国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

米国で就労するには

2009年10月13日 | アメリカ劇場事情
プロダクション・マネージャーになるには?
との質問をいただいたのですが、取り合えず米国の状況について書きます。

まず根本的な話ですが、米国の劇場や舞台関係の仕事に就くということは、つまり米国で就労する、ということと同じです。ですから、本人が米国の労働ビザなり、永住権なり、市民権なりを保持していないと合法的に米国で働くことはできません。移民法は頻繁に内容が変わりますし、移民法専門の弁護士が多数存在していることからも、その複雑さがうかがい知れます。また個々人の事情はそれぞれですので、ここではあくまで私が見聞きした事例について書きます。本気で考えるなら専門の弁護士なり業者なりに相談してくださいね。

通常、労働ビザにはスポンサー(通常は雇用主)が必要です。ですから企業の駐在員でもない限り、いきなり労働ビザを取得するのは困難です。一般的には、まずは学生ビザ(F1ビザ)を取得して米国内で希望する専門知識が学べる学校に入ります。舞台関係の仕事を希望するならば、劇場関係のことが学べる大学なり大学院に入るのが普通です。というのも就労ビザは米国で学んだ知識に関連のある職種に就かないと申請できないからです。これも原則論でビジネスを学んで、劇場の運営スタッフとして働く、というのは理にかなってますから、ある程度のフレキシビリティはあると思いますが。

大学か大学院を卒業すると、普通、1年間、米国内で研修を目的として就労する権利を得ます。これを俗にプラクティカル・トレーニング(PT)ビザと呼びます。しかし、PTビザはビザと呼んでいますが通常の就労ビザではありません。あくまで学生終了後、最大1年間、米国に残って実地で就労研修をしても良いという制度です。(ですので色々制限もあるのですが、それはまたの機会に)

PTはどこで働いても構いません。フリーランスとして仕事を請けることも可能です。しかし有効期間は1年間だけですから、多くの学生はこの期間に就職先を探して、たとえインターンとしてでも働かせてもらい、そしてPTが切れるまでに、その雇用主をスポンサーとして就労ビザ(OビザやH-1ビザ)を申請するのが一般的です。

デザイナーや演出家、役者、ダンサーなどはアーティストビザ(Oビザ)を申請することができますが、制作スタッフは通常の就労ビザ(H-1ビザ)を申請することが多いです。僕も雇用主をスポンサーとして就労ビザを取りました。このH-1ビザは3年x2回、計6年延長することが可能です。この間に次のステップである永住権(グリーンカード)を申請する、というのが一般的です。

Oビザと違ってH-1ビザは、スポンサーとなった雇用主の元でしか働けません。また転職もあまり自由にはできません。転職するには、H-1ビザのスポンサーの変更申請が必要でそれほど簡単な作業ではなさそうです。グリーンカードまで到達すれば、米国市民と基本的には同じ条件で就労することができるようになりますが、現在、グリーンカードは申請から取得まで5年から6年かかると言われています。

私の場合、日本で舞台監督の仕事を10年ほどやった後に、米国の大学院の芸術経営(アーツ・アドミニストレーション)プログラムに入学し、卒業後、劇場関連の雇用主をスポンサーとして就労ビザを取りました。(続く・・・)