新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課20「地方創生交付金を活かせ(その3)」編

●地方創生交付金を活かせ(その3)

 燕市に出向して初めて次年度の当初予算の編成に臨む直前の10月半ばのある日。地方創生の推進とそのための国費の有効活用について説法して行脚しているという人から、燕市でも幹部を集めて説明して懇談したいという申し入れがあった。不見識でその人を知らない私は、始めは事務的な対応をしたのだが、調べてみると食料品スーパーの社長から始めて都内の某商店会の会長となり、比例区で国会議員を一期務めたほどの御方であることが判明した。今は国の地方創生本部から委嘱を受けて"地方創生伝道師"として全国地方行脚をしているということなのだ。
 地方創生推進交付金の活用について攻めるか控えるか…。悩んでいた私は丁度良い機会になるなとばかりに、"伝道師"を市役所にお招きすることとし、その御方の経歴も踏まえ、市長と副市長を始めとする主な部課長らを集める賑々しい会合を設定した。11月初旬に燕市役所を訪れた"伝道師"は、部長以下の参集を想定していたようで、居並ぶ市長らを前にして燕市の地方創生に臨む意気込みの強さと感じてくれたようだった。地方創生のための取組の優良事例を個別具体に裏事情なども含めてかなり掘り下げて話してくれたほか、国費の活用についても良い意味で利口で要領の良い活用方法について事例を交えて指南してくれた。単に一方的な説明会で終わらずに、市長を始め私からも積極的に次々と質問を繰り出して会合が大いに盛り上がったことで伝導師の意識にも燕市が大いに印象に残ったようだった。
 私は伝道師に大いに触発された。地方創生推進交付金を使うには、新たに取り組む事業について、費用の半分の市財源の持出が必要だが、考えようによってはやりたいことの半分は国費を出してくれるという制度だ。然りとて全く新たに用立てできる余剰財源など無いことは企画財政課長をやっている私が一番よく分かっている。なので、既存事業の大胆なスクラップアンドビルドで施策を組み替え、新規事業として交付金の活用に最大限結びつけてやろうという道しかない。私は腹を決めて施策の再構築の検討を始めた。
 12月下旬の当初予算の市長査定を見据えて、私は一人、施策の組み替えスキームを検討していた。部署別の縦割りによる事業の見直しは行き着くところまで来ていたので、部署横断的に、政策横断的な視点で、再構築を考えざるを得ない。部署は自らの施策や事業に邁進しているので他部署との一体的な施策構築などに考えを及ばせろというのは酷な話だ。部署や政策施策を俯瞰して再構築できて、しかも財政的な裏付けやバランスも併せ考えていけるのは正に企画財政課を置いて他にはなく、その醍醐味そのものなのだ。
 私は政策を横断する三つの太い柱立てを考案し、そこで串刺される既往の予算事業を新規事業として再編・再構築する素案を整理した。即座に方向性について市長と協議して了解を得ると、課員を通して対象となる各々の予算事業の組み替えを関係部署にお願いした。各事業の担当者にとっては大変な作業負担である。県から出向してきた新参者の私から発せられた案と聞いて相当な反発も覚悟したものだ。部署と企画財政課との"熱い"やり取りがある程度生じたものの、しかし、予算事業再構築の趣旨には理解が広まり深まっていき、極めてタイトな期間に煩雑な作業をお願いしたにも関わらず。当初予算要求案の取りまとめの時期には要求資料の耳を揃えることができた。私は市町村合併という短期間に未曾有の作業をこなしてきた強者達は流石だと改めて関心し、その有り難さに胸のあたりが熱くなった。

(「燕市企画財政課20「地方創生交付金を活かせ(その3)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課21「地方創生交付金を活かせ(その4)」編」に続きます。)
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