新潟久紀ブログ版retrospective

財政課19「土木部予算担当で新潟福島豪雨災害に巡り合わせ」編

●土木部予算担当で新潟福島豪雨災害に巡り合わせ

 新潟は梅雨の終わりに大雨になりがちだ。例年と同様のことと思いながら、平成16年7月12日の月曜日に県庁3階の執務室でそぼ降る雨を眺めていた。二日前の土曜日に風が強かったが晴れ渡る中、村上市の瀬波海岸の白い砂浜で子供を海で遊ばせたばかり。先週まで立て込んでいた公共事業予算関係の作業がひとヤマ越えたことも加わって、軽い疲れを感じて少しまったりと資料を読むなどしていた。
 「それにしても強い雨が止む気配が全くないね」と近くの職員が言う。確かに、今朝から空には厚い雲が垂れ込めていて、遠くを眺めても日差しが漏れる気配が無い。昼前くらいになると、いよいよ県庁敷地を雨が打つ音が強くなっていく。速報が出ているということで同僚がテレビを点けると、堤防を今にも越えそうな濁流の五十嵐川か刈谷田川の映像がいきなり目に飛び込んできた。「これは堤防切れるんじゃねぇか」などと不安そうな声が随所から上がる。
 私は、集中豪雨のエリアが自分の自宅や実家などとかけ離れていることもあり、不謹慎だが暫くボンヤリと映像を眺めていたところに、課長補佐が近づいてきて、私の上司であり横に座っている調整員に話しかけた。「直近の大水害は5年前くらいだったと思う。対応を下調べしておいて」。
 補佐が立ち去ったあと調整員にどういうことかと尋ねると、「予算の"専決"がありうるということだ」と言う。大災害などが発生して緊急に予算が必要とされる時に、議会での審議や議決を待たずに知事の判断で予算の補正ができる。今回の大雨は、それに至る大災害となる公算が高いというのだ。そうなると、河川や道路、砂防など、水害により被害を受ける公共施設を所管する土木部の予算を追加で編成することとなる。それも大至急で巨額な規模をだ。ほんの数時間前まで想像もしなかった緊急業務に見舞われることになりそうなのだ。
 大雨は洪水となり水害をもたらした。いわゆる平成16年7月新潟・福島豪雨である。地域的には総雨量が400ミリを超し、信濃川水系の五十嵐川・刈谷田川・中之島川の堤防が11ヶ所で決壊。新潟県の県央地域とばれる広範囲で浸水被害が発生し、死者16人に及ぶ大災害となった。激甚災害に指定されて数百億の予算が緊急で編成されることに。ここ数年来大災害に見舞われていなかった本県の財政課では、災害予算の編成を経験するものが課内に残っていない。災害対策の中心となる土木部の予算を担当する私と上司は手探りで予算調整を進めざるを得ない。
 災害復旧事業は国費が手厚く配分されるので国による現地での事業費査定などの対応が続き、洪水が引いても暫くは必要となる予算調整作業が連日の深夜に及んだ。なんとか緊急予算案の編成に至り、知事に専決していただいて予算執行が可能となったのは8月下旬。夏休みも何もなく労苦に明け暮れた1か月だった。
 それにしても本当に巡り合わせと運としか言い様がない。私の前任が土木部予算を担当した昨年度は、大雨も豪雪もなく天候も年中おだやかで、大きな懸案も無かったという。公共土木施設などの事業は産業振興政策等と異なり、目新しい事業を次々にというのではなく道路河川の整備などを計画的に進めるのが大半だ。よって定例的な査定業務を続けるのが私のポストの筈であった。しかし、着任後にいきなり"大玉送り"を浴びせられてトップギアでスタートダッシュさせられ、それが落ち着いた矢先に大水害とは。ここまでの半年弱で、残業時間だけ見ても定時で帰れる人の1.5倍くらいの仕事量になっている。ささやかな秋の行楽くらいは楽しんでリフレッシュしたいものだとため息が漏れたものだ。しかし、疲弊する青年公務員を更なる悲劇が繰り返し襲うことになるのだ。

(「財政課19「土木部予算担当で新潟福島豪雨災害に巡り合わせ」編」終わり。「財政課20「土木部予算担当として中越大地震災害へ直面」編」に続きます。)
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