日暮しトンボは日々MUSOUする

「花」が花弁になる過程







僕は時々、意味のないことに夢中になる。 

夢中になると周りの声が聞こえなくなるのだ。

今日もパソコン画面に向かってくだらない動画作りに熱中していると

彼女が後ろから覗き込んで呆れ顔で見ている。

表情を見なくてもわかる、いつものことだ。

ま〜た変なもん作ってる・・・・・ って思ってる。

彼女がヒマそうに言う。

ねぇ… それいつまでかかんの?

ん〜〜 わかんね。 

ひとりの世界にばかり閉じこもってないで、どっか美味しいもんでも
食べに行こうよ。

と、彼女は僕の左肩に顎をのせる。

う…うん これがすんだらね。

今の僕は目の前に画面しか見えていない。

後ろでため息が聞こえたような気がしたが、それがいつものやり取りの
終わりを告げるサインだ。


こうなると何を言っても無駄だことを知っている彼女は、黙って玄関から出て行く。


作業を始めた時は昼飯前だったのに、気がついたらもう部屋の中は暗くなっていた。

やっとできた ほら見てごらん 花が花弁になったよ。

と、振り返ると、 暗い部屋には君の姿はなかった。

パラパラと雨の音。  ありゃ〜降ってきたか。

窓を開けて暗い空を見上げて雨の降り具合を確かめる。

窓の下には環状線を走る車のテールランプが流れをつくる。

夜になり 雨の音がどんどん強くなる。

彼女の行き先はわかってる。
僕に相手にされない時は、一人でファミレスのドリンクバーで時間を潰してるのだ。




そういえば僕も昼から何も食べてないな。

しゃ〜ない…     そろそろ迎えに行こう。  


僕はビニール傘を2本持ち、サンダルを引っ掛けてワンルームのドアを開けた。





何気ない日常の中にも咲いている花を 時々は見つけてあげないと後悔するから。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

最近の「ネタ的なもの」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事