パペット劇場ふらり旅 ~広島~

芝居好きの私がめぐり合った人形劇の魅力、たっぷりとお伝えします。

桃月庵白酒 & 春風亭一之輔 二人会 (第六回生らくご会)

2010-02-14 | 落語
会場の広島工業大学広島校舎に少し早めに着いた。受付を済ませると待合いと札の掛かった1階の小部屋で待たされる。入場整理札は「り」、うわぁ、後のほうだなと思っていたら、これがいろは順なのね。

落語会の会場は5階でちょうど広さが池袋演芸場くらい。まるで東京の寄席にいるみたいです。


本日の演目は以下のとおり。

桃月庵白酒       「つる」

桃月庵白酒という名前は江戸時代からあるそうで、当代で3代目。
物珍しい名だが噺家の名前としては覚えにくい。本人が言うとおり何となく和菓子屋みたいな名前だし。
「つる」は、鶴の名前の由来を話すご隠居さんがかなり照れていたのが印象的。ウソっぽいのがバレバレなのだ。

春風亭一之輔     「明烏」

バレンタインの前日ということで、その話をマクラに、あんな甘いものはどうせ喰わないのだからと迷惑がってみせる。見栄っ張りの男の本音は判り難い。
高座の仕事先にやたら落語に詳しい小学生がいて、まだ二つ目の自分の顔を見ただけでわかったり、マクラを聞いただけで演目がわかったり。大人の落語ファン顔負けらしい。
子ども客が一人だけだと言い訳しながら、確信犯的に廓話に入る。この噺、そういえば久しぶりに聴く。草食系男子ばかりの世の中で、初心(うぶ)で生真面目な若旦那像は意外性に欠けるせいかしら。
二つ目の頃の小朝の高座を思い出した。いかにも札付きの源兵衛や太助、花街の女将やおばさんも達者に演じながら、時次郎の初々しい若旦那振りがなんとも色っぽかった。当時、高座でこんな余技も見せていました。
一之輔さんの噺は、帰ると言って愚図る若旦那に、とっさの機転で「大門で留められる」と嘘をついた太助に呑み込みが悪い源兵衛が何度も頓珍漢な返事を返すシーンがありここをとても丁寧に演じていたのが印象的だった。コミュニケーション能力が落ちているという現代の日本人、悪事の口裏あわせも下手糞になっているんだろうな。喜ぶべきか、悲しむべきか・・。

  ~ 仲入り ~

春風亭一之輔     「長屋の花見」

二席目は、柳家が得意とする長屋話。高座着を着替えてくる。男前だし、着物もよく似合う。
ただ高座着はこの2枚だけしか持っていないそうで、笑っていただくのが一番と言いながら、形で表すご贔屓もありますと笑いを取る。季節は少し早いが長屋の花見。


桃月庵白酒       「転宅」

若い一之輔さんのバレンタインに対する屈折した憤懣を余裕でからかう。自分のように40を過ぎるももう何でもウエルカムです。ただし、本命チョコじゃないのは分かっているのだから、あまり「義理だ、義理だ」と強調してくれるなと言い、次の噺に続く見事な伏線のマクラにしてみせた。
この日の「転宅」は、私がいままで聴いた「転宅」の中で一番面白かった。ちょっと小太りの白酒さんのどこか抜けたような人の良さを感じさせる印象が、この噺の中に出てくる間抜けな泥棒に実に「にん」が合っている。すっかり騙されて「真面目に泥棒やっててよかった」と呟く場面なんか最高。

さすがに真打。登りっ調子の二つ目さんと較べてさえ、明らかに一線を画す高座であります。
ただしこれは、決して真打だから巧いわけじゃなく、本人の芸への精進の賜物であります。

一年365日、毎日やっている東京の寄席でも、この人、真打?という面白みのない高座を勤める芸人さんは幾らもいる。都内に4件しかない定席を掛け持ちする売れっ子もいれば、そもそも席亭から声が掛からず滅多に寄席の出番がないという真打だってかなりいるのである。

寄席の定席は、のんびりと寛ぐお遊び場所であります。詩歌集と一緒でへぼがいるから名人の高座が際立つ。玉石混交だからこそ、そこから将来の名人となろう若手芸人を贔屓にする楽しみも出てくるわけです。
ただ、こういう寄席の楽しみ方は、残念ながら地方にいてはできません。時間的にも経済的にもすごく難しい。

落語好きが嵩じて個人の責任で地方各地で落語会を催そうという奇特な方がいてくれるおかげで地方の落語ファンは細々と命を繋いでいるわけです。感謝!


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2 コメント

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Unknown (りか)
2010-02-15 01:57:08
 わあ~。早速のブログアップ、ありがとうございます! 「広島で生の落語を聴く会」代表の「りか」です。 今回も楽しんでいただけたようで、良かったです♪
 個人でやっている小さな小さな会ですので、こうした口コミが頼りですので、今後とも、よろしくお願いいたします。
 あ、ちなみに裏話を一つ。白酒師匠がマクラで落研の女性部員をネタにしていましたが、その際、「裕木奈江を3日間ぐらい……」とやっていましたが、当節の大学生には「裕木奈江」が通じておらず、「すぐにネットで調べました」と言われ、世代間ギャップに打ちのめされ?ておられました(笑)。
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きょんきょんショック (おけい)
2011-05-14 17:37:25
仕事の都合で急に喬太郎さんの会にいけなくなったのは残念でした。

以前にアップした井戸の茶碗の感想にはいまだに訪れて下さる人も多くてアクセス数に貢献して貰っています。

また是非「生らくごの会」聴きに行きたいです。
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