Conductor : Ivor Bolton
Don Giovanni : Erwin Schrott
Commendatore : Reinhard Hagen
Donna Anna : Anna Netrebko
Don Ottavio : Robert Murray
Donna Elvira : Ana Maria Martinez
Leporello : Kyle Ketelsen
Masetto : Matthew Rose
Zerlina : Sarah Fox
私はモーツアルトのオペラは実はそんなに大好きとはいえない。特に魔笛なんか好んで行くほうではない。そのなかではこのDon Giovanniはとても好きだ。まず喜劇的なところもあるが、だいたいは悲劇というかドラマチックではないか。観客の中に子供がいるのが見受けられたが親はいったいなんの気でつれてきたのだろう。オペラに映画みたいに年齢制限があったら、これはきっと「18」のしろものなのに。このROHの演出はまあ「15」ぐらいかもしれないが、1,2年ほど前にみたENOの演出なんか日本の映倫でいったらXXXといったところだろう。
今回の舞台は前にみたブリンがジョバンニをやったときと同じだが、主役はSchrottというウルグアイからのバリトンでなかなかいい。歌もいいが、最後の場面では上半身裸になる。もちろん最初の場面もちらっといい体をみせるのだが、この最後の場ではみごとに鍛えられた体が主役みたいなものだ。最近のオペラ歌手はハリウッドの俳優に負けないくらいの鍛錬が必要なのだ。これならちょっと前に見た「300」の主役もはれるほど。
女性陣のなかではやはりNetrebkoがすごい。なんといってもあの声量がすごい。普通に歌ってても大声なんだから、声を張り上げるとまるで大砲の弾がとんでくるみたいにドシンドシンと観客の体に体当たりしてるみたい。なるほどこの声で有名になったのはうなずける。声の大きさに比べて技量はもう一つと思ったが、姿形も顔もいいし、大スターの貫禄はある。
ElviraのMartinezはかわいいし、いい声なんだけど、Netrebkoにくらべるとなにかピストル、というか豆鉄砲ぐらいの差があるなあ。Don OttavioのMurrayはいい声なんだけど、ところどころ声がでてない。
最後の幕では火がボッと燃え上がり、そうとう離れているはずの私たちのところまでその熱がつたわってくるほどだ。万一のために消防士でも控えているのだろうか、とよけいな心配までしてしまった。数々のアリアもすばらしいし、レポレロの例のコミカルなGiovanniの数々の女性歴の歌もおかしいし、全くよく出来たオペラだ。最後にGiovanniが地獄に落ちるからにはやはり教訓劇なのかと思ったら、最後の一瞬でやはりGiovanni は地獄に落ちても変わらず女性と楽しんでいるらしく、うまい演出だ。
このオペラを見るたびに芥川龍之介の短編の一つを思い出す。やはり女たらしの男の話だが、振り返ってみるとだまされた女たちはこの男を懐かしく思いだす、という話だったと思う。芥川はとても好きな作家の一人で、いつかまた読み返したみたい。
Don Giovanni : Erwin Schrott
Commendatore : Reinhard Hagen
Donna Anna : Anna Netrebko
Don Ottavio : Robert Murray
Donna Elvira : Ana Maria Martinez
Leporello : Kyle Ketelsen
Masetto : Matthew Rose
Zerlina : Sarah Fox
私はモーツアルトのオペラは実はそんなに大好きとはいえない。特に魔笛なんか好んで行くほうではない。そのなかではこのDon Giovanniはとても好きだ。まず喜劇的なところもあるが、だいたいは悲劇というかドラマチックではないか。観客の中に子供がいるのが見受けられたが親はいったいなんの気でつれてきたのだろう。オペラに映画みたいに年齢制限があったら、これはきっと「18」のしろものなのに。このROHの演出はまあ「15」ぐらいかもしれないが、1,2年ほど前にみたENOの演出なんか日本の映倫でいったらXXXといったところだろう。
今回の舞台は前にみたブリンがジョバンニをやったときと同じだが、主役はSchrottというウルグアイからのバリトンでなかなかいい。歌もいいが、最後の場面では上半身裸になる。もちろん最初の場面もちらっといい体をみせるのだが、この最後の場ではみごとに鍛えられた体が主役みたいなものだ。最近のオペラ歌手はハリウッドの俳優に負けないくらいの鍛錬が必要なのだ。これならちょっと前に見た「300」の主役もはれるほど。
女性陣のなかではやはりNetrebkoがすごい。なんといってもあの声量がすごい。普通に歌ってても大声なんだから、声を張り上げるとまるで大砲の弾がとんでくるみたいにドシンドシンと観客の体に体当たりしてるみたい。なるほどこの声で有名になったのはうなずける。声の大きさに比べて技量はもう一つと思ったが、姿形も顔もいいし、大スターの貫禄はある。
ElviraのMartinezはかわいいし、いい声なんだけど、Netrebkoにくらべるとなにかピストル、というか豆鉄砲ぐらいの差があるなあ。Don OttavioのMurrayはいい声なんだけど、ところどころ声がでてない。
最後の幕では火がボッと燃え上がり、そうとう離れているはずの私たちのところまでその熱がつたわってくるほどだ。万一のために消防士でも控えているのだろうか、とよけいな心配までしてしまった。数々のアリアもすばらしいし、レポレロの例のコミカルなGiovanniの数々の女性歴の歌もおかしいし、全くよく出来たオペラだ。最後にGiovanniが地獄に落ちるからにはやはり教訓劇なのかと思ったら、最後の一瞬でやはりGiovanni は地獄に落ちても変わらず女性と楽しんでいるらしく、うまい演出だ。
このオペラを見るたびに芥川龍之介の短編の一つを思い出す。やはり女たらしの男の話だが、振り返ってみるとだまされた女たちはこの男を懐かしく思いだす、という話だったと思う。芥川はとても好きな作家の一人で、いつかまた読み返したみたい。