ファスト＆スロー

「注意を払う」とよく言うが、これはまさに当を得た表現である。というのも、注意は限度額の決まった予算のようなものだからだ。　ファスト＆スロー　ダニエル・カーネマン　著

速いシステム１が処理する混んだ道で運転をしながら遅いシステム２の領域の１７☓２４を計算するべきではない。注意力は限度を持つ。頭脳の中で何を処理するべきかは無意識の中で振り分けられている。休んでいる時も、眠っている時も速いシステム１は働いている。外部世界に対してとともに、内部に対しても気ままに働いている。チャブリスとシモンズの試行と同じようにシステム１を抑えこむと、ゴリラが横切っても半数は気づかない。それほどいい加減の注意力にたよってこの世の中は運営されている。システム１は捨てたものではない。構想力に影響するのはシステム１のヒューリスティックな速い答えを疑わない意志であろう。ヒューリスティックはバイアスや判断の誤りが強調されているが、それは研究がしやすいからであって、けっして劣った認識機能（認知行動）ではない。このような誤解は単にすぐれたヒューリスティックが研究しにくいという事情による。ある意味カーネマンによるアンカリングである。