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拾い読み★2015-237≪コラム記事≫

2015年08月25日 19時47分50秒 | マリーンズ2011~15
【千葉魂】 香月良、父の思いと共に コツコツと一歩ずつ前進

 空を見上げる。野球が好きだった父は見てくれているだろうか。ふと思う。マリーンズセットアッパー陣の一角として貴重な活躍をしている香月良仁投手を語る上で父の存在は欠かせない。社会人チーム・熊本ゴールデンラークスに入った1年目の11月20日に父は亡くなった。享年57歳。早すぎる別れだった。だから、プロ入りしたことを知らない。野球が大好きで、子供の時からいつも指導をしてくれた。今のフォームの土台をつくってくれたのも父だった。

 「めちゃくちゃスパルタでした。一つ上の兄(香月良太巨人投手)と一緒にいつも指導をされていました。でも父がいたから、今の自分はある。父が亡くなってから、自分はプロに指名された。父が導いてくれたのではと今でも思っています」

 8月になるとスタジアムには親子の姿が目立つようになる。その光景を目にすると、ふと父のことを思い出した。子供の時、家族旅行やどこかに遊びにいったという類いの思い出はまったくない。父と兄と3人でひたすら一日中、野球を行った。父は仕事を終えるとすぐに帰宅し、子供たちの指導をするのが日課だった。

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 「父は中学までしか野球をやっていなかったけど、大好きだったみたいです。子供が生まれるとすぐに『プロ野球選手にさせたい』と母に話をしたと聞いています。調理師でしたが、子供との時間をもっとつくりたいと会社員に転職をしたと聞いています。父が飲みに行ったりしている姿を見たこともないし、友達と遊んでいるのも見たことがない。いつも兄と自分と野球をしていました」

 今も福岡県久留米市内の実家の和室には親子3人の思い出が残っている。毎日の日課はシャドーピッチング200回に素振り200回。まず兄がそのメニューをこなし、次に弟。いつしか和室の畳は擦り減ってしまった。今もその畳は思い出として残されている。

 「懐かしいですね。兄弟の試合はすべて見に来てくれてビデオを撮ってくれていた。そして家に帰って反省会です。その繰り返し。家にはめちゃくちゃ野球の本とビデオがありました。メジャーの映像も見せてくれました」

 濃密な時間だった。父からいろいろなことを教えられ、励まされた。そんな親子の時間は突然、別れの時が来た。香月がまだプロへの道が見えていない社会人1年目の11月。実家に遊びに帰っていた香月は夕食を共にした後、両親と別れ、チーム寮のある熊本に戻った。その夜遅く、携帯電話が鳴った。心筋梗塞だった。野球で生きる自信も確信もない頃。突然、一番の支えを失った衝撃は大きかった。そんな時、励ましてくれたのは先にプロ入りした兄であり、父の言葉だった。口癖のように毎日、言われたメッセージだ。

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 「オマエはすぐに活躍するのは無理なタイプだ。それは小学校でも中学、高校でも大学でも社会人でも同じ。オマエはいつだってコツコツと一歩ずつ前に進むしかない。何事にも諦めないで、地道にやらないとダメだぞ」

 兄は小学生のころから注目を集める選手だった。高校時代には誰もが知る存在となