「あれ、変だな。
道が細くなってきたよ。
これ、間違えてるんじゃないか?」
男は助手席の妻に確認の声をかけたが、
彼女は既に寝入っていた。
後部シートには毛布にくるまった息子が熟睡している。
男はインド象の背中に跨がってはしゃぐわが子の姿を思い出し、
もう一頑張りするかと
眠気覚ましのタブレットガムを口に放り込んだ。
妻が寝入るのも無理はない。
出発は今朝午前三時だった。
昨日の夜から三人の二食 . . . 本文を読む
手続き終了後、
夫妻は待ちくたびれた運転手の欠伸に迎えられ
静かにゲートを出た。
指定した要領で入金の確認ができ次第、
施術の日取りを連絡するという段取りだった。
院長は少年の部屋を尋ねた。
いつもの「語りかけ」を行うのだ。
手を両手で包みながら
彼女は少年に語りかけた。
「ねぇ、聴いてくれる。
さっきのおじちゃんたちはね、きみのジンゾウを
分けてほしいってお願いに来たのよ。
きみはふたつ、元 . . . 本文を読む