「自立支援」
介護保険制度の理念に掲げられている言葉あり、実際に、日々の業務の中でも
度々登場するフレーズの一つです。
この「自立支援」という言葉が厄介で、意味を間違えて捉えてしまうと、利用者、
介助者の双方が苦しむことになります。
とある施設に見学にいった際に、このような事がありました。
歩行が不安定なとある男性利用者様。手摺につかまることにより、辛うじて歩行可能といった状態。
「トイレに行きたいから、車椅子を使いたい。トイレまで押してくれ」
と、施設職員に話しかけます。
「〇〇さんは、まだ歩けるから頑張ってトイレまで歩いていきましょうね」と声を掛ける職員。
結果、その男性利用者様はかなりの時間をかけてトイレまで歩いていきました。
果たしてトイレに間に合ったのかどうかはわかりません。
この対応に少し違和感を感じました。
自分でできることは、自分で行い、残存機能を生かして生活していくのは結構なことで
すが、それも時と場合によります。
毎回の排泄行為のたびに、トイレまでの移動で額に汗し、失禁するかもしれないという
切迫した状態にさせる必要は感じません。
排泄行為にまで、機能活用を優先される必要性はないですし、もっと他の場面で機能
活用できる場面があるはずです。
「間に合いますか?移動のお手伝いは必要ですか?」
こっちの方がよっぽど適切な支援といえるはずです。
「トイレには、自力で行くが毎回大変。時には間に合わず失禁してしまうこともある。」
「トイレへの移動は人の手を借りるが、それにより毎回、トイレで気持ちよく排泄することができる。」
・・・どちらが、その人の為になっているかは言うまでもありません。
何でも機能活用すれば良いという考えは間違いで、その前に人として当たり前の生活
ってなんだろうってところまで考える必要があるはずです。
自立支援って、それだけが目的ではありません。
そのことにより生活が少しでも良くなる、その人らしい生活の為になっているのかって部分まで
考慮することができないといけません。
【訪問介護のじりケアステーション管理者 豊岡】