失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「『いちご白書』をもう一度」 バンバン 1975年

2014-03-28 | ユーミンみゆき
バンバン are; ばんばひろふみ、今井ひろし、高山弘、高尾稔(1975年当時は、ばんば・今井の2名)

1993年にリリースされたバンバンの3曲入りシングル。

①永すぎた春
作詞・作曲:ばんばひろふみ、編曲:木田高介
1973年の3rdシングル。今井ひろしのエレキが妙に浮いた印象のイントロ。サラサラ流れていくような軽快なメロディに乗せて、タイトルどおり結婚のタイミングを逃した男女の倦怠が描かれる。風のヒット曲「22才の別れ」(1975)は同じようなテーマを女性の側から描いた作品だった(作詞作曲は伊勢正三。歌詞にも「ながすぎた春」が出てくる)。タイトルは三島由紀夫の1956年の同名小説から?小説発表当時に映画化され「永すぎた春」は流行語になったらしい。今でも普通に通用する、50年代に生まれた流行語。三島先生、さすがだな。

②「いちご白書」をもう一度
作詞・作曲:荒井由実、編曲:瀬尾一三
バンド最大のヒットとなった1975年の5thシングル。自作曲が売れず、行き詰ったバンバンが4つ年下のユーミンに直訴。ソングライターとしても売り出し中だったユーミンの、初期の代表的提供曲になった。まず映画見てなくてもイメージが広がるタイトルが秀逸。イントロからギルモア風の泣きのギターが炸裂!①と違って、全体のアレンジの中で違和感なく溶け込んでいる。「いつか君と行った 映画がまた来る」諦めにも似た、ため息混じりの追憶。冒頭から物語に引き込んでいく力は、さすがユーミン。YouTubeもDVDもVHSもなかった、昔むかしのお話。映画の「一回性」が今よりはるかに貴重で、輝きを持っていた時代。学生運動の季節が終わり、長髪を切って就職した主人公が、リバイバルの映画のポスターを見て昔の彼女を思い出す。「いちご白書 The Strawberry Statement」は、学生運動を描いた1970年のアメリカ映画。70年代ならではの時代性をがっちり捉えながら、枠組みとしてはより普遍的な視点を獲得している。主人公の学生運動との距離感、社会人になった自分への冷めた批評的観察眼。サビではドラマチックな高揚感も用意されていて、歌謡曲としての完成度は文句なし。改めて、70'sユーミンの怖いくらいの切れ味を感じる傑作。同じ年に「ルージュの伝言」だもんなあ。

③人生坂 
作詞:森田美佐子、作曲:ばんばひろふみ、編曲:瀬尾一三
2ndアルバム『季節風』(1975)収録曲。タイトルからして重い。こちらも70年代的ではあるが、時代を超えられないシリアスムードに懐かしさを感じてしまう。
どうでもいいことを書くと、天井部分に「永すぎた春/「いちご白書」をもう一度 他 全3曲」とあるが、「人生坂」と入れたほうが「他 全3曲」より短い。

定価1000円、中古で200円。
扉、雲、木の影、すべてが淡い、ぼんやりイメージ。こんなのですみません、と担当者の声が聴こえてきそうな、売る気の感じられないジャケだな。こんな薄口の新デザインにするくらいなら、オリジナル7インチジャケそのまま使えばいいのに。下は三つ折りの歌詞カード。こちらは妙に贅沢な作り。

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