みどりのスケッチブック

いなかのくらしと身近な自然のスケッチブック。

雛猪

2013年03月24日 | 初級猟師
鳥猟のお話も終わり、ブログの内容もようやく3月に追いつきました。

実は2月ぐらいから農家の人に頼まれて、畑に出てくるイノシシを捕まえるために新しい猟場に罠を設置していました。
他の罠は徐々に減らし、2月中には山の猟場と畑の猟場と2か所のみに罠を掛けていました。

新しい猟場はわりと家から近い山に囲まれた場所です。
ちょっと変わった場所で、狭い山道を入っていくと丘が開けて見晴らしがよくなります。
きれいに整備された田畑と耕作放棄されて笹藪が生い茂った場所が入り混じっています。



少しくぼんだ場所は放棄地で藪が生い茂り、近くには竹やぶもあってイノシシが暮らすには心地よい場所のようです。

ここの畑では農作業中にイノシシが出てきて平気な顔をして歩いているそうです。
農家の人はイノシシが出てくると恐ろしくて動けないそうです。
本当はイノシシの方が臆病で、すぐに逃げてしまうので堂々としていればよいのですが、マスコミの報道などで恐ろしいものという先入観が植え付けられてしまっているようです。
仕方がないことですが、農家の人こそイノシシの正しい生態をもっとよく知るべきだと感じます。

罠をかける前に下見で辺りを少し歩いてみました。
イノシシが出入りしている藪の入口は笹やイバラが生い茂り入りにくいのですが…



分け入っていくと、外から見えない場所に少し開けた心地の良い場所があります。



藪の下は日陰になり、ゆったりと寝ころぶスペースがあります。
適度に風も抜けて、外から見えないこの場所は夏場には絶好のくつろぎスペースになることでしょう。
イノシシでなくともずっとここで寝そべっていたくなるような場所でした。
このあたりにはきっといくつもこういった場所があるのでしょう。
暮らし心地は抜群だろうなぁ・・・。

そんなことを思いながら辺りを観察して歩きます。
親子連れの足跡が目立ちます。
大きな個体も少しはいるようですが、ほとんどは50キロ前後の中くらいのサイズのようです。
いろいろと下見をしましたがこのあたりは罠をかける立木も少なく、獣道も散らばっていてなかなか罠の掛けにくい場所でした。
それでも頼まれごとなので、なんとか数か所設置し様子を見ることにしました。

しばらくは空弾きの連続で、ぜんぜん捕まりませんでした。
場所はいいのですが、どうも罠の作動具合が良くないようです。
畑の人は会うたびに「獲れたんな!?」と聞いてくるので少々気まずくすごしました。

そして3月に入り、その日も最初に見た罠は空弾き。
ちくしょう、またか~…と思い、掛け直して次の罠へ。

次もどうやら空弾きのようです。
これでもう空弾きは2ケタになっているでしょう。
あまりの空弾きの連続に、

「あんたら、罠で遊んでおちょくっりょるんな!」
(「イノシシたちよ、罠で遊んで私を馬鹿にしているのかね!」)

と、ふてくされ、ぶつぶつ言いながら不用心に罠に近づいて行きました。
その時です。
罠を掛けていたすぐわきのがけ下に、草むらの間から生々しく盛り上がった茶色い土が見えました。



はうぁっ!!これはっ!



イノシシが罠に掛っとる!

瞬間素早く後ずさりをし、安全な場所へ移動。
ここの罠にかかれば道のわきのがけ下に落ちて寝ているだろう、そう思って仕掛けておいた罠でした。
案の定思った通りのパターンで掛っていたわけですが、気が緩んでいるときに掛ってるといつもドキッとしてしまいます。

イノシシをよく観察できる場所に移動し目を凝らすと、土と同化したような色合いで毛むくじゃらが眠っているのが確認できました。
あんなに車で走りまわったり、15秒に1回の割合でくしゃみをしていたのに微動だにせずに眠っていたのか…。
罠がどんな具合に掛っているのか確認するために、イノシシを起こそうとしてみました。
咳払いをしても、口先で音を出しても起きません。
最後に棒で草むらをガサガサ言わせてみると、イノシシはぴょこんと飛び起きました。
こういう音の方が効果的なのでしょうか?

