パペット劇場ふらり旅 ~広島~

芝居好きの私がめぐり合った人形劇の魅力、たっぷりとお伝えします。

中国地区高校演劇発表会初日(11月26日)

2005-11-26 | 高校演劇
中国地区発表会を広島市で開催するのは15年ぶりだそうです。
学校行事として学校会費で開催されているのかと思っていたら、運営費は広告料で賄われていてこの不況で当初予定の6割ほど、69万円しか集まらなかったという。

演劇という文化は中央集中が激しく、地方にチャンスは少ない。
芝居を見ようと思ったら高校演劇くらいしかないという地域もあるときいた。
演劇というジャンルの重要な担い手でもあるのよね。

発表会に行ってきました。制限時間は1時間だが全部を見るのは無理。せいぜい3校かなと思ったのだけれど、三刀屋高校もぜひと言うコメントを頂いたので4校見てきました。
ノートルダム清心から島根の三刀屋高校まで。芝居4つは、かなりシンドかった。

商業演劇にしてもアマチュア演劇にしても観客が来てくれないことには成り立たないのでエンターテイメントを意識した仕上がりになっていることが多い。
それに較べると一般の観客をあまり考えなくていいせいなのか?
高校演劇って、意外と「芸術してるなぁ」という印象。

広島県 ノートルダム清心高等学校「スティル・アライブ」(生徒創作)

今回の参加高校の中では唯一の私立高。市内では一番入学の難しい女子高校である。清楚な制服姿がかわいい。
広島3高はいずれも原爆関係の芝居で参加しているのだが、
ここは生徒の兼桝綾さん(2年生)の作品で創作脚本賞を受賞している。

舞台装置の味気なさも衣装の素人っぽさも台詞の力量もどこから見ても高校演劇なのだがやはり脚本(もしくは演出も)の出来のよさが際立つ。
原爆後の広島で生き延びた子どもたちが食べるために米軍の合唱隊に雇われて・・というお話。
原爆を落としたアメリカ軍にどうしても馴染めない少女や反感を持つ市民。
広島で原爆を体験した人への偏見や差別。相容れない感情を抱えた人々の和解を僅か1時間の芝居の中で描いている。
演劇部員は全員女子だから男役は勿論、アメリカ兵まで演じてしまう度胸のよさと劇中で歌われる平和の歌の清潔な印象が高校演劇らしい魅力を感じさせる。
台詞で何かを訴えるアマチュア演劇にありがちな芝居ではなく、シチュエーションで観客の中に想起させ訴えかける巧みな芝居作り驚く。
子どもたちが歌っている曲を登場したダニーというアメリカ兵がハーモニカで演奏していっしょに歌うシーン。
迎えに来た兄を受け入れようとしない妹、合唱隊で歌う友や娘に反感を持つ家族が一緒に共同して子どもたちの家を建てるシーン。
子どもたちの合唱で朝鮮に出兵するダニーの敬礼シーン。
高校演劇には珍しく、落としどころというか思わず胸を熱くするシーンが何箇所もある。

ラストの出兵シーンを甘いと取るか、皮肉と取るか?

この初々しさで全国大会は難しいと思うけれど
芝居の作り方としては驚くほど正攻法で、真っ向勝負であることに驚く。
甲子園だったら初出場ながらさわやか打線で勝ち進み、ファンが増えそうな感じね。


山口県立華陵高等学校「また明日」(生徒・顧問創作)↓学校HPは下を参照

30代独身女性の部屋の中が舞台。対面キッチンと冷蔵庫。テーブル、クッション、シングルのベッド。
舞台美術さんがたくさんいるのかな。こんなのを演劇部で拵えるのは大変よ。
衣装もちゃんとしていたし、30代くらいの女性は女子高生でもなかなか達者に演じている。内容的にも演技的にもアマチュア劇団の3回目公演くらい。
テレビのシーンが挟み込まれるのはこの高校の十八番なのかな。


鳥取県立米子西高校「6月のフューネラル」(生徒創作)

舞台は灯ろうを模したようなとても洒落た舞台デザインでした。
一人暮らしの高校生にしては居間と寝室と台所があって部屋が広すぎるよなあ。
芝居の中味が観念的過ぎて(死んだあとの不安)、台詞が叫びすぎていて、学生演劇ののりだ。
3つ目はさすがに疲れが出たのか、途中で少し寝てしまう。
う~ん、死って高校生には切実なのかなあ。生きてくほうが大変だぜ。


島根県立三刀屋高校「三月記~サンゲツキ~」(教員創作)

先生役の男子と卒業生役の女の子と不登校だったもう一人の女の子とキャストは3名。卒業式当日のシーンなのでうち二人は制服姿のまま。
前半は先生と生徒のほとんど二人の掛け合いコントのようなもの。
自殺するのが教師のほうで、教員創作としては思い切ったというかそんな感じなのだろうけれどあの程度の毒では演劇としては生ぬるい感じだ。
高校演劇発表会で上演することに関してはインパクトがあったのかもしれない。
席に戻って観劇していた生徒も多く会場の安佐南区民センター(キャパ600名)は8割がた埋まっていた。
その拍手と熱気に驚く。私にはついていけない芝居だった。


あと2校を残して本日は帰ることに。
時間と体力があれば全部見たかったのですが、残念。

ちなみに中国地区大会はどんな人たちが審査するのか興味があった。
講師に劇作家の篠原久美子さん、埼玉から全国大会出場歴も多い若林一男先生、
これは甲子園で言うところの地元校の名監督ということか。
審査員として中国各県より高校の先生方5人。
県大会は当日プログラムによると、山口県大会には演出家の篠崎光正さん、鳥取県大会は演劇プロデューサーの柴田英杞さんらが審査員である。他県は記載なし。

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2 コメント

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はじめまして (Kazane)
2005-11-27 02:14:01
私も今日会場に行っていた、三刀屋演劇部OGです。

といっても、現在の三刀屋顧問の先生世代ではないので、ちょっと客観的に見れますが…。

以前こちらのブログで書かれていたように、高校演劇は顧問に非常に左右されるわけですが、今の三刀屋の顧問の先生が、県下一番人気の脚本書きの方なのです……一昨年、他校で全国も行かれているので、多分客席が多く埋まっていたのは、昨年も(三刀屋は)出てて、名前が知られているというのと、その先生のファンっていう生徒や顧問のためだと思います。

なんというか、多分、今の高校生に受ける脚本なのではないかな、と思います。

わりと、高校演劇で受けるタイプの演出でもあった気がします。

もっとも、清心のお芝居も、直球全国コースでしたが(歌は強し)、現役の高校生たちには、三刀屋のテンポと勢いが「ヤバイよ、うちヤバイッ」と思わせるのですかね?
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高校演劇にも流行があるのですね。 (おけい)
2005-11-27 11:05:25
コメント、ありがとうございます。

芝居が三つ続いたので、コントも面白いなあとは思いました。演劇を見限るというのもひとつの選択ですから。

ところが、ひとつギャグをはずしても次で受ければいいやという安易な展開。立ち位置にしてもむやみに動き回るだけであまり効果は無い。上演時間の大半をこれで見せられる方は堪りません。医者と患者、泥棒と警官のキャラを入れ替えただけで充分面白いわけでその教師・生徒バージョンに過ぎない。間や口舌の悪さはコントとしても二流では?



ペンは剣よりも強しといいます。

ですから武器に例えるのは不謹慎なのですが、斧を振り回せないからといって(しかも切れ味の悪い)剃刀に持ち変えるのは戦略的にも疑問。はなはだ勿体ないと思います。
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