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草の名

私が栽培している薬草や、道端の草でセルフメディケーションにも使える類の植物を紹介してゆきます。

ビワ

2015年12月25日 | 薬草・雑草

 ビワの花が咲き始めています。チョット目には、咲いたのかどうかは分かりづらいのですが、よく見れば小さな白い花が、見つけられます。                                      花を見るとが出来るのは、裏門から入って初めての曲がり角の左手にあります。

 ビワは初冬に花が咲くため寒害を受けやすいのか、咲く花数からすると果実は随分少ないように思えます。園では摘果や袋がけはしないので、果実が小さくて少ないのは当たり前ですね。何よりも、ビワの果実は寒さに弱いので、栽培の北限は千葉県となっているのでしょう。そういえば東北や北海道出身の人からは枇杷の花は見たことがないと聞いたのを思い出します。                                     ビワの葉については、「赤ちゃんの汗も」 http://goo.gl/1NuEPg でも触れましたが、昔から民間薬として利用されてきました。

  よく知られている利用法としては“ビワ葉湯”です。江戸時代には夏には暑気払いとして“琵琶葉湯売り”が売り歩いていたそうです。ビワ葉湯には、肉桂(にっけい)、霍香(かっこう)、莪述(がじゅつ)、呉茱萸(ごしゅゆ)、木香(もっこう)、甘草(かんぞう)の7品目を同量混ぜ合わせて、煎じて作ったものだそうです。

この中で生薬名を霍香(かっこう)というと、カワミドリ Agastache rugose を思い浮かべるのですが、霍香と呼ばれるのにもう一つあるので、どちらなのか迷います、もう一つは学名 Pogostemon cabli のパチュリです。調べてみるとお線香で有名な日本香堂さんのHPに、こちらは‘薫香としての利用されている’とあったので“琵琶葉湯”につかわれていたのは在来種のカワミドリと分かりました。このカワミドリは園に植栽していますので開花時期に、花や香りを是非体感してください。

  ビワ葉湯(ビワの葉茶)の効用としては、 ●疲労回復や食欲増進にはイワ酒にして  ●暑気あたり、風邪の予防や喉の痛みにはビワ葉湯を  ●あせも・皮膚炎・アトピーには部和の葉の煎液を  ●アトピーには、煎液を入浴剤として  ●火傷や捻挫などには葉を外用して等等いろいろ利用されています。

利用法はこちらhttp://1drv.ms/1JD9DZXを参照してください。 

ビワ葉湯を売ったり、其れを買ったりしていた江戸時代の庶民には、民間薬としての生薬の知識は、広く浸透していたのでしょう。現代の私達にはとても及ばぬところです。

 薬品には植物由来のものが結構多くあります。 厚労省のリストに、『医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト』には動植物・鉱物の一覧が載っています。興味のある方はこちらから http://goo.gl/EysJX4ご覧下さい。話の種にはなりますよ。

医療費問題が提起されている今の時代だけに、各々がセルフメディケイションを心しなくてはならないのではないでしょうか。                                                                                                                                                                                                      そそういった知識を得ることが出来る場として利用して頂けるなら、この園としての存在意義があるのではないか・・・と私は思っているのです。


今年のセンダン

2015年12月09日 | 薬草・雑草

 昨年は、センダンがたわわに実をつけていたことを、薬草園ホームページ「植物豆知識」に載せましたが、未だご覧頂いていない方はこちらからご覧ください。                                   http://www.nukada.or.jp/薬草園/薬草園豆知識/センダン/

ところが一番大きなセンダンは、今年は一つも実はつきませんでした。他の三本のセンダンのうち、未だ若い木にも全く実はついておらず、どうにか見ることが出来るのが一本と奥まった場所の一本だけが、遠目にもセンダンと分かるくらいに実をつけている状態です。

 おそらく、昨年は沢山結実したため勢力を使いすぎて、花芽の分化時期までに勢いを取り戻せず、花芽をつけられなかった所為だろうと思います。東邦大学のセンダンは毎年結実していました。それを見ていたので、こんなにも極端に違いが出ようとは思ってもみなかったことです。来年に向けて、どう扱えばよいのかを教わらなくてはなりません。

 昨日、「センダンの実」を探しに来られた方がありました。昨年はあんなに沢山の実があったので、其れを拾いに来られたのですが、お目当ての木には全く実は無いので、他の場所にある三本をお教えしました。

