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ナルキッソスの神話

2013年03月04日 | 研究
ギリシャのナルキッソス神話は、そのナルキッソスという名が示すとおり、人間の経験に直接かかわっている。それはギリシャ語のnarcosisすなわち「感覚麻痺」に由来する。青年ナルキッソスは水に映った自身の姿を他人と見間違えた。鏡によるこの拡張がナルキッソスの知覚を麻痺させ、ついに自身の拡張あるいは反復されたイメージの自動制御機構と化してしまった。   
                                                             『メディア論』

マクルーハンは、好んでこの「ナルキッソスの神話」に言及する。この神話の意味するところは、ナルキッソスが水に映った自分に恋したなどということではなく、人間は自分以外のものに拡張された自分自身を、自分とは認識できないばかりか、その拡張された自分自身にたちまちに魅せられてしまう、ということである。自身の拡張によって生じたストレスを解放するためにこの感覚麻痺が起きる。新しい諸感覚の均衡のための感覚比率の調整である。このメディアの麻痺状態から人々を目覚めさせることがマクルーハンの仕事の目的であった。
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