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昭和五年九月十四日
球磨川づたひに五里歩いた。水も山もうつくしかった。筧の水を何杯飲んだことだらう。一勝地で泊るつもりだったが、汽車でここまで来た。やっぱりさみしい、さみしい。(中略)
一刻も早くアルコールとカルチモンを揚棄しなければならない。アルコールでカモフラージした私はしみじみ嫌になった。アルコールの仮面をはなれては存在しえないやうな私ならば、さっそくカルチモンを二百瓦飲め。
呪ふべき句を三つ四つ。(前掲書)
こう書いて、こんな句をあげる。
蝉しぐれ死場所を探してゐるのか
青草に寝ころぶや死を感じつつ
けふのみちのたんぽぽ咲いた
ここで泊らうつくつくぼうし
時に、山頭火、三十一歳。アルコールもカルチモンも死ぬまで手放せなかった。
球磨川づたひに五里歩いた。水も山もうつくしかった。筧の水を何杯飲んだことだらう。一勝地で泊るつもりだったが、汽車でここまで来た。やっぱりさみしい、さみしい。(中略)
一刻も早くアルコールとカルチモンを揚棄しなければならない。アルコールでカモフラージした私はしみじみ嫌になった。アルコールの仮面をはなれては存在しえないやうな私ならば、さっそくカルチモンを二百瓦飲め。
呪ふべき句を三つ四つ。(前掲書)
こう書いて、こんな句をあげる。
蝉しぐれ死場所を探してゐるのか
青草に寝ころぶや死を感じつつ
けふのみちのたんぽぽ咲いた
ここで泊らうつくつくぼうし
時に、山頭火、三十一歳。アルコールもカルチモンも死ぬまで手放せなかった。