■3月句会
□2007年3月18日
【金賞】
★男らの胸まで浸かり蓮を植う/宮島千生
蓮は、泥田や浅い溜池などに植えられる。乾かないことと、日当たりがよいことが条件なので、自然深い泥に植えられる。胸辺りまで泥に浸かって植える仕事は、やはり男の仕事といえる。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★丘一つ芽立ち始めし木のいろに/おおにしひろし
なだらかな丘であろう。丘全体が芽吹き染めた木のいろとなって、やわらかな早春の景色をなしている。「丘一つ」がいい。(高橋正子)
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
若布を海から今採ったところ。一抱えの若布を波間から採って現れた。海は静かなようでも、春先の風に波立っている。たくましい海辺の生活が知れる。(高橋正子)
【銅賞/4句】
★その先に水のまぶしさ犬ふぐり/藤田洋子
犬ふぐりが咲いている先には、川が流れているのか、きらきらとした池があるのか。反射する水の光りがまばゆいほど。犬ふぐりの青と水の取り合わせが清潔。(高橋正子)
★菜の花を残して畝の新たなる/碇 英一
菜の花は今まっさかり。そこを残して、ほかは耕され、新しい畝が作られ、植えものの準備が調った。菜の花は種を採るためかもしれないが、そこに咲かせたままにする気持がやさしい。(高橋正子)
★新刊の図書を抱きて春風に/多田有花
新刊の図書には、本の匂いがして、これから読もうとする気持を高めてくれる。買い求めた新刊書をもって、春風のなかにいることは知的なよろこび。(高橋正子)
★退院の日は雑踏の春であり/中村光声
退院となった日に、雑踏を歩いてゆかねばならなかった。静かな入院生活から、一度に明るい雑踏に踏み出した戸惑いが、「雑踏の春」を眩しんで詠まれた。(高橋正子)
【高橋信之特選7句】
★燦々とミモザ溢るるガラス越し/池田加代子
「燦々と」に作者の実感がある。「ガラス越し」であれば、それは生活の実感で、嘘のない句。 (高橋信之)
部屋からガラス越しに見えるミモザは、外の直接の光りで見るのと少し違って、「燦々と」輝いて見える。それを捉えて感覚がいい。(高橋正子)
★地下茎を深く沈めて葦芽ぐむ/藤田洋子
★新刊の図書を抱きて春風に/多田有花
★丘一つ芽立ち始めし木のいろに/おおにしひろし
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
★男らの胸まで浸かり蓮を植う/宮島千生
★菜の花を残して畝の新たなる/碇 英一
【高橋正子特選7句】
★ふらここの夜には夜のたたずまい/臼井虹玉
ふらここは、ブランコ。昼間は子どもたちに楽しげに揺られていたのに、夜は静かに垂れて動くこともない。ひとつのブランコが昼は昼の、夜は夜のたたずまいであることの発見がある。(高橋正子)
★その先に水のまぶしさ犬ふぐり/藤田洋子
★新刊の図書を抱きて春風に/多田有花
★丘一つ芽立ち始めし木のいろに/おおにしひろし
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
★退院の日は雑踏の春であり/中村光声
★男らの胸まで浸かり蓮を植う/宮島千生
【野田ゆたか特選7句】
★電車の音遠くに聞いて朝寝かな/多田有花
寝心地のよい今の時期、遠音を聞きながらうつらうつらされている作者。暖かな穏やかな景が広がってきて好きな句です。(野田ゆたか)
★菜園の手許離れぬ紋白蝶/渋谷洋介
★辛夷咲く伊予路しずかに日が暮れて/おおにしひろし
★ものの芽の影育ちおり雑木山/大給圭泉
★そこにだけ明るき光菫草/古田けいじ
★舟唄や霞の下を最上川/阿部昭
★願いつつ初蝶に遇いし嬉しさよ/大山 凉
【おおにしひろし特選7句】
★御空よりひかり零して初蝶来/中村光声
初蝶が陽光の中で飛んでいる。中句が蝶を見た喜びと共に、春の到来を感じ取った作者の実感を強めた。(おおにしひろし)
★自由という高さに舞えり春の鷹/古田けいじ
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
★入学や節目ふしめに撮る写真/湯澤まさえ
★春泥に幼なき思い踏んでみる/志賀たいじ
★旅立つ子見送る駅舎なごり雪/大山由起
★角の無き男鹿ひっそり竹の秋/安丸てつじ
【祝 恵子特選7句】
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
