
- <noscript></noscript>洗濯物がぶら下がった屋外教室で勉強する生徒たちと創立者の林希聖さん(左)=香港の基督教正生書院で、田村充撮影
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香港に、非行に走った若者たちが学ぶ全寮制学校がある。教員が寝食を共にして指導にあたり、卒業生の9割が立ち直る成果を上げている。
この学校は1998年に創立された私立の「基督教正生書院」。キリスト教に基づき、日本の中学校と高校にあたる教育を行い、歴史や数学、英語などを教えている。香港島の西に浮かぶランタオ島の人里離れた山間部にあり、生徒は11~23歳の男女78人。共同生活を送りながら、社会復帰を目指している。
9月下旬に訪ねると、男子生徒十数人が、キャンプ活動やヨット体験について感想文をつづっていた。腕などに入れ墨をした生徒も多いが、表情は真剣だ。
「入校当初はケンカも起きるが、規則正しい生活を3~4か月も送るうちに、友だちができ、学習意欲も高まる」。男子生徒たちと同じ部屋で寝起きする教員、陳世雄さん(28)が話す。かつての不良仲間との接触を断ち切るため、携帯電話の所持は禁止だ。
情熱指導、学習に目覚め
「集団生活で自分を鍛えたい」と、自ら望んで入校する生徒もいるが、違法薬物の使用など非行を重ねた末に、裁判所から保護観察処分として入校を命じられた生徒が大半だ。最低2年間学ぶことが課せられる。
ところが、教員の情熱的な指導などで学ぶことに目覚める生徒が多く、約半数が強制学習期間を過ぎても自ら進んで残り、学び続けるという。
創立者の林希聖さん(60)は「生徒たちは薬物を断ち切って健康になり、モラルも養われる」と胸を張る。これまでに100人以上が卒業し、レストランのコックやトラック運転手などとして就職。大学に進学する生徒もおり、今年初めて現役合格者が出た。
5年前に入校するまで毎日のように違法薬物を使用していたという女子生徒(21)は「自分も社会のために何かをできるのではと思えるようになった。大学で会計学を学びたい」と明るく語る。
同校について、香港政府で薬物問題に関する委員会の主席を務める石丹理・香港理工大学教授は「過ちを犯した青少年が人生を取り戻すことに貢献している」と評価している。(香港 比嘉清太)