28日放送のNHK・Eテレ『サイエンスZERO「身近な元素で未来が変わる ナノ炭素素材」』で技術動向を放送。(再放送:7月4日(土) [Eテレ] 昼0時30分~)
トヨタが水素燃料電池自動車「MIRAI」を発表後、水素社会が注目されていますが、ナノカーボンが既存素材の常識を変える潜在力を持ち炭素の時代が到来すると思いましたね。
番組『サイエンスZERO「身近な元素で未来が変わる ナノ炭素素材」』の番組内容を転載すると、
“「炭素を100万分の1ミリ、1ナノメートル単位で配列を整えたナノ炭素素材の応用が本格化してきた。ダイヤモンドに代表される炭素原子同士の結合は非常に強いため、きれいな配列のものが作れれば高性能を発揮できるのだ。
すでにスマホなどに利用されている高性能放熱シートや、超小型蓄電池、次世代のがん治療などその分野はさまざま。実現化をもたらした2つのノーベル賞をはじめとする数々のブレイクスルーとともに紹介する。
・すでに電子機器に利用されているグラファイトフィルム
金属の銅よりも熱の伝導率が高く、スマートフォンなどの放熱シートとして利用されている。
・面状のナノ炭素「グラフェン」:結合の強さが高性能の源
グラフェンは、ダイヤモンド以上に炭素同士の結合が強い。
・熊本大学 松本泰道 副学長(工学部元教授)
鉛蓄電池に「酸化グラフェン」を応用すると、大幅な小型化が期待できる。
・筑波大学 長崎幸夫教授/名古屋大学 篠原久典教授
ガドリニウムという金属を中に入れたフラーレン(籠状のナノ炭素)を使ったがん治療の研究が行われている。」“
で、科学に疎い当方には、炭素材料と言われるとダイヤモンドであり、利用用途として釣竿、ゴルフクラブ、テニスラケットや、飛行機機体などに使われている炭素繊維しか浮かばないが、ナノ炭素素材は奥深く広範囲な利用用途にあることを知り、炭素を制することで未来が開けると思いましたね。
番組で、「酸化グラフェン」による蓄電池の小型薄型の試作品や「フラーレン」応用によるネズミのがん治療の研究成果を視聴し、100万分の1ミリ、1ナノメートル単位で配列を整えたナノ炭素素材での研究開発は、目視できない世界での開発であり、炭素原子の機械的な六角形配列の結合が硬さ、引張り、熱伝導、通電性の解説を視聴すると団塊世代の凡人には異次元の世界ですね。
ゲストの篠原 久典・名古屋大学教授が、番組の最後に、“「19世紀は鉄の時代、20世紀はシリコンの時代、でも、21世紀は、多分、炭素の時代だろう」”と語っていましたが、炭素が未来社会を切り開くと思いましたね。
「付記」
日本経済新聞電子版 2013/11/18
『スマホ部品にもナノ炭素素材、世界で実用化競争』
”「日本人が発見したナノテクノロジー(超微細技術)の代表的な素材の一つであるカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)が、二十数年の研究を経て電子機器に本格応用され始めた。ただ、先乗りしたのは日本ではなく台湾・中国の企業だった。
・・・・・・」”
日本社会は、革新的、先鋭的な物を、実績が無いことで慎重になる体質ですが、宝の持ち腐れや後手後手にならないことが必要ですね。
材料技術が無いとティアワンの資格がないというが、その材料技術とはという問いを抱いて、玉ねぎの皮むきのようなことを何層にもわたり中心部分にはトライボロジーという、無気力な技術者がいるというのが実態だ。
この形勢一変する、島根大学客員教授の久保田博士らが
提出した炭素結晶の競合モデルというのはこの事態を一変させるもので、「半世紀に渡りトライボロジストが見続けていた夢」とまで評されている。今後の活躍が大いに期待される。
いくら機械的特性(材料強度・硬さ)が高くても、材料というものは摩擦に弱い。
そのため潤滑油が存在する。しかしながら、それでも弱いので
コーティングをする。
しかし、日立金属が開発した自己潤滑性特殊鋼SLD-MAGICは
コーティングレスで摩擦に強いことが特徴。そのメカニズムは
潤滑油と鉄鋼材料が相互作用を起こし、グラファイト層間化合物(GIC)
という高性能な潤滑物質を作るためであることが、日立金属技報
2017で公表された(CCSCモデル、炭素結晶の競合モデル)。
これにより機械部品の設計は小型化され、摩擦損失と軽量化の同時
解決が見込まれ、低フリクションによる自動車の燃費向上に大いに寄与することが期待されている。
そういうことで、金型鋼材の使用量がかつての1/9ぐらいに削減しました。
「いい」「わるい」のメカニズムがグラファイトとダイヤモンドという真逆の物性を持った同素体でそのメカニズムが語られ、その判定もラマン分光で明瞭な判定ができるからです。