    「あんなに堅い実を、何に使うのかしら?」と訊けば「果肉を取り除いて、核果の中心に穴を開けて糸を通し、ネックレスを作る」とのこと。どのようなネックレスになるのでしょう。                                                         核果は堅く、穴を空けるのは難しいでしょうし、ネックレスともなると数も要るでしょうから、大変な作業になるでしょう。興味はありますが、手間を考えると手を出せそうにありません。

 薬用とするのは、秋に熟した果実(生薬名苦楝子)を採り、果肉部分を生のまま擂り潰して“ひび、あかぎれ、しもやけ”に外用するのですが、他にも利用法はあるのかと検索してみれば、耳寄りな記事を見つけました。

  それは、生物資源研究所の根路銘 国昭(ねろめ くにあき)所長が、“インフルエンザウイルスを特許センダンエキスで100%除去!出来る”とセンダンのエキスを発明され、既に製品化しているのだそうです。                             http://www.ippin-okinawa.co.jp/Dr.sendan.html

(根路銘 所長は、元国立感染症研究所の呼吸器系ウイルス研究室長や、WHOインフルエンザ・呼吸器系ウイルス協力センター長などを歴任された方です。)

 こちらには其の詳細が載っていますのでご参考に⇒http://goo.gl/Gx81ln

  今年のインフルエンザ対策は,心強い限りです。                                            そんなに効き目があるものなら、センダンの抽出液を作ってみようと思っています。

手っ取り早く、製品を買う方がいいかしら・・・・・

 


シャクチリソバ

2015年10月26日 | 薬草・雑草

 裏門から入って直ぐ、フジバカマが咲きそろっています。                                                                              その隣で咲いている白い花はシャクチリソバ Fagopyrum cymosum といいます。

耳慣れない名前でしょうが、日本人にとってはお馴染みの蕎麦の材料になるソバ Fagopyrum esculentum の仲間です。

  インド北部のヒマラヤ地方から中国仲南部が原産の帰化植物です。日本に渡来したのは昭和初期で、小石川植物園や薬草園で栽培されたものが、逸出して全国に拡まったと云われています。草丈は1mほどに伸びる多年草です。根元から叢生し茎は中空、下部が赤くなるのもあります。

  特徴的なのは葉の形で三角形かそれに近い形をしています。似たような三角形の葉をもつものに、イシミカワがありますが、こちらには全草に下向きの細くて堅い刺がついているので見分けられます。よく似た植物としてミゾソバが挙げられていますが、葉の形はミゾソバよりイシミカワの方が似ていると思います。

 

  シャクチリって、不思議な名前です。1880年刊行された中国の『植物名実図考』に 「赤地利」 として載っており、その漢名を日本語読みにしてシャクチリ、花がソバに似ていることからシャクチリソバとなったそうです。また原産地に因み「ヒマラヤソバ」とも呼ばれます。 

シャクチリソバも、ソバと同じように食べることは出来るそうですが、私は未だ試したことはありません。食べた人によると「不味かった」そうです。

  しかし食べるのには不味くても、シャクチリソバの全草は抗酸化作用としてのポリフェノールの一つであるルチンを多く含むので、脳出血、高血圧の治療薬の製造原料として導入され、盛んに栽培されていました。後になって、同じようにルチンの含有量の多い生薬の槐花(かいか)が輸入されると、栽培は急速に減少し、今では薬草園から逃げだして野生化しています。                                                                                                          生薬の槐花とは各地で街路樹に植えられている エンジュ Styphnolobium japonicum の開花前の蕾を乾燥したものです。

 エンジュは、よく似た近縁種のハリエンジュ(ニセアカシア)とは別の植物です。                                                              ハリエンジュというよりニセアカシアといった方が馴染み深いでしょう。随分昔に流行った曲「アカシアの雨の止むとき」の歌詞にあるアカシアは、このハリエンジュであるといわれています。このハリエンジュも有用な植物で、蜂蜜の蜜源、花は天ぷらに、ホワイトリカーに漬けてアカシア酒にしたりと食用として利用することが出来ます。

エンジュとハリエンジュの違いは「樹と木」に分かり易く載っていますので,こちらからご参照ください。http://goo.gl/L6Qxcc

野生化しているとはいえ、街中では余り見ることはありませんので、ちょっと足を止めてシャクチリソバをご覧ください。

 


