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プロダクション・マネージャーって

2009年10月17日 | アメリカ劇場事情
プロダクション・マネージャーになるには、の続編です。

前回、「私の場合、日本で舞台監督の仕事を10年ほどやった後に、米国の大学院の芸術経営(アーツ・アドミニストレーション)プログラムに入学し、卒業後、劇場関連の雇用主をスポンサーとして就労ビザを取りました。(続く・・・)」と書きましたが、当初、プロダクション・マネージャーという職種が存在しているとは知りませんでした。ただ就職した団体は基本的には招聘事業が中心の団体だったのと、僕自身のキャリアが劇場技術が中心でしたので、その知識や経験を生かして、招聘事業を円滑に行うためのコーディネーター的な役割が求められました。

恐らく日本の演劇界にはプロダクション・コーディネーター、あるいはプロダクション・マネージャーと呼ばれる役職は存在しないのではないでしょうか?しかしながら、プロダクション・マネージャーが担当している仕事は日本の劇場や劇団の公演でも存在しています。ですから、日本ではその役割は制作と舞台監督とに振り分けられているのでしょう。

役職タイトルがない、ということはそういうポジションが存在しない、ということですから、日本でプロダクション・マネージャー職に就職する、というのは難しいですよね。ただ、日本の劇場現場を見ていて、プロダクション・マネージャーがいればもっと現場と制作がスムーズに進行するんじゃないかな?と思う場面は多いですから、今後、そういったポジションを名乗る人もでてくるでしょう。実際、制作という括りの中で、でもやっていることはプロダクション・マネージャーそのものという人もいるかもしれません。また今後、劇場主催の事業が増えるでしょうから、劇場側からそういったポジションの人が生まれる可能性はあります。希望的観測もありますが、今後劇場はソフト面を制作できる能力が求められるようになるでしょうから、であれば現場とプロデューサーを結ぶポジションとして活躍の場ができてくるんじゃないでしょうか。

個人的な見解ですが、日本の劇場の現場は、現場である技術スタッフと、制作スタッフのバランスが悪いことが多いように思えます。技術的な問題となると制作はついつい受身になる傾向がある気がします。どんな現場にも物理的な制限、例えば時間や予算、劇場の機能や広さなどがあります。プロダクション・マネージャーの仕事とは、そういった物理的な制限のなかで、なにを優先し、どこを制限し、演出・現場サイドと制作サイドの求める要求を経済的な制限も含めてどう調整し、どう円滑に作業を進めるかだと思っています。

日本の舞台監督は大道具の棟梁的部分が多い人もいれば、現場スタッフの代表だったり、現場の進行や段取りを仕切る人だったり、演出部の一員だったりしますが、制作の一員であることはあまりないですよね。プロダクション・マネージャーは現場の統括であり、同時に制作スタッフの一員でもあります。そういうポジションの需要は今後、増えてくるのではないでしょうか。

常々思っているのですが、劇場の仕事も、銀行の仕事も、商社もデパートも自動車メーカーも、職場という意味では同じです。それぞれに求められる専門知識が違うだけです。劇場や劇団で働くということは、全く特殊なことではありません。と同時に銀行で働くという特殊性は、同じく劇場や劇団でも存在するということです。劇場や劇団の運営も1つの職場であり、ビジネスですから、ある程度システマチックにんるべきです。プロダクション・マネージャーというのは、そのシステムに必要な機能ではないかなと思います。