国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

アメリカの劇場ユニオンって(2)

2009年08月25日 | アメリカ劇場事情
今回は“ユニオン”ルールの中でも、一般的なものや、日本では馴染みのないものを紹介したいと思います。

Wash Hands Rule:
これは、「休憩の開始時刻の5分前には作業を終了してください」というルールです。例えばお昼休憩が1:00pmからだったとしたら、12:55pmには、すべての作業を止めなくてはなりません。1:00pmから1時間休憩を取ると言っておきながら、1:00pmに作業を止めたのでは、実際には1:00pmから休憩を取ることができないかもしれないからです。照明はデータを記録するかもしれないし、舞台スタッフは備品を片付ける時間が必要かもしれません。Wash Handsとは手を洗うことですが、実際に手を洗うかどうかはさておき、「決められた時間から休憩を取るためには、少し前に作業を終わらないと無理」と言う考え方から出たルールです。退館時間が10:00pmなら9:45pmには作業を終了して、10:00pmには劇場の外にいるようにする、というのと同じです。

このルールを厳格に言ってくる劇場は多くありませんが、名前が面白いので書きました。ただ、このルールを言われなくても、例えば作業を止めてから、実際に休憩に入れるまでに時間がかかった場合、実際に休憩に入った時間から1時間とする、ということは多くあります。1:00pmに作業を止めたけど、劇場スタッフが休憩に出られたのが1:05pmからであったなら、休憩は1:05pmから1時間とすることが多いですね。

休憩と労働時間:
アメリカの劇場では、最初に劇場に入った時間から4時間以内に1時間の食事休憩、次の5時間以内に2回目の食事休憩を1時間とるのが一般的です。あと、2時間に1回、15分のコーヒー休憩を取ります。これはユニオン小屋でなくても大体同じです。融通のきく劇場では、多少のズレや延長は大目に見てくれることもありますが、厳しい劇場では、食事休憩が短くなったり、時間通りに取れなくなると、meal penalty(ミールペナルティ)といって通常の時給の1.5倍から2倍、請求されることがあります。あるいは全く変更に応じてくれない場合もあります。

休憩は英語でbreak(ブレイク)と言います。コーヒー休憩はcoffee break、食事休憩はmeal break(ミールブレイク)、あるいは lunch break(ランチブレイク) dinner break(ディナーブレイク)と言います。

こういったルールは、やはり労使関係の歴史の中から生まれてきたルールだと思います。安全に、そして過度な労働を避けるための当然の権利とも言えます。日本では、休憩が無かったり、あっても短かったりすることが多いですが、本来、休憩時間などは守られて当然の労働条件だと思います。

ただ、アメリカの劇場でも、作業が明らかに押している場合、きちんと対応すれば融通をきかせて貰えることも多くあります。(聞いてもらえないこともありますが・・・)例えばスタッフの休憩をずらして順番に取ることで作業を止めない、などです。「作業が押しているんだから当然だろ」「金さえ払えば働くのだな」的な考えでアメリカ人スタッフに接するのは最悪です。アメリカ人スタッフは「そちらのスケジューリングが甘いから押しているんだろ」ぐらいに思っている場合もあります。双方が納得する形で解決策を見つけ出す努力をすることが重要です。


最新の画像もっと見る