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昭和五年九月十六日
けふもよく辛抱した。行乞相は悪くなかったけれど、それでも時々ひっかかった。腹は立てないけれど、不快な事実に出くわした。(中略)
鰯の新しいのを宿のおかみさんに、酢漬けにして貰って一本いただく。鰯が五銭、酢醤油が二銭焼酎が十銭。
二三句出来た。多少今までのそれらとは異色があるやうに思ふ、自惚れかもしれないが。
かなかなないてひとりである
一すじの水をひき一つ家の秋
焼捨てて日記の灰のこれだけか
それまでに書いていた日記を焼き捨てた、その灰がこればかりだとはというやるせない感慨をいだきながら、山頭火は旅をつづける。行乞とは、文字どおりの「貰い行脚」だ。
けふもよく辛抱した。行乞相は悪くなかったけれど、それでも時々ひっかかった。腹は立てないけれど、不快な事実に出くわした。(中略)
鰯の新しいのを宿のおかみさんに、酢漬けにして貰って一本いただく。鰯が五銭、酢醤油が二銭焼酎が十銭。
二三句出来た。多少今までのそれらとは異色があるやうに思ふ、自惚れかもしれないが。
かなかなないてひとりである
一すじの水をひき一つ家の秋
焼捨てて日記の灰のこれだけか
それまでに書いていた日記を焼き捨てた、その灰がこればかりだとはというやるせない感慨をいだきながら、山頭火は旅をつづける。行乞とは、文字どおりの「貰い行脚」だ。