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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

7月の海浜植物

2024-07-28 15:15:24 | 植物
夏は海浜植物が花を咲かせ、海岸では砂丘を覆う葉の緑色の中に様々な花の色が混ざり合い色彩豊かです。

紫色の花を咲かせたハマゴウ。
海岸の砂丘の奥の方に群生し、その強い根は海岸の砂を固定する役割があります。
その根が生きていれば再生可能で、繁殖力がとても強い植物ゆえに厄介者扱いされてしまうのです。
海岸では草刈り機などで刈り取られた無残な様子をよく見かけます。
しかし、その種子はマンケイシ(蔓荊子)と呼ばれ、漢方薬では風邪の症状に効き、頭痛、神経痛にも効果があるそうです。
海岸にも人にも大変有用な植物だと思うのですが、一般的にはその事があまりよく知られておらず残念です。
個人的には真夏に潮風が運ぶハマゴウの香りが大好きです。


オレンジ色の大きな花のスカシユリ。
海岸の崖や岩場で花を咲かせ、オレンジ色の目立つ花はとても美しいです。
人が登れないような急斜面の崖で咲く花を見ると、スカシユリの生命力の強さを感じます。
他の海浜植物が進出出来ないような厳しい環境を選ぶという知性ある植物だと思います。


小さなヒマワリのようなネコノシタ。
別名ハマグルマとも呼ばれ、葉を触るとザラザラして猫の舌に似ているのが由来だそうです。
砂丘の手前から這うようにして全体を覆っている植物です。
波打ち際から砂丘を見た時に緑色に見えるのは、ほとんどがネコノシタの葉といってよいくらい勢いがあります。


熟したハマボウフウの種子。
花期の長いハマボウフウは夏にも白い花を咲かせていますが、春頃に咲いていたものは一足先に種がこぼれ落ちそうです。
こぼれた種は来年またこの場所で芽吹き、砂丘全体に広がっていきます。


海辺に咲くハマユウ。
近づくと潮風にのって花の香りが漂ってきます。
一説によると人によって海岸に植えられたハマユウがあるそうです。
白い花の美しさとその香りが人に好まれたのかもしれません。
南房総市の太平洋側の海岸砂丘には大きな群落があるのですが、それが人為的なものだとしたら残念です。
その他の例として別の海岸ではガサニアが植えられていたりします。
以前海岸でピンク色のガーベラのような花が一輪咲いているのを見たことがあります。
おそらく園芸種の球根が川から流れ着き、偶然にも根付いたものだと思うのですが、人為による植物の増殖はとても危険に感じます。
その場所に適応した植物を駆逐してしまうことにも成りかねません。
人が海岸の自然環境に手を加えてしまったものは、元に戻すことが難しいと思うのです。
また、それとは逆に海岸に適応した海浜植物が増えれば、ハマゴウのように排除されてしまいます。
海岸へ流れ着いた一つの種子から長い時間をかけて定着した様々な植物が、種子から種子へと引き継がれた海浜植物の歴史が現在の海岸の姿です。
もっと海浜植物が重要視されるようになれば、海岸に暮らす生き物の種も増えて来て、その先には豊かな海へと繋がっていくかもしれないと思っています。









4月の海浜植物の花 2024年

2024-04-21 22:15:54 | 植物
春一番に咲き始めるのはハマエンドウ。
群落を作るハマエンドウの紫色の花が咲き揃うと、海岸は華やかな景色になります。
マメ科のハマエンドウは後浜の砂丘の手前側で群落を作り、斜面が一面ハマエンドウで覆われ葉の緑色と花の紫色が離れて見てもよく分かります。


砂浜の最前線にあるコウボウムギ。
白い花を咲かせているのは雌株です。
カヤツリグサ科のコウボウムギはスゲ類では珍しい雌雄異株だそうです。

砂丘を歩くと黄色いハマニガナの花も咲いています。
ハマニガナはキク科の植物ですが、砂に埋もれるように茎が短く葉も地面から直接出てきている感じです。
千葉県ではレッドリストのカテゴリーD一般保護生物で、個体数が少ない、生育環境が限られ自然環境の構成要素としての役割が著しく衰退する可能性があるとしています。


