終演後、急いで上野の鈴本演芸場に駆けつけたものの、危惧したとおり満員札止めでガックリ。滅多にない上京の機会、平田オリザのあとに寄席見物というスケジュールもご容赦戴きたい。
もしやの期待を胸に上野広小路から地下鉄で浅草へ。トリの小三治さんが休演の浅草演芸ホールへ。立ち見ではあったがなんとか入れた。代演は正蔵だという。
途中入場なので扇橋さんのお喋りから。立ち見だったが、入れ替えなしなので途中で帰るお客さんも多くしばらくしたら座れた。
林家正楽 「紙切り」 ご挨拶代わりに「相合傘」、注文で「藤娘」と「スパイダーマン」を切って高座をおりた。もうすっかり貫禄ですね。
柳家〆治 「松竹梅」
林家しゅう平 「タカラヅカ」 プログラムと違うので客席が動揺。代演などには驚かないものだがお目当ての柳家権太楼が休演なのかと思うと気もそぞろ。三平継承のミュージカル落語にしゅんとなる場内。(手許の『東京かわら版』でみるとこの時間、彼は横浜にぎわい座で独演会)
柳家小菊 「粋曲」 美人で華やかな三味の音に気を取り直す場内。
三遊亭金馬 「禁酒番屋」 手堅く高座を締める。
~ 仲入り ~
柳亭燕路 「素人芝居」 権助が似合う噺家さんである。
花島世津子 「マジック」 洋服姿で。お客さんの引いたトランプ、切り抜いた紙で当てる手品はお見事。
橘家圓蔵 お喋り。貧乏話をさらりと。落ち着きのない派手な芸風だった円鏡さんも渋く円熟って感じ。寄席に来ないと見られないよ。
柳家さん喬 「天狗裁き」 さん喬さんには珍しくたっぷりのマクラ。若いころはストイックなくらいマクラを喋らない噺家さんだったのだ。コンビ二やファミレスのバイトさんの言葉遣いやカラオケの呼び込みに憤慨。この人が浮世を話題にするだけでなんとも言えぬ可笑しみがある。春のこの季節ならではの「天狗裁き」は以前に聞いた噺だ。何度もある繰り返しでどうして笑いが取れるのか。思えば芸人心をくすぐる噺なのかもしれない。
昭和のいる・こいる 「漫才」お二人ともお歳だろうにこの過激な漫才には脱帽。
浅草演芸ホールは客席が大爆笑するとドーンと衝撃音がする。ドカン、ドカンの連続である。
三遊亭歌之介 「爆笑落語」(沖縄の話) 出のときから拍手と大歓声である。静まるのをまってゆるりと歌之介ワールドの開始である。話題もさることながら客席を読む間合いが絶妙。思わずクスリが大爆笑になる不思議さ。笑い続けて観客が死ぬのじゃないかと心配になる。
翁家和楽社中 「曲芸」客席が温まると曲芸の妙技も大歓声の中だ。「五階茶碗」も3人による「ナイフの交換採り」も。タネも仕掛けもない曲芸大神楽の魅力満載。ご存じない方はこちらのHPで。
林家正蔵 「新作落語」。真打といっても玉石混合なんだしましてや新人真打なのだからとは思うもののあの派手なお披露目興行での真打昇進。楽屋雀はつい辛口になる。
息子が学校の読書の時間に父の書棚から持ちだした本がじつはエロ本だったという新作噺。先が読める展開で気が抜けちゃう。礼儀正しいひ弱な二代目(正式には9代目だが)の印象の高座にこの新作噺が合わない。いったい文庫や雑誌ならまだしもハードカバーのエロ本ってあるの?誰が作った新作だ~と憤慨する私。
すっかりダレ気味の観客席が温まりだしたのは、燕路さんあたりか。
さん喬の高座を堪能した客席はのいる・こいる、歌之介ですっかり昇り調子。膝替りの太神楽もピタリと決まり、トリの直前で客を帰すものかという気合を感じた。正蔵はよほど楽屋仲間に愛されているのだろう。
高座に上がる芸人がひとりひとり繋いで観客席を温めていく。ある意味チームプレーなのかもしれない。落語会にはない寄席の魅力である。
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