
 彼女はふわりと浮上したまま音も無く進んだ。それが彼女の機能だからだ。反重力装置を搭載し、音も無く宙を進む。もとはといえば無人偵察メカなのだ。その機能は保たれている。
 シーカーを集積したユニットは、頭といっていいところにあり、つづいて小さな胴体がある。何しろ歩行のような入り組んだ動作をしないからだ。背部には剥きだしの反重力装置を並べていて、彼女をふわりと浮かせている。胴体の左側にはブレードアンテナを、右側にはさらに大きなアンテナを広げている。いずれも目標捕捉/火器管制システムの一部だ。それが彼女の機能だ。
 胴の下には長く長く棒状の支持体があり、その左右には、パンツァーシュレックを収めた発射筒を三つずつ取り付けている。支持体の先には分厚く装甲された記憶ユニットのカプセルが取り付けられている。
 彼女はクラッフェンフォーゲル。個体コードAF02。無人戦闘メカだ。いま、彼女に与えられている任務は、この岩場の捜索だった。この岩場に逃げ込み、姿をくらましている敵の姿を捉えねばならない。
 痕跡追尾のような処理量の多い行動は、クレーテには難しい。クラッフェンフォーゲル、そしてその母体となった偵察メカ・ノイスポッターの画像処理能力ならば、十分に可能なことだ。彼女はシーカーを近距離精密スキャンに切り替え、地面を仔細に分析していった。
 岩場の中を、足跡が点々と続いてゆく。
 彼女はそれを見つめ、そのあとを追って進み続けた。それは岩と岩の間を潜り抜け、時には折れ、開けたところは歩幅が増した。あるときは大きな岩の近くに足跡は寄り、立ち止まった痕跡もある。
 やがて足跡の歩幅は増し、足を速めたことがわかる。
 しかしそれはあるところで急に歩幅を小さくした。足跡は乱れ、痕跡はあいまいになるけれど、足跡は乱れているが、それでも先へ先へと伸びてゆく。
 大きな岩をめぐって、急に足跡の反応は途切れた。
 そこは岩に囲まれた行き止まりになっている。彼女はスキャンモードを切り替え、仔細に評価する。周囲に隠された足跡はない。移動した痕跡も無い。
 彼女はスキャン範囲を広げた。だが移動痕跡は見つからない。
 音響シーカーが音を捉えた。反響音を評価する。背後やや上部。
 彼女は、主シーカー郡を向けた。つまり振り返った。彼女が先に回りこんだ大岩の上に、一つの姿がある。人の姿に似たそれは、頭上に岩のようなものを振り上げ、振り下ろした。

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