公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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今読んでる 『西欧世界の勃興 新しい経済史の試み 』 ノース,D.C. & トマス, R.P.

2019-10-05 11:50:16 | 今読んでる本
西欧世界の勃興 新しい経済史の試み ノース,D.C. & トマス, R.P.
ロバ ート ・ト ーマスとの共著で 1 9 7 3年に発表された最初の代表作ともいうべき 『西欧世界の勃興 』 ( N o r t h a n d T h o m a s 1 9 7 3 )は 、その書名の示すとおり 、西欧世界が 1 6世紀以降に恒常的な経済成長という軌道に乗るに至った原因を探求するものであるが 、そこでは相対価格の変化が効率的な制度を生み出すうえで果たした役割が強調される 。つまり 、経済史においても新古典派的な経済理論が有用であるとされるわけだが 、その一方で新古典派経済理論の限界も鋭く意識されている 。


人類史における画期的な現象である近代西欧社会の形成。本書は、新古典派の経済理論と経済史分析の統合を目指すニュー・エコノミック・ヒストリーの名著。人口変動と収穫逓減の法則を組み込んだ効率的経済組織の発展こそが、この勃興の原動力であることを示す。巻末には、ダグラス・ノース氏(1993年ノーベル経済学賞受賞)と大塚久雄氏の対談「経済史の基本問題をめぐって」、速水氏の「ダグラス・ノースの経済学を語る」を収録し、装い新たに刊行する。(原書 Douglass C. North & Robert Paul Thomas, The Rise of the Western World : A New Economic History, Cambridge University Press, 1973.)


私有財産権の確立という意味では近代に先行する封建制度というものの登場が重要である。梅棹忠夫の1950年代の考察の方が優れている。『文明の生態史観』 梅棹忠夫『このようみてきますと、この種の知識人、すなわち、為政者の意識を持ちながら、しかも為政者から分離し、ある場合には為政者に対立的でさえある知識人の層というものは、やはり、高度産業社会の展開にともなって展開してきたもので、その点では、日本やフランス」、ドイツなどの、わたしのいう第一地域の特徴をなすものであるとみることはできないでしょうか。』20年近く先行している。ノーベル経済学賞に値するのは梅棹忠夫のほうである。


《同調性は 、不確実性の世界においては高くつく可能性がある 。それは長期的には 、停滞と衰退を生み出す 。人間は常に 、非エルゴード的世界の中で 、革新的な制度創造を必要とする新たな挑戦に直面する 。制度創造が必要なのは 、誰も生存のための正しい経路を知ることができないからである 。したがって 、ハイエクが思い起こさせてくれたように 、選択の一定範囲を許容する制度的多様性はすぐれた生存上の形質である 。》《「制度は社会におけるゲ ームのル ールである 。あるいはより形式的に言えば 、それは人々によって考案された制約であり 、人々の相互作用を形づくる 。したがって 、制度は 、政治的 、社会的 、あるいは経済的 、いずれであれ 、人々の交換におけるインセンティブ構造を与える 。制度変化は社会の時間的変化の様式を形づくり 、それゆえ歴史変化を理解する鍵となる 」 (邦訳書 p . 3 )という同書冒頭の有名なテ ーゼは 、経済史の専門家のみならず 、経済学者全般にとってのインスピレ ーションとなるものであった 。》

ダグラス ・ C ・ノ ース ( D o u g l a s s C . N o r t h ) 1 9 2 0年生まれ 。 2 0 1 5年没 。ロナルド ・コ ース 、オリバ ー ・ウィリアムソンと並ぶ新制度派の経済学者 。経済史の分野に経済理論や数量分析を導入した功績により 、 1 9 9 3年にノ ーベル経済学賞を受賞 。経済学に絶大な影響を与えてきた 。主な著書に 『西欧世界の勃興 』 (ミネルヴァ書房 、 2 0 1 4年 、共著 ) 、 『制度 ・制度変化 ・経済変化 』 (晃洋書房 、 1 9 9 4年 ) 、 『経済史の構造と変化 』 (日経 B P社 、 2 0 1 3年 )など 。

訳者あとがき
青木先生の仕事に対するダグラス ・ノ ースの影響は 、 2 0 0 1年に刊行された 『比較制度分析に向けて 』 ( A o k i 2 0 0 1 )における制度の概念化をめぐる議論の中に明らかであり 、入門書を意図して書かれた 『青木昌彦の経済学入門 』 (青木 2 0 1 4 )にもダグラス ・ノ ースに影響を受けたことが明示的に述べられている 。青木先生もまた 、若いときにマルクス主義者であったことは有名な話であるが 、ダグラス ・ノ ースとの知的交流も深かったようである 。
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