カヤツリグサ科のコウボウシバは茶色く長い穂の様な頂小穂が雄性で、その根元に見える白色の花を咲かせるのが雌小穂と呼ばれるものだそうです。

海浜植物の代表とも言えるハマヒルガオ。
ヒルガオ科の植物でピンクの美しい花が満開になると、海岸全体がピンク色に染まっているかと思うくらい綺麗です。


ハマボウフウの花も咲き始めています。
光沢のある緑色の葉の中央に花芽がありました。

セリ科のハマボウフウは白い花をたくさんつけています。
千葉県ではレッドリストのカテゴリーC要保護生物で、個体数が少ない、生育環境が限られ、放置すれば著しい個体数の減少は避けられないとしています。


海岸性低木にも花が咲いていました。
マルバグミの白い小さな花が満開です。

グミ科のマルバグミの花は近づくとふわっと匂います。
他のグミと比べると丸い葉をしているのが名前の由来だそうです。


トベラの花の匂いも潮風で辺りに良い香りが漂っています。

トベラ科の植物で葉を揉んだり切ったりすると悪臭がするそうで、節分の時に魔除けとして門戸にトベラの枝を挟んでいた風習があったそうです。
その事からトビラと呼ばれたのが名前の由来だと言うことです。

個人的にトベラの花の香りが大好きなのですが、葉から悪臭がするのは知らなかったので、今度葉の匂いも確かめてみようと思います。

海浜植物は潮風の塩害や強風による飛砂等の環境にも適応している力強さがあります。
特殊な環境ゆえに海岸が開発されれば、その数を減らしてしまうこともあります。
その他にも人が海岸へアクセスするために歩く場所には、人による砂浜の踏み締めにより植物が生えなくなってしまいます。
人の立ち入りを制限するのは難しい事なので、植物にとって良い環境を保つのはなかなか大変です。
砂浜を出来るだけ歩かなくてもいいように、木道を砂浜や砂丘に設置すると言う考えがある事を知りました。
遊歩道を作り、そこだけを人が歩けば植物や小さな生き物にも負荷がかからず素晴らしい事だと思います。
いつか南房総の海岸でも木道の遊歩道が整備されれば嬉しいです。

















6月の海岸に咲く花

2023-07-01 09:52:14 | 植物

梅雨の雨の合間の晴れの日に海岸を歩くと、ネコノシタが咲き始めていました。
その花の蜜を吸いに来ていたウラナミシジミはこの時期の海岸でよく見られます。


小さなヒマワリのような花を咲かせるネコノシタは、別名でハマグルマとも呼ばれています。


海岸の岩場にはスカシユリが咲いています。


同じ場所に咲いていたボタンボウフウの花。


まだ蕾が多く、白くて小さな花が咲き始めていました。


グンバイヒルガオの紫色の花は海岸でも一際目を引きます。
沖縄〜四国では普通に花が咲きますが、南房総では限定された海岸で開花する珍しい植物です。

一足先に花を咲かせて実が熟し始めていたハマボッス。




ハマボッスはこんな感じの白い花なのですが、日本原産の多肉植物だそうです。


紫色のハマゴウの花。


自宅近くの海岸にはハマゴウ群落があり毎年海岸清掃の一貫で刈り取られてしまうのですが、今年はまだ残っていました。
海岸整備されずに済んだ植生は自然が残された貴重な場所です。
潮風、日照りなど特殊な環境の中で、忍耐強く逞しく生きる海浜植物は、ずっと昔からここに居て全てをみて来た存在のような気がします。



夏の海浜植物の花々

2022-07-07 21:35:06 | 植物

今日は念願だったハマナタマメの花に出逢えました。
数年前にこの海岸の群落のことを知ってから気になっていたのですが、今年やっと開花の時期に間に合いました。
間近で見ると本当に美しい花です。



オレンジ色のスカシユリ



白色のボタンボウフウ



黄色のネコノシタ



紫色のハマゴウ



ハマゴウは真上からの花の形が好きなのです。



ハマユウの花は近づくと、とても良い香りです。
夏の海岸は様々な海浜植物の花が咲き、とてもカラフルでした。



そして今日のビーチコーミングではシラタマガイとマメウニ。