B市郊外。
閑静な住宅地の昼下がり。
初夏の風が心地よく吹き抜けていく。
Yさんは専業主婦歴35年。
二人の息子は大学卒業後、
まあまあの商社に滑り込み、
何とかやっている。
ご主人は間もなく定年退職を迎えるが、
皆健康に過ごしているので、
これと言った入り用もなく、
ささやかな積立金と退職金でなんとか凌いでいけるだろう。
劇的ではなかったが、
まあそれなりに幸福だ。
午前中に干した洗濯物が
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「マハトマの月」と同時に書き下ろしたモノ、だったと思います。
過剰な修辞は昔からのクセだったようです。
例によって読みにくいですが、ご勘弁下さい。
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それは梅雨明けの近い7月の午後、
煙るような、
外は雨だった。
父はゆっくり車を走らせてきた。
まるで同乗者の気持ちを絹で . . . 本文を読む
山本洋子(仮名)38才。
三年前に離婚。
小学校三年生と一年生の娘と三人で
都営住宅に暮らしている。
無職(と申告している)。
週末に知人の経営するスナックを手伝い、
月に12万円ほどを稼ぐ。
それに加え前夫からの養育費10万円と
三ヶ月に一度市から支給される児童手当が洋子の収入のすべてだ。
家賃は五千円。
寡婦控除なども適用されるので、暮らせなくはない。
ありふれていて誰の興味もそそらない出 . . . 本文を読む
1947年。
満州に開拓移民として渡っていた須佐さん(仮名)が
故郷の新潟に帰還した。
鉄道も国道からも離れた農村地帯だ。
戦前から代々小作人の家柄で、
地主から借り受けた日当たりの悪い田圃を営々と守ってきたが、
帰国前年度に施行された「農地改革」(注:1)を機に、
一反歩(10アール)ほどの自営農家となった。
戦時中耕作されずに放置された土地は荒れ放題だったが、
満州の獏たる荒野を開墾してき . . . 本文を読む
あるライブ終了後、
バックステージにつめかけるファンの一人の少年が
ジョーにサインをもらいながらこう言ったそうです。
ファン 「ジョー、クラッシュのライブ観たいけど
チケットが高すぎるよ。」
ジョー「これが精一杯なんだ。
ツアーをやるときはスタッフも必要だし、
交通費やホール代も高くなった。
信用してくれ、これがギリギリの線なんだよ。」 . . . 本文を読む
昔むかし、
「ルーツ」というアメリカ製TVドラマが
人気を博したことがある。
連続ドラマとしては異例の高視聴率を更新し続けていた。
現代(70年代)の黒人が、
自分の「根っこ」を「奴隷時代」にまで遡って、
探すと言うストーリーだった。
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平成4年。
「さすらいの魚肉ソーセージ」に登場する大好きな女の子と
能登半島に出か . . . 本文を読む
「Vincent Galloを聴きながら」
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control freak 氏のブログ で紹介されていた
ヴィンセント・ギャロと言うアーティストを
このところ聞き続けていて、
その「ダウン系」の音の塊で綴られた詩集「When」に
完全に打ちのめされた状態での記事ですから、
尻切れになる可能性も高いです。
前途は曖昧模糊模糊模糊、
さすがに今回ばかりは辿 . . . 本文を読む
先日の記事、
「カフカ・シンドローム」について、
誤解されるのではないかと思える表現部分に、
「補足」を入れさせてください。
[08. apple girl]
の最終行、
『「光速を超えた意識」は
こんなことまでやってのけるのです』
と言う表現に付いてですが、
大概の方は、
「死んだ祖父さんが『幽体離脱』のごとき現象を起し、
10kmの山坂道を『一瞬』にして飛び越え、
実体のありそうな『幽霊』の . . . 本文を読む
二年後に数字上では希望者全員が入学できる「大学全入時代」がやってきます。
来春には「ゆとり教育」を受けた世代が大学生になります。
産経のコラムではこの波状する二つの時期に大学側が求められるであろう、
「リメディアル教育」つまり「補習教育」の必要に迫られていることを取り上げていました。
この「補習」の内容を聞いて愕然としたのは
僕だけではないでしょう。
小学校低学年の算数や理科の知識、
漢字テスト、 . . . 本文を読む
先月、何年も食糧を摂らずに健康体を維持している
米国人男性の話題を持ち出しましたが、
今回は「断食修行の本場(?)」ネパール。
15歳のラム少年は6ヶ月間一切の飲食を断ち、
瞑想を続けているそうです。
まあ、世間は広い。
そういう方も居るのでしょう。
居てもいいじゃないですか。
わざわざ研究チームを拵えて「真贋」を確認などしなくてもと、
いつものいい加減さでロイターの配信文を眺めていました。
. . . 本文を読む
東京の西の外れ。
小さな駅舎の待ち合い室。
つけっぱなしのTV画面では
強面のレスラー(?)が殴り合っていた。
片方が馬乗りにもう片方の顔面に力任せの拳を振るう。
目尻や鼻孔から出血している。
下校途中の中学生が数人、固唾を呑んで見入っていた。
僕は目を背けて駅を出た。
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1987年、夏。
僕は秋留野の古い借家に . . . 本文を読む