じぶんの足でたつ、それが教養なんだ

「われこそは」と力まないで、じぶんの歩調でのんびりゆったり歩くのがちょうどいい。

ハマータウンの野郎ども

2006-04-22 | 論評(comment)
 反学校の文化の内奥から表層まで一貫している特徴は、「権威=当局」(オーソリティ)に対する、類型的でもあれば個性的でもある抜きがたい敵愾心である。(P.ウイリス)
 ウィリスはイギリスの社会学者。その著『ハマータウンの野郎ども』から、いくにんかの生徒たちの本音を。

 ジョウイ 教師はおれたちを処分できる。教師はおれたちよりもえらいんだ。やつらにはおれたちよりもでかい組織が控えてる。おれたちのはタカがしれてるけど、教師はでっかい制度を味方にもってるものな。それでも、言いなりになるってのはシャクじゃないか。なんていうかな、権威ずくってのはムカツクね。
 エディ 教師だからっていうだけで、教師は自分たちのほうがえらいし、力もあるんだって思ってるのさ。教師っていってもなんでもないのさ。ただのふつうの人間じゃないかよ、なあ。
 ビル 教師って、よほど何でもできると思ってるんだ。そりゃ、おれたちよりはできもよくて、えらいかもしれないけどさ、やつらはそれよりもっとえらいって思ってるんだぜ、そんなことないのにさ。
 スパンクシー ファースト・ネイムで教師を呼びつけにできたらどんなにいいだろうな。やつら、まるで神さま気どりだもんな。
 ビート 神さまならよほどましだよ。
 筆者 教師のほうがえらいときみたちは言うが、教師のほうがものごとをよく知ってるってことは認めるのかい?
 ジョウイ まあそうだね。でも、だからといっておれたちよりも身分が上ってことにはならないよ。おれたちよりもちょっぴりかしこいってだけじゃないか。
 ビル 教師に対する態度ってものを連中はやかましくいうだろう。生徒のおれたちに接する態度ってものもあるはずだよ。(ポール・ウイリス『ハマータウンの野郎ども』)

 「ひとがひとを教えるという行為には優劣を争い合う関係が本来的に内在している事実を、教師達はよく知っている。〈勝つか負けるかの問題〉というにはそれなりの真実があるのであり、事実、教師たちにはそのように感じられるのだ」(同上) 

 教頭 生徒を目の前にして「うーん、こいつの勝ちだな、私の負けだ」って思わざるをえないような状況があるんですよ。もちろんきわどいところでしてね、ちょっとゴリ押しすれば教師のほうが勝って、それでその場はしのげるんです。
 校長 どうにでもしてくれ、ということで行動し始める生徒が一定数に達しますとね…かりに明日にもですよ、本校の生徒たちがいっせいになにか良からぬことを始めるとしますよ、そうすれば私に打つべき手がなにかありますかね。

 ハマータウンはいたるところにあるんじゃないですか。もちろん〈野郎ども〉たちも。
 学校受難の時代の幕開け、それとも終焉?