リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

岐阜新聞 鮎の12ヶ月 連載2007年 2月

2008-01-01 17:24:46 | アユの12ヶ月 川面からの記録
 どちらかというと、小さな川が好きだ。

 春の光の中なら、水面に寝そべって、身体の半分ほどが水面から出た状態で、やや流れの下の方を見る。前方にキラリとした群れが見えたら、少し上流でジッと待っている。
 頭を上げのけぞった格好になるので、苦しい姿勢ではあるのだが、動いてしまうと群れは方向を変えてしまう。といって、あまり長い時間動かないでいると、土左衛門(水死体)と間違われることがある。いちどならず、警察に通報されたことがあった。それ以来、誤解をまねかぬように時々は、足を水面から上げて動かしてみたりしている。

 鮎の群れは塊となってやってくる。どの魚が先頭ということもなく、上流に向かっていったかと思うと、留まってひとしきり小石の表面の藻類を喰みはじめる。くるくると、群れは身体全体で小石を廻る。そのたびに、銀色の塊が形を変えて、水面と小石の間で広がったり集まったりしている。 

 春の初めの頃、鮎が遡上してくる。
 遡上というと、いちもくさんに上流に向かって移動していくというイメージあるが、全ての鮎がそうするわけでもないようだ。潮気のある部分から真水に移動したあと、適当な小石がある場合など、かなりの期間を下流域で過ごす鮎がいる。群れの大きさは様々だが、最大でも数十匹くらい、全身が銀色で身体の大きさは5,6センチ。縄張り鮎のような黄色の文様はない。

 最初にそんな鮎を見たのは奄美大島のリュウキュウアユだった。リュウキュウアユは、遡上する期間がだらだらと続くので南の鮎の特徴かと思っていたが、四国や紀伊半島、佐渡島などの小規模な河川には普通にそういった鮎がみられる。大きさの異なった大型の鮎が混ざらないことから、ある程度成長したアユはもっと上流の大きな石のあるところに移動して、縄張りを持つようになるのだと思う。下流域に縄張り鮎以外にも多くの鮎がいるということが、小さな川でも産卵の季節まで、鮎が残っている理由なのだとおもった。

 長良川のような大きな川では下流は砂地で、若鮎の餌場となる小石の河原はない。大きな川では下流に鮎がいないと思っていた。そんなことを、長良川漁協の大橋亮一さんに話したことがある。大橋さんはこういった「昔は長良川もずっと下まで砂利の河原だった。ここ羽島の辺りはそれこそ、鮎がチヤッ、チャッと苔を喰っとって、夕方など、人が歩くと、ザーッと音がした。」鮎が一斉に逃げる時に、砂利を巻き上げるのか、そんな音がしたのだという。

 小石の川底と水面の間の景色の中で見る躍動。小さな川の小石の河原で、ボクは輝く若鮎の群れに、豊かな川の姿を想像して見るのだった。


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