東京国立博物館で開催されている、特集陳列「古代技術の保存と復元ー古墳時代金属器の修理・模造・復元ー」を記念して、講演会と座談会が行われたので聴講した。
出演は押元信幸氏(金工作家)、依田香桃実氏(金工作家)、鈴木勉氏(橿原考研研究員)、古谷毅(東博考古室長)であった。
最初は古谷考古室長による復元模造品について、文化財保護法(S25年)成立以前の東博にある模造品の説明があり、昭和初期の復元模造品や近年の修理復元模造例を比較し、博物館における修理・復元のあり方を考えるというものであった。
続いて、二人の金工作家による模造品の作成方法と苦労話があった。
(馬具のくつわ部分の金属模造品・辻金具)
依田氏の「鉄地金銅張り」については、出土した馬の辻金具(革ベルトの交差部をつなぐ金具)制作の苦労話(鉄地金銅張りとは、鉄地で出来た馬具の金具などに、鍍金した薄い銅板をぴったりに被せる技法のこと)。
(群馬、前橋市金冠塚古墳出土王冠・上が現物の修正品、下は模造品)
(江田船山古墳出土・金の履物、上が現物修正品、下は模造品)
押元氏からは、鍍金法についての説明があった。(金銅板と呼ばれている材料のほとんどが、奈良の大仏に代表されるような、銅や青銅に水銀と金のアマルガムを用いて、金の薄い膜を接合させることによりできている。)
千数百年経った金属は、保存による経過により変形・酸化してしまうためレプリカ制作による現状記録化を図ったり、修理で復元する必要がある。
講演を聴講して、発掘された文化財が復元展示されるまで、こんなに大変な作業があるのだとは思っていなかったのでありました。
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