
受験は戦(いくさ)とよく言われる
もしそうだとしたら
本当に過酷な戦である
終わりの決まっている戦である
相手が自分一人の戦である
勝ち負けがはっきりしている戦である
周りにたくさん同じ志をもって仲間がいると考えれば心休まるが
本番の戦では仲間からライバルに転じると考えればそうもいっていられない
途方もなく過酷な戦に
君たちは自分の身一つで立ち向かわねばならない
本番もって良いのは筆記用具のみ
その先にある未来を信じて
この戦が終わることを信じて
ただ自分の力を試したくて
そうなんだ
自分の力を思い切り試せる場なんだ
10年もしてしまえば
受験はかなり過去のことになってしまう
まして「学歴なんて関係ない」という風潮だから
ますます自分が受験生だったころの志はぼやけてみえる
しかし
長い人生において
こんなに自分と向き合える時間はない
己を信じ
己の弱さを知り
そんな己と生き抜く戦
戦いの先には
思った通りの未来がないとしても
全力で戦っている
今の姿は美しい
かけがえのない時間だ
戦の朝がくる
使い慣れた参考書を鞄に入れ
立ちすくむような寒さの中を
コートを羽織って会場に向かう
君の背中はいつもより大きくみえる
立ちはだかる会場を前に
深呼吸をして
今までのことを思い出す
この場所への思いを確認する
走って教室に向かう
君の足取りはいつもより頼もしくみえる
すべてを終えて
「いま終わった」とそっけないメールに安堵を託して
家について家族の顔をみると
家族のことがいつもよりも温かく感じる
多くのものに支えられていたことに気づく
コートを脱いで
ソファーに飛び込む
これで君は英雄になった
戦を戦い切った
前とは違った自分に会えた
全力で戦ったことに満足した
自分に会えた
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