マメガキ

2015年10月20日 | 薬草・雑草

 日の入りの時間が、19日には17:00だったのに、20日の今日は16:59分だそうです。毎日1~2分ずつ短くなっています。
陽が傾き始め、見上げると陽のあったっている先端だけが明るい木に、秋だなぁと感じ入っていると、其処に何か生っているのに気付きました。


 “アレッ、センダン?”と一瞬センダンと見紛い傍のセンダンと比べると、センダンの果実は未だ緑。目を凝らしてみると、どうも違うようです。樹下に寄ってよく見ると、陽の当たっているところでは朱赤に、日陰では鉄黒(てつぐろ)色に見えます。遠目ではわからないので、下枝を引き寄せようと柄の長い物であれこれで試みても届きません。

 Sさんから「あれはコガキだよ」と教わったのですが、始めて聞く名前でした。「マメガキは知っているけれど、コガキは初めて聞く名前・・・」と云うと                       「マメガキって云うかもしれない」との由。早速検索、検索・・・・・。

 結果はマメガキの別称がコガキと分かりました。 しかし私の知っているマメガキは盆栽でしか見た事がなかったので、こんなに大きく育つ木も、小さい盆栽に出来るんだ!!と、驚きでした。
考えてみれば、ブナやケヤキ等の高木も盆栽に創られているのですから、マメガキが大きくても不思議はないはずなのに、何故か驚きました。                         自然の風景を切り取って鉢の中で再現しようとするのが盆栽ですが、創るのには、気の遠くなるような時間と労力が要るんだ!!と、改めて思い知ったからでしょうか。

 マメガキは10m以上にもなる落葉高木で、耐寒性が強いので長野県以北で、柿渋を採るため栽培されているそうです。柿渋を採るには、未だ青い果実を採りヘタを取り除いて、水を加えて突き砕き、それを布袋で絞って作るそうです。柿渋は布や紙に塗って防水・防腐効果に使われます。

 実用ばかりでなく、その柿渋盃1杯に大根おろしを混ぜて、空腹時に飲用すると血圧降下が期待出来るとされたり、しゃっくり止め、しもやけの凍傷やかぶれに塗布したりして民間薬として使われています。                                                     呼び名も、マメガキ、シナノガキ、コガキ、ブドウガキ、千生柿(せんなりがき)、ビンボガキ、サルガキ、スズガキ等々地域によって色んな名前があるようです。

 ならば、当地にも野生マメガキがあったのかと疑問に思い調べてみると、千葉県では、聖武天皇の勅で建立された上総国分尼寺遺跡から、マメガキの種子が出土していると知りました。(「上総国分尼寺遺跡の井戸内堆積物から産した植物化石群」http://hisbot.jp/journalfiles/0401/0401_025-034.pdf )

だからといって当地でも野生のマメガキがあったとするには、もう少し詳しく調べなくてはならないでしょう。

 その後、勤続20数年のKさんから、マメガキのある場所には、以前は職員住宅があって、盆栽マニアの男性が居住していたと聞きました。考えられるのは、彼が立ち退くとき、盆栽のマメガキを植えて行ったのではないかという事です。Kさんの話を聞く前だったら、野生かもしれないと考えますが、納得出来るのは“当時の居住者の置き土産”の方です。

 調べてみると、「マメガキ」と載っている本ばかりではないのです。                                                                                   『図説牧野和漢薬草大事典』(北隆館)ではシナノガキDiospyros Lotusとして載っていす。
しかし、『薬草カラー大事典」』(主婦の友社)ではマメガキDiospyros Lotusとして記載、類似植物としてシナノガキ(別名リュウキュウマメガキ)とあります。其処には《シナノガキは関東以西から沖縄の山地に自生し、マメガキよりは渋みが少ない》と解説してあります。                                                                      また『日本の樹木』(山と社)には、リュウキュウマメガキ、マメガキがそれぞれ載り、それぞれには別名をシナノガキとあります。
こうなるとマメガキとシナノガキは同じ植物なのか別の近縁種なのかと分からなくなりました。
学名だけを見れば同じなのは判然としていますが、解説を読むと (?_?)です。
樹木については苦手意識が強く、どんなに勧められても勉強しなかったので、今になって悔やまれます。

If you have any information, please help me・・・・・

園には甘柿、渋柿、百目柿、山柿などが数本あります。渋柿でも完熟すれば甘く美味しく食べられます。
これらをひっくるめて「カキ」でいいのかしら・・・・・ 

そうそう、山梨県では甲府弁でマメガキを「あまんど」と呼び、‘干し柿’で売られているそうです。取り寄せてみようと検索してみてもヒットしないので、園のマメガキが熟して黒くなったら、是非食べてみたいと心待ちしています。


