真打昇進襲名披露興行中の浅草演芸ホールへ。
トリは日替わり出演なのだが、この日は弟子の柳家三之助がトリを取る日なので、披露口上を兼ねて小三治さんの高座があり、お目当てはこちら。
口上でのあいさつよると、弟子入りのために日参する入門希望者のうちには珍しく三之助は手紙を書いて入門してきたらしい。親子で挨拶に来た時に、母親がちょっといい女だったなどと、およそ母親の色香に迷って弟子入り志願を受けるようには見えない小三治が訥々と話す。披露口上の司会を務めた現・柳家小さんがなかなかさまになってる。
小三治の高座は「二人旅」。無骨な喋りの中に何とも言えぬ洒脱さがあって、これこれ、これが味わいたくて小三治の高座を聴きに来るわけです。
トリの三之助は「試し酒」。だんだん酔っ払ってくる権助がいい。こっちまで愉快になる権太楼には及ばないけれど、いかにも美丈夫の真打って感じ。
平日の浅草演芸ホールなのに立錐の余地もないくらい立ち見客でいっぱいだった。
荷物とコートを抱えての見物はかなり苦しい。入替なしではあるが昼の部が終わって帰るお客さんと交代でようやく席を確保できた。
披露興行がこの日は楽日で舞台を飾っていた披露目の品が片付けられた後の夜の部も満席。立ち見客も時間とともに増えてくる。
贔屓の古今亭志ん輔が「あくび指南」
金原亭伯楽は「真田小僧」。会長の馬風によるとこの人は学士落語家のはしりで、馬生にならずにあえて伯楽を継いだとのこと。こんなに寄席の雰囲気がしっとりと似合う噺家さんいない。
そしてこの日の収穫は、柳家三三の「権助提灯」。
独身イケメン落語家の三三さんが、ご本宅とご妾宅を行き来する旦那を演じるとどうなるか。いかにも女性からは反発を買いそうな噺なのだが、男性にも反感を抱かせずに女性の溜飲を下げてみせる見事なバランス感覚で演じてみせる。
風が強くて心配だから今夜は女所帯のお妾さん宅へ泊まってあげてと言われ、にんまりとご妾宅に向かった旦那さん。ご本妻の好意に甘えては今後、顔をあわせることができないとお妾さんに断られてご本宅へ。奥さんからは、それでは私の小言が効かなくなると、締め出され・・・。
そのたびに提灯を点けたり消したりしていた権助が、呆れて提灯を点けたままにしておいたと言うのに対して、妾宅の明かりがあるのにそんな無駄は商人としては許せないと旦那が小言をいう。
「おめえさん、自分で言ってて変だと思わねいかい」と権助。この台詞が絶妙である。
妻は一人いれば充分なのに、妾を囲ってよけいなお金を遣い、それを止めたらどれだけ提灯が買えると思っているんだと畳み込まれる。
権助の客観的な判断力と実に筋の通った反論に内心大喝采の私。
一人の男を奪い合う女同士の利害は、意外に一致している。自分ひとりを大事にしてくれない男心に対する恨みである。
これを聴いて初めて私は、落語に登場する権助というキャラクターに好感を持った。
こんな調子だから、柳家三三さんの女性ファンはますます増えるに違いない。
仲入りまで聴いて帰ることにした。時間の都合で権太楼さんの高座が聴けなかったのは残念だった。
(写真は買うたびに高くなっている「東京かわら版」、1冊630円也。それでも買っちゃうけど。)
トリは日替わり出演なのだが、この日は弟子の柳家三之助がトリを取る日なので、披露口上を兼ねて小三治さんの高座があり、お目当てはこちら。
口上でのあいさつよると、弟子入りのために日参する入門希望者のうちには珍しく三之助は手紙を書いて入門してきたらしい。親子で挨拶に来た時に、母親がちょっといい女だったなどと、およそ母親の色香に迷って弟子入り志願を受けるようには見えない小三治が訥々と話す。披露口上の司会を務めた現・柳家小さんがなかなかさまになってる。
小三治の高座は「二人旅」。無骨な喋りの中に何とも言えぬ洒脱さがあって、これこれ、これが味わいたくて小三治の高座を聴きに来るわけです。
トリの三之助は「試し酒」。だんだん酔っ払ってくる権助がいい。こっちまで愉快になる権太楼には及ばないけれど、いかにも美丈夫の真打って感じ。
平日の浅草演芸ホールなのに立錐の余地もないくらい立ち見客でいっぱいだった。
荷物とコートを抱えての見物はかなり苦しい。入替なしではあるが昼の部が終わって帰るお客さんと交代でようやく席を確保できた。
披露興行がこの日は楽日で舞台を飾っていた披露目の品が片付けられた後の夜の部も満席。立ち見客も時間とともに増えてくる。
贔屓の古今亭志ん輔が「あくび指南」
金原亭伯楽は「真田小僧」。会長の馬風によるとこの人は学士落語家のはしりで、馬生にならずにあえて伯楽を継いだとのこと。こんなに寄席の雰囲気がしっとりと似合う噺家さんいない。
そしてこの日の収穫は、柳家三三の「権助提灯」。
独身イケメン落語家の三三さんが、ご本宅とご妾宅を行き来する旦那を演じるとどうなるか。いかにも女性からは反発を買いそうな噺なのだが、男性にも反感を抱かせずに女性の溜飲を下げてみせる見事なバランス感覚で演じてみせる。
風が強くて心配だから今夜は女所帯のお妾さん宅へ泊まってあげてと言われ、にんまりとご妾宅に向かった旦那さん。ご本妻の好意に甘えては今後、顔をあわせることができないとお妾さんに断られてご本宅へ。奥さんからは、それでは私の小言が効かなくなると、締め出され・・・。
そのたびに提灯を点けたり消したりしていた権助が、呆れて提灯を点けたままにしておいたと言うのに対して、妾宅の明かりがあるのにそんな無駄は商人としては許せないと旦那が小言をいう。
「おめえさん、自分で言ってて変だと思わねいかい」と権助。この台詞が絶妙である。
妻は一人いれば充分なのに、妾を囲ってよけいなお金を遣い、それを止めたらどれだけ提灯が買えると思っているんだと畳み込まれる。
権助の客観的な判断力と実に筋の通った反論に内心大喝采の私。
一人の男を奪い合う女同士の利害は、意外に一致している。自分ひとりを大事にしてくれない男心に対する恨みである。
これを聴いて初めて私は、落語に登場する権助というキャラクターに好感を持った。
こんな調子だから、柳家三三さんの女性ファンはますます増えるに違いない。
仲入りまで聴いて帰ることにした。時間の都合で権太楼さんの高座が聴けなかったのは残念だった。
(写真は買うたびに高くなっている「東京かわら版」、1冊630円也。それでも買っちゃうけど。)
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