そうですね…
確かに亡くなる当日は
朝から明らかに辛そうな
弱り切った状態でした。
朝方5時過ぎ。
あまりにも辛そうだったので
夜通し横になっていた地下の寝室から
抱きかかえて1階のリビングの酸素室へ
移動させました。
酸素室に移動しても
本当に身体が辛そうでした。
でも、
チューブで充分に酸素が吸えているかどうか?
定かではない地下室での時間よりも
酸素室に入ってくれたことで
必然的に酸素濃度が確保されている訳ですから。
私は不覚にも安心してしまって
『ちょっとだけ眠らせてね』と
酸素室の前で横になったんです。
そうしたら
セットしていた目覚ましも
きっと無意識に消していたんでしょうね。
6時半に起きて
子供たちを起こして
長男坊のお弁当を作って…と思っていたのに、
目を覚ましてみたら7時45分でした。
酸素室の前で2時間も眠ってしまっていました。
もう慌てて子供たちを起こし…
長男坊は何とか急げば学校には間に合います。
でも、困ったことに
問題は次男坊。
地域の普通学校に通う長男坊とは違って
スクールバスで支援学校に通う次男坊は
バスに間に合わなければ
学校まで直接送っていくか
もしくは休ませるしかないんです。
で、
7時45分という時間は
どんなに頑張っても
家から車で5分ちょっとのバス停には
絶対に間に合わない時間だったのです。
とりあえず
長男坊のお弁当を詰め、
次男坊の学校にはバスに間に合わない事を連絡し…
それから
心底 迷いました。
この状態のレンを家に置いて
往復 最短でも40分はかかるであろう
次男坊の学校への送迎をするか?
この状態のレンが家に居るのに
騒がしい次男坊を休ませて家にいさせるのか?
私が眠りこけてしまったが故に
とんでもない選択をする羽目になったんです。
そうやって慌ててバタバタしていて
ふとレンに目をやると
敷き詰めたトイレシートの上に
オシッコが出ていました。
いつオシッコをしたのか?
私に
『酸素ハウスから出して、トイレに行きたいから!』と
もしかして訴えていたのを
私が慌てていたので見落としてしまったのか?
それとも、
もうレン自身がトイレへ行きたい…という
そんな元気すら無かったのか?
今となってはもう
それがどっちだったかは分かりませんが、
その時は
『気付いてやれなくてごめんね、レン!』と
声を掛けながらオシッコで汚れたシートを
取り替えてやろうとしたのですが。
もう力なく頭を持ち上げられなくなっていたレンは
オシッコで汚れたシートから移動することもせず、
ただただそこに横たわったままでした。
なので
何とか汚れたシートを引っ張て取って、
新しいシートを押し込むように
形だけは敷きなおしました。
時間は8時半ぐらいの事だったかな…
それぐらいから
レンは頭を何かを台にして
体勢を作っていました。
どんな体制をとっても
レンは辛いようで、
ちょっとでも楽な姿勢を探すかのように
あっちを向いたり、
こっちを向いたり…と
しきりに方向転換をしていました。
そのうち
酸素ハウスの中に設置した飲み水の器に
アゴを載っけて休むようになりました。
しかも
その飲み水の器は
ちょうどフィットするようで…
お水はちょっとでも
『飲みたい!』と思った時にすぐに飲めるようにと
酸素ハウスが来てすぐに設置しましたが、
今のレンの状態ならば
自分の意に反して
鼻先が水に浸かって…
もしかしたら溺れてしまうかもしれない!
…そんな不安が頭をよぎりました。
なので、
迷いはしましたが
やはり危険と思われたので
すぐにお水をハウスから出しました。
ハウスの中には
ハウス内の温度を下げるために
凍らしたペットボトルを幾つか置いていたので
直接 身体に触れないように
丸めたタオルやらを既に置いてありました。
そのタオルにアゴを載せたらいいのに…と
私は思いましたが
どうやら、そのタオルの柔らかさは
アゴを載せるとレンの思うベストポジションより
少し沈んでしまうんでしょうね。
だから固いお水の器に頭をもたげたんでしょう。
見ていてそう思った私は
さっき撤去したお水の器と同じ高さの
柔らかすぎないものを探しました。
そして、
箱ティッシュのカバーで
周りの辺に太いワイヤーが入っていて
しっかりしているけれど
面は布(?)張りのものを発見。
高さはピッタリ、器の高さでした。
しかも
長男坊が以前に踏んづけてしまって
一辺がほんの少しだけ凹んでるんです。
それがアゴを載せるには
きっとちょうど良いハズ!
そう思った私が
さっそくハウスの中に入れてやると
長い時間、
アゴを載っけたり
抱き枕のように腕をかけてみたり
あんばい良く使ってくれていました。
気温が上がってくるので
ちょうどティッシュカバーでしたから
ティッシュを入れる部分に
保冷剤を入れてやったのも
もしかしたら気持ちよかったのかもしれません。
終始 身体、呼吸は辛そうでしたが
ほんの少しだけは
体勢が確保できているようで
『ちょうど良いのがあって良かったね』と
声をかけました。
そんなことをしながら
遅刻ギリギリで長男坊を家から追い出し、
さぁ…
次男坊はどうしようか?と
究極の選択。
でも
最短40分。
そこを何とかクリアすれば
午後までは静かに過ごさせてやれる。
学校までの往路、
ずっと不安でいっぱいでしたが、
後から考えれば
そうすことによって万が一の時
一体何の役に立ったんだろう?…と思ったけれど。
クルが動かさないように
スマホをテープで固定して
酸素ハウスの中 全体を動画に撮れるように設置して
それでクルに『レンのこと頼んだよ!』と声を掛け、
私が居なくなった!と
ちょっとでも感じなくて済むように
不用心だけど、
マンションの玄関のドアをいつもしているように
網戸に切り替えて全開にしたままで
テレビも小さな音でつけっぱなしにして、
動画のスタートボタンを押し、
次男坊の手を引き
慌てて学校まで行きました。
急いで学校から帰ってくると
いつもは必ず玄関ギリギリに座って待っているクルが居ない。
一気に不安になって
玄関から『クルー!』と呼びながら靴を脱ぐけど
それでもクルは玄関に出てこない。
心配に駆られながら
レンの待っているリビングに入ると、
クルが酸素ハウスの上に陣取って
まるでレンの守り神のように座ってました。
後から撮れていた動画をチェックすると
撮られていた動画は33分間で
画面には酸素ハウスの中しか映していないから
本当の事は見ていませんが
かなり早い段階でクルの鈴の音が入っていました。
きっと私が出て行ってすぐから
酸素ハウスの上に飛び乗って
レンを見守っていたんだろう…と推測できました。
一方、当のレンは、
私が家を空ける前までと変わらず、
やはり呼吸が前日までとは打って変わって
かなり辛そうで…
時々
『あれ?ちゃんと息してる?』と
私の心臓が止まりそうになるぐらい驚いて
目を凝らしてよーく見ると
やっと判るぐらいにお腹が動いていて、
そうかと思えば
もうこれ以上ないぐらいに深呼吸のような息をしたり。
結局
亡くなるその時まで
こんな感じの呼吸でした。
クルはレンが本当に心配な様子で
こうやってクリアケース越しにレンの様子を伺ったり、
クリアケース越しに同じポーズで休む姿が見られました。