アケビ・ミツバアケビ・ムベ

2015年10月11日 | 薬草・雑草

 駐車場の奥、果樹の並ぶ場所にアケビがあります。10月に入り,果実が大きくなってきました。

 棚をよく見ると,葉が3枚と5枚のが混在しているので、アケビの葉は何枚なのか分かり難いと思います。                                                   葉が5枚のはアケビで、本州、四国、九州の日当たりの良い山野によく生えている雌雄同株の落葉蔓性植物です。                                            葉が3枚のはミツバアケビといいます。こちらは北海道から全国に分布しています。 

  アケビの果実は薄茶色で長い楕円形。ミツバアケビの果実は其れよりややふっくらしており紫色がかっているので、区別出来ます。                                   園には2種類のアケビとムべがあります。                                                                                       

 ムベはアケビとよく似ていますが、落葉せず年中常緑なので、別名をトキワアケビとも呼ばれます。アケビとの違いは落葉しないことと、アケビのように果実が割れないことです。ムベの葉は、幼木の時は3枚、生長するに連れ5枚になり、成木になると7枚にまでなるので、“七五三の縁起の良い木’とされています。                                       

 物事を肯定するときに「むべなるかな」といいますが、このムベが語源になっているそうです。謂われは、『天智天皇が狩りに出かけた先で8人の男子を育てた老夫婦が元気なのをみて、「汝ら如何に斯く長寿ぞ」と尋ねたところ、夫婦は「この地で採れる珍しい果物が無病長寿の霊果であり、毎年秋にこれを食するため」と答えたところ、賞味した天皇は「むべなるかな」と得心して、「斯くの如き霊果は例年貢進せよ」と命じた』といわれたことによるそうです。ここから‘不老長寿の木’ともされています。                                              

 葉が5枚のアケビでありながら、葉縁が波打っている“アケビとミツバアケビの交雑種”のゴヨウアケビというのもありますが、当園にはありません。

 

                                                                                                                                                           蔓は左巻で長く伸び地悪の木に絡みつきます。花期は4~5月、花穂を下垂します。花穂の先につくのは雄花で、雌花は基部についていて、花弁のように見えるのは萼片です。花後に長楕円形の液果を結び、中には半透明の胎座が小さなバナナの形でついています。ゼリー状で甘く美味しいものですが、種の多さには閉口します。

 果肉の甘い汁だけを吸って、果皮はほとんどの人は捨てるようですが、果皮も油味噌炒めや包み焼きにすると食べられます。                                                        皮は茹でて、グラニュー糖をまぶせばアケビの皮の砂糖菓子になります。


 右の写真は、五目ひじきに豚挽肉を少し加えて味を調え、アケビの果皮に詰めて蒸し焼きした「「アケビの皮の包み焼き」 ですが。揚げても良さそうです。包み焼きの場合は、、果皮のやや厚めのミツバアケビの方が向いているでしょう。

 また春先、伸び始め頃の蔓先の先端から手を這わして、ポキンと折れるところで摘み(15cmほど)、茹でて水に晒してからお浸しやマヨネーズ和えにすると、苦味は強いのですが美味しい一品になります。苦さはやみつきになります。              

 薬用部分は、茎です。アケビ・ミツバアケビの生薬名は木通(もくつう)といい、日本薬局方に入っており、腎炎、尿道炎、膀胱炎や通啓などに漢方処方で用いられます。煎液でおできの患部を洗うとよいといわれるのは、排膿の作用もあるからです。                                                                        ムベの生薬名は野木瓜(やもっか)といい、民間薬で強心、利尿等に用いられます。

 アケビの蔓は昔から利用されていて、古くは正倉院御物に収められている「御書箱」(おんしょのはこ)があります。これは、アケビの蔓の皮を剥いで芯にして、カヤツリグサ科の植物で編んであります。実に緻密に編まれていて、古の人の技術には、感動、感服するばかりです。

 詳しくは宮内庁 正倉院のページをご覧下さい。→ http://goo.gl/n2uLHd

 そういえば昔ばなし「舌切り雀」の欲深なおばあさんは,葛籠(つづら)を背負っていたはず。                                                        その葛籠もアケビの蔓で編んであったのではないかしら・・・・・