ヤッちゃんパパ奮戦記

HFAの息子に啓発されて、化学を専攻した小父さんが畑違いの自閉症療育の世界へ。50の手習い、子育て奮戦記…

RDI Today (3) かなりのものが見えてきた!

2007-10-17 23:25:27 | RDI


(米国ユタ大学 Alan Fogel教授の発達論)

13日、14日と一泊二日で名古屋に出向きRDIの勉強会に参加して来た。土曜日は親のための勉強会、日曜日は専門家のための勉強会ということで、今回はゴット先生こと、碓氷教授の計らいでレポートを提出することを前提に、星槎大学の碓氷教授のゼミ経費から、交通費・宿泊費・宿泊費全て出して頂けることになり、感激している。ポーテージの研修会にせよ、TEACCHの研修会にせよ、もろもろの講演会であっても、およそ有償のものでは、自分が後援者の一人として参加するか、親の会の講演会でビデオ撮り役をする時以外、地元に山口先生のポーテージの講演会を自分が招聘した時ですら、参加費を払ってきた身とすれば、異例なことと言える。感激も良いが、責任も重いと自覚せねばならない。

白木先生は13日と14日は対象者を分けてはいるが、内容は同じと事前に仰って下さったが、実際に参加してみるとレジメは確かに似たようなものであるが、切り口が異なり、立体的に物事が見える感じがし、両方に参加したことは意義深かった。

RDIの内容は急激に変化をしており、2002年に出版された2冊のアクティビティー集は、既に過去のものとなり、2005年版のDVDも、古くなってきた感がある。余談ながら、2002版のアクティビティー集のうち「Relationship Development Intervention with Children, Adolescents and Adults: Social and
Emotional Development Activities for Asperger Syndrome, Autism」は2008年5月頃和歌山大学教育学部の小野教授と我らが碓氷教授の共同監訳で翻訳本が世に出る予定である。この書籍は古いとは言われても、RDIを真に理解する上では目を通す価値はそれでも絶対にあるといえよう。私が今春訳し始めたもう一冊については、翻訳本の出版の見通しがまだない模様だ。

さて、RDIでは、ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム障害)の子ども達が示す症状の特徴を、中核症状(全てのASD児に共通して見られ、他の発達障害にはあまり見られない症状で、ダイナミックインテリジェンス[情報処理能力]に関わり、慢性的で通常はあまり改善されない)と随伴症状(一般的に問題行動等として捉えられ、他の発達障害にも見られることがある症状。それが改善してもASDの特徴は残り状態が改善されないことから、二次的症状とも考えられる)に分けて捉える。多くの
ASD児に対する療育プログラム、例えばABAやTEACCHはこの随伴症状を対象としている。自閉症は障害であって予後が不良であると考える所以である。RDIではこの種の療育をCompensation(補償型療育)と呼んでいる。

これに対して中核症状を治せないか?という取り組みをRemediation(治療型療育)と呼ぶ。RDIプログラムの本質はこのRemediationにある。その方法のバックボーンとしてRDIが近年注目しているのが、米国ユタ大学心理学教室のAlen Fogel教授の発達論である。自閉症児が先天的に持つ神経系の脆弱さによってその発達段階初期において躓きを持つと考えるのであれば、健常児はどのようにしてそれを回避しているのであろうか?という点に注目し、健常児の発達モデルを指標に自閉症児療育を考えようという視点である。

昨年来のゼミナールMUでの議論では、RDIと太田ステージとの比較に端を発し、先に挙げたアクティビティー集のステージIの課題が、既に高度でありすぎ、太田ステージであればIIIaレベル程度の発達が必要と考えられた。即ちアスペルガー症候群や高機能自閉症児でなければ取り組むことが困難ではないのかと思えた訳である。表現が悪いが、カナー型の自閉症児にとってRDIは机上論でしかないという思いが議論の中で多くの人の頭に過ったに違いない。このような誤解にも似たパッシングがSteven
Gutstainをして、自らの2002年版の著作を否定せしめたことは、想像に難くない。

今日のRDIが重きを置くところは、母親の子どもに対する関わり方の支援ということであり、RDAと呼ばれるアセスメントも子どもの発達状況の査定というよりは、むしろ親子関係や親の関わり方を重視しており、先の著作におけるステージ論は参考程度という位置づけになっている。即ち、RDIは「対人関係を構築するスキルを子どもに身につけさせる」手段ではなく、家族や支援を受ける子どものQOLを見据えた多面的な支援と言える。

こういう観念的な話では、なかなか実態がつかみ難いかも知れない。実際のRDIの初期段階で用いられるRCR(Regulation - Challenge - new Reguration: 調整-挑戦-再調整)プロセスは生後3~4か月の乳幼児と母の触れあいをモデルに子どもが自分を支援する母親に対して、確固たる信頼感を芽生えさせることに重点が置かれる。3~4か月の乳児に言語的コミュニケーションは明らかにいらない。即ち、カナー型の自閉症児であっても、このプロセスは有効ということである。

ここで、確認しておくべきことがある。この治療型療育はRDIの本質であると断じて間違いがないが、RDIには逆にRDI独自の補償型療育プログラムというものがないという事実である。但し、それは決して間違ったことではない。RDIの追求するべき中心は治療型の療育であり、補償型の療育はABAであれ、太田ステージであれ、はたまたTEACCHであれ、その子に合った既存のプログラムを折衷的に使用して行けば良いということであって、独自のプログラムを持たないということは、何らの短所とはならない。

それどころか、RDIではこの二つの療育法をバランスを持って実施することが重要であることを指摘している。身辺自立、生活習慣、学習スキルとのバランスの重要性をも指摘している。このような姿勢はRDIが言わばある意味ヒトとしての基幹に関わるプログラムであると同時に、広汎な視点での療育においてAdd-on(拡張的追加)プログラムという性格を持つものであるということを示唆する。それは過去に私が
RDIを太田ステージに置き換え可能なプログラムと考えるべきではないといった主張にも通じる。

RDIはますます興味深い。
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2 コメント

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資料じっくり拝見しました! (せいさ同級生)
2007-11-21 15:31:27
RDI資料ありがとうございます。
時間とれてゆっくり拝見できました。

いやぁ、しかしわかりやすい資料でした。

私は、白木先生のお話を親として聞きながら、やっちゃんパパさんのような違った視点での評価を知れるので幸いです。

またそういった資料などありましたらぜひ拝見させていただければと思います。
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温かいコメント有難うございます (ヤッちゃん)
2007-11-22 06:13:41
現時点でRDIについて理解していることを全部まとめてみようと思いたったのですが、中々全てを文章にすることはできません。

白木先生の指導方法は私のポーテージ指導の基本的な考え方と、かなり似ているところがあり、感覚的に理解している部分も多々あり、うまく説明するのが難しかったりしますね。

今回のレポートは、白木先生が有料でお話しされている内容にかなり踏み込んでいますので、本当に限られた方にしかお見せしていません…碓氷教授と白木先生と貴君です。白木先生にはご参考までにということでお渡ししましたが、今のところコメントは頂いておりません。(こちらからコメントを求めた訳ではないのですが、余りにも内容的に違うということであればご指摘くださる方なので、一応「C」ランクで合格?だったかなと思っています。)。

白木先生のお仕事の邪魔をしてもいけませんので、奥様にお見せするのは結構ですが、余り他にコピーを回されない様、お願致します。
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