海の中よりざばざばと現れる、若布を抱き滴らせながら、力強さに惹かれます。(祝 恵子)
★供花挿してしばし鶯聞く山に/藤田洋子
★春雷やくるりと廻る紙飛行機/篠木睦
★ふくらみそむはなのつぼみのなかやすみ/堀佐夜子
★海猫連れて流氷群の戻り来る/大山由起
★天籟とあるいしぶみが花の下/清水清正
★末黒野の若草山に萌ゆるもの/安丸てつじ
【志賀たいじ特選7句】
★その先に水のまぶしさ犬ふぐり/藤田洋子
身近にある犬ふぐりの向うにある水のひかりへの透明感ある詠みに惹かれました。(志賀たいじ)
★ふらここの夜には夜のたたずまい/臼井虹玉
★丘一つ芽立ち始めし木のいろに/おおにしひろし
★波間よりざばと若布の抱かれ来る/池田多津子
★囀りに風来て風と去りゆける/高橋信之
★角の無き男鹿ひっそり竹の秋/安丸てつじ
★菜の花を残して畝の新たなる/碇 英一
▼伝言などは、下の<コメント>にお書きください。
正子先生、信之先生、そして句会運営なさってくださいました
皆様に心より感謝申し上げます。
山梨は昨日今日と寒いです、今朝から何もせず日曜日ということもありましてパソコンの前に座りっぱなしでした。
オンライン句会とても楽しく魅力的なことに感動いたしています。
多津子様、有花様、お世話になりました。
皆様の春の句の数々に触れ、よいひと時を過ごさせていただきました。
「ふらここ」を、正子先生特選7句にお選びいただき、大変うれしく存じます。ありがとうございました。また、貴重なコメントも頂戴いたしましたことを、重ねてお礼申し上げます。
「ふらここ」にたいじ様特選、恵美子様、光子様、秀之様の選、「春禽」に圭泉様、有花様の選をいただきましてありがとうございました。
「ミモザ」の句を信之先生の特選7句にお選びくださいまして、信之先生と正子先生のコメントを賜り、誠にありがとうございます。実家のミモザが大きくなり、眩い明るさで家族を励ましてくれます。小河原銑二様、同句に選を賜りましてありがとうございました。また、「蕗を炊く」の句に、國武光雄様、丸山草子様、藤田洋子様、松原恵美子様、臼井虹玉様、笠間淳子様の選を賜り、ありがとうございました。丸山草子様には優しいコメントも賜りまして、重ねて御礼申しあげます。
3月オンライン句会御苦労様でした。又、特別選者として御選び戴き光栄に思います。
今回、『芽立ち』の句に銀賞を戴き有難う御座います。久し振りのこと故、大変嬉しく思っております。今後とも、益々研鑽を積みたいと思いを新たにしています。
又、信之先生、正子先生共々特選に御選び戴き有難うございます。正子先生には御理解あるコメントを戴き感謝いたしております。
更に、野田ゆたか様、「辛夷咲く」の句を,志賀たいじ様、「芽立ち」の句を夫々特選戴き有難う御座います。
又、「芽立ち」の句を御選び戴いた碇様、志賀様、篠木様、藤田洋子様、池田加代子様、藤田裕子様、臼井様、高橋様の皆様、有難う御座いました。
又、「菫摘む」の句を御選び戴いた大山様、河野様,古賀様の皆様、有難う御座います。
更に、「辛夷咲く」の句を御選び戴きました野田様、大山様、有難う御座います。
最後になりましたが、句会を御世話戴いた池田多津子様、多田様、臼井様、大変御苦労様でした。
多津子さま、虹玉さま、お世話になりました、ありがとうございます。
銅賞ならびに両先生の特選7句に「新刊の図書を抱きて春風に」を選んでいただきうれしい驚きでした。お礼申し上げます。
圭泉さま、修さま、草子さま、弦さま、凉さま、ひろこさま、多津子さま、選をいただきありがとうございます。圭泉さまには貴重なコメントもいただきあらためて感謝申し上げます。
ゆたかさま、「電車の音遠くに聞いて朝寝かな」を特選7句にお選びいただき、またうれしいコメントもいただきありがとうございます。うつらうつらが朝寝の醍醐味ですね。
両先生には、拙句「菜の花」の銅賞と句評を戴き有難うございました。
佐夜子さん、光子さん、たいじさん、清正さん、凉さん、渓太さん、淳子さん、修さん、洋介さん、有花さん、ひさこさん、
拙句にコメントや選を戴き、みなさんどうも有難うございました。
洋子さま「うぐいす」の句に選をいただき、ありがとうございます。
また「花菜」の句に選をいただいた圭泉さま、英一さま、恵美子さま、由起さま、秀之さま、友田さまには選とコメントを、ありがとうございます。
多くの方に選をいただき、うれしい3月句会となりました。信之先生、正子先生、ご指導いただき、ありがとうございました。