飛び起きたイノシシは結構大きく見えました。
少しウロウロしましたがあまり動けない様子。
罠も足首に掛っているようです。
そして、私の方を見たにもかかわらずまた定位置に戻り眠りはじめました。
どうやらこいつは気の弱いタイプのようです。
アグレッシブなやつは人を見るとガンガン突っかかってくるのですが、気の弱い奴はコソコソ隠れたり逃げたりします。
アグレッシブなやつは私のビビりスイッチを入れることが多いのですが、今回は気の弱い奴だったのでがぜんやる気モードになりました。
はい、オイノコは小さい人間です。

後ろから回り込み、イノシシに近づきます。
かなりの近距離になってもおとなしいイノシシでしたが、やはり最後は戦いになります。
今回は途中でイノシシが戦いを放棄してお尻を向けたので思わず背中を掴んで引きずり出しそうになりましたが、その気持ちを抑えてうまく立ち回りやっつけました。
ちょっと気弱なやつだったので、やっつけるのもちょっとかわいそうでしたが駆除を頼まれているところなので容赦するわけにはいきません。
マタギはまた鬼になりました…。



今回のイノシシはメスでした。
脂もそこそこのっているようです。
何より頼まれていた場所でやっと獲れたので、心底ほっとしました。
これで農家の人にも申し訳がたちます。

引っ張ってみるとなかなかの重さです。
この日は日曜日だったので、師匠に頼んで車に積んでもらうことになりました。
結構重かったので、もしかして80キロあったりして~♪なんて思っていましたが、測ってみると68キロ。
がーん、70キロもなかったんかい!
まだまだ修行が足りません。

今期は不調でなかなか良い脂のものが獲れませんでしたが、今回の獲物は今期一の脂の乗りでした。



う~ん、美しいメス独特のみずみずしい脂!
猟期も終わりに近づいた中で、よいイノシシが獲れました。

そういえばこの日は3月3日。
おひな祭りに神様が良い猪をプレゼントしてくれたのでしょうか。
なにせ(ハンター)女子ですからね。(笑)

良い猪だったので久しぶりに猪骨スープを取りました。



スープからラーメンとポトフを作りました。
おいしかったです。

というわけで

♀68キロ


今回も

イノシシさん
山の神様
師匠に感謝!

ありがとね~!





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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いやいや (じゃん)
2013-03-24 21:50:45
気の弱いやつでも、そんな大きなイノシシをやっつけるなんてすご過ぎですよ
今回も笑えました♪

ブログリンクさせてもらいました。ご迷惑でしたらメールくださいな。
返信する
危険回避の手段 (川ガニ)
2013-03-25 00:03:26
「心底ほっとしました」という気持ちよくわかります!おめでとうございます。
ところで、今回も気合の入った素振り練習をやったのでしょうね。飛び道具を持っているのでそれを使ったらどうですか?私は故障していなければ100%同種系のものを使っています。
返信する
ギャートルズ? (小師匠)
2013-03-25 22:00:12
「はじめ人間ゴン」のゴゴン・ゴン!!!で、ごつん?
そんでもって、どりゃ~!のブスリ???
エイ!ヤー!!トゥ!!!では無い
「えいやー↑↑」を有効利用しませう。
きっと役に立つ! はず。。。


返信する
脂の乗り!! (山奥の人)
2013-03-25 23:55:25
初めまして、「山奥の人」と申します。
今月から、鳥獣害対策をテーマにブログをはじめました、よろしくお願いします。
70㎏近い猪の止め刺しって緊張しますよね。このぐらいの大きさの猪って、よく動くしワイヤーを切る可能性が高いと聞いたことあります。私も、銃を持っていないので、安全な止め刺しの方法を研究中です。
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じゃんさんへ (オイノコ)
2013-03-27 10:05:06
じゃんさんにはかないません。

リンクありがとうございます。
どんどんしちゃってください。(笑)

返信する
川ガニさんへ (オイノコ)
2013-03-27 10:14:46
ありがとうございます。
いつもはやばいと判断した時やビビりスイッチが入った時は応援を呼んでいます。
よく空気銃でやっつけたらとアドバイスされるのですが、小さいものは銃なしでやっつけたほうが早いし、大きなものは空気銃で半矢にして暴れてもらっても困るのでなかなか使う気になれません。一発で急所に当てられるほどのウデもないので・・・。
というわけで私にとって空気銃は鳥専用なのです。
ちなみに打撃系武器は素振り用のリーチの長いものと先端が重くなった柄の短いものの二刀流です。
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小師匠さんへ (オイノコ)
2013-03-27 10:16:55
えいやー?をぜひご教授ください。(笑)
返信する
山奥の人さんへ (オイノコ)
2013-03-27 10:21:13
はじめまして!
そこそこ大きなイノシシでしたが、本当に気弱な奴でした。
オスじゃなくて良かったです。
しかもかなりワイヤーが絡んであまり動きが取れなくなっていたのでそれほど危険はありませんでした。
銃を持たず、仲間も来てくれないとなると安全な止め刺しは重要になりますね。
お互い怪我の無いよう気をつけましょう!
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