草の名

私が栽培している薬草や、道端の草でセルフメディケーションにも使える類の植物を紹介してゆきます。

セイタカアワダチソウの濡れ衣。

2018年10月13日 | 薬草・雑草

 

 50数年前、寮の友人宅、稲毛に泊まりがけで行ったことがありました。現在の幕張本郷辺りには、絨毯と紛うほど一面の黄色い花でした。後になってそれがセイタカアワダチソウと知ったことを思い出します。

 花粉症が問題となり始めた頃は、セイタカアワダチソウが花粉症の一因といわれていました。その繁殖力が花粉を飛ばしで拡がったように思われたからなのでしょう。あの繁殖力では、“さもありなん"と、長い間思っていました。しかし、よく観察してみると、セイタカアワダチソウの花にはハナアブ、ハナバチや名前を知らない蛾の類が群がって来ているので、“セイタカアワダチソウは虫媒花”と分かりました。

 花はただ咲いているのではなく子孫を残すための知恵を働かせています。気の遠くなるような長い年月をかけて、ハナアブや蛾の助けを借りて確実に受粉する虫媒花の方法を選択したのです。一方風任せで花粉を拡散させる薄利多売方式を選択した風媒花があります。その他には花の構造を変えて自助努力で自家受粉するツユクサのタイプがあります。

しかし近年では黄色一面の景は余り目にしなくなりました。セイタカアワダチソウは周りの植物の生長を妨げる毒をだして自分の勢力を拡げるのですが、大繁殖の後はその地の栄養分が枯渇して、自分の毒でやがて滅びる運命のようです。この作用をアレロパシーというそうです。駆逐されていた在来種のススキが近年では勢いを盛り返してきています。

 風を頼りの代表格はスギであることは皆様もよくご存じでしょう。米粒ほどのスギの雄花は40万個の花粉を持っているそうですから、1本のスギにある雄花の数とスギの本数を考えれば、飛散する花粉の量は天文学的数字になります。

 セイタカアワダチソウによく間違えられる植物にブタクサがありますが、ブタクサはこのスギのタイプです。花粉症の原因となるのは、ブタクサなのです。セイタカアワダチソウにとっては、とんだ濡れ衣だったです。 

 セイタカアワダチソウの別名は「セイタカアキノキリンソウ」(背高秋の麒麟草)や「ヘイザンソウ」(閉山草)といわれます。明治年間に鑑賞用として導入されながら、後年雑草として汚名を馳せだしたのは、戦後北九州に進駐したアメリカ軍の貨物にも混じっていた種からだといわれます。何のことかと思えるヘイザンソウですが、言葉から想像すると、やがて閉山に追い込まれた炭坑跡地はセイタカアワダチソウが一面だったのかなぁ・・・と目に浮かぶようです。

 近縁種には在来種のアキノキリンソウ Solidago virgaurea subsp.asiatica があり、北海道、本州、四国、九州の平地や山地に自生しています。小さい黄色の花は、小花を沢山付けるキリンソウ Sedum kamtschaticum に似て秋に咲くのが名前の由来です。このアキノキリンソウには、セイタカアワダチソウのように 旺盛な繁殖力はありません。キリンソウについては、https://blog.goo.ne.jp/nukadainstitute/e/1c1cf7d6ed0547d23f4e1516ca857402をご覧下さい。

アキノキリンソウは古くから民間薬として、風邪の頭痛、喉の腫れや痛み、腫れ物の痛みなどに用いられてきました。若芽は苦みが少ないので食用となり、摘んで天ぷら、お浸しや和え物にします。薬用には、花の時期に地上部を刈り取り、水洗いしてから日干しにして用います。

<用い方>は、

1-頭痛、喉の腫れの痛み、腫れ物の解毒⇒一日寮として、刻んだ乾燥茎葉10g~15gを水400ccで半量に  なるまで煎じ、3回にわけて食前30分に服用。

2-喉の痛み⇒刻んだ乾燥茎葉15g~20gを水400ccで煎じ、煎液でうがい。

 近縁種に、我が国では高山に見られるミヤマアキノキリンソウ Solidago virgaurea subsp. leiocarpa がありますが、我が国では薬用には用いません。分布は広く千島列島、サハリン、朝鮮半島、中国と広く、平地で生えているそうです。中国では、このミヤマアキノキリンソウを一枝黄花(いっしこうか)と呼び薬草としています。

セイタカアワダチソウもミヤマアキノキリンソウと同じSolidago 属です。そこからこの植物に関する研究論文(鹿児島大学の博士論文に)があり、「野生のセイタカアワダチソウのポリフェノ-ル研究」をされた方があるそうです。臨床実験によってセイタカアワダチソウにも、抗炎症作用や抗菌作用が確認されたそうで。今後の薬理研究に大いに期待されているそうです。検索していると

・セイタカアワダチソウでアトピ-が治ったという経験談https://www.mimoz-art.com/entry/2017/04/12/154801

・セイタカアワダチソウ風呂がアトピ-に・・・という(https://www.mimoz-art.com/entry/2017/08/24/024726)等の情報が目に付きます。

家族にはアトピ-はいませんが、湯冷めしにくいそうですから、これから寒さに向かうこの時期にはぴったり。浴湯料なら、一度試してみようかと考えます。

「原色茶花大事典」には、日本古来の茶道でも茶室の床(とこ)に活ける茶花としても使われると紹介してありますが、実際には花穂が長いため、活けにくく余り使われないそうですが、大振りの作品では使われるのでしょう。アメリカのアラバマ州では、円錐状の黄色い小さな花の仲間をゴールデン・ロット(金の鞭)と呼ばれて州花になっているそうです。

セイタカアワダチソウは、もっと愛でられ親しまれてもよいのではないかしら。