goo blog サービス終了のお知らせ 

ねぎ置き場~ひっそり貯えるネタの貯蔵庫~

(自称!)青春系ダンスユニット○~まる~の左。ダンスやったり、表現したがりな三十路が送るブログエンターテイメント

使われていないポスト

2016-05-01 22:22:00 | ねぎ詩
今やメールやラインが主流になり
TwitterやFacebookでつながりを感じている人で世の中は溢れている

彼は郊外都市の忘れられた郵便ポスト
忘れられたタバコ屋の前にある
昔はバス停も近くにあって

シャイな女学生の手紙
遠方の家族を思うサラリーマンの手紙
近所の友達へのさりげない手紙
孫を思うおばあさんの手紙

色々な便りが彼の口に入れられた


今ではすっかり忘れられて
郵便局員だって
一通もないことを確認するためだけに
扉を開いていた

彼の上を電波が通り過ぎていく
彼の周りには草が生えていく
彼の赤はだんだん錆びていく


それでも彼はその場に立ち続けていた

何も入れられない郵便ポスト
便りを受けない郵便ポスト

彼はそれでも立ち続けていた


ある日
彼の前に
おばあさんが立っていた
おばあさんは雨の中傘を差して立っていた

「まだ立っていてくれたんだねぇ…」

まるでありがたい仏像でも崇めるかのようにおばあさんは彼を眺めていた

おばあさんは彼の口に久しぶりの手紙を入れた

「本当に久しぶり。立っていてくれてありがとう。」

おばあさんが外出するのは実に五年ぶりだった。
毎日東京に住む孫に手紙を送っていたおばあさん。
ある日を境に病にかかりおばあさんは入院してしまった。
思ったよりも長くかかった入院は孫への手紙を遅らせた


おばあさんは笑顔でもう一本手に持っていた傘を彼にかけた


おばあさんへの手紙は2、3日中に届くだろう
例え手紙が届かなくともおばあさんは満足だった
気持ちを込めた文字を飛ばす

孫のことを思えた自分に思いを馳せる

郵便ポストは
彼は

立っているだけで意味がある
そこに立っていることで
誰かを励ましている

離れていても気持ちは届くんだということを象徴している

街と共に立つ
彼とともに街がある

電波では届かない場所も
彼がいるという安心感は届く

おばあさんの傘によって
濡れなくなった彼の感謝の思いは
きっと14:00の郵便局員に届くだろう




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。