統一地方選の前半戦である県議選の告示が3日に迫った。地方議会や議員の実態を検証し、課題を探る。
「予算、ありがとうございました」。県議会2月定例会最終日の3月18日、2015年度当初予算案などが可決され閉会すると、谷本知事は各会派を回り、県議らと笑顔で握手を交わした。最終日に恒例の風景だ。
14年の知事選で、県議らは共産党などを除いたほぼ「オール与党体制」で谷本知事を支援。明確に「反知事」を表明するのは3人にとどまる。
地方自治体は、首長と議員が別の選挙で選ばれる「二元代表制」で、議会には強い権限を持つ首長の監視機能などが期待されているが、県内では両者の「緊張関係」は乏しい。県議会事務局によると、谷本知事が初当選した1994年以降、県議会で知事提出の議案を否決・修正した例はない。読売新聞の取材では、県内19市町でも、2011年の前回統一選以降で首長提出の議案を否決・修正したのは計9件だけだ。
谷本知事は県議会との関係について「いたずらに対決することだけが二元代表制ではない。互いに良いものをくみ取り、施策に反映すべき」と話す。
ある県議は、「多くの議員は、地元の事業がなくなったり後回しにされたりすることを恐れ、予算編成権を持つ首長が嫌がることはしない」と話す。別の県議は、かつて、執行部幹部の再任を阻止する機運が高まったが、立ち消えになったことに触れ、「難しい問題は執行部が事前に各会派の要職に根回しし、ベテラン議員は知事との関係に気を配る」と打ち明けた。
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議員には政策立案能力が求められるが、県内の議会ではどうか。
読売新聞の取材では、前回統一選以降、議員提案の政策条例は、県議会では「いしかわの酒による乾杯を推進する条例」など2件、19市町では加賀市と金沢市で計3件だけ。ある県議は「多くの議員は、議員になることが目的で、実現したい政策がない」、ある市議は「ほとんどの議員は執行部に予算を付けてもらうことにしか興味がない」と話した。
議員提案で09年に成立した改正「県いしかわ子ども総合条例」は全国で初めて、小中学生の保護者に子供に携帯電話を持たせない努力を義務付けた。提案に関わった元県議は「執行部は住民の反発を恐れて反対し、ベテラン議員は執行部の意をくんで反対した。保護者団体が賛同してくれて、やっと議会内の理解を取り付けた」と振り返り、“執行部の壁”を切り崩す難しさを吐露した。
東北大の河村和徳准教授(地方政治論)は、「多くの議員は、地元と役所をつなぐ『メッセンジャー』でしかない。北陸新幹線を活用するなどし、まちづくりを進める提案力が求められる」と指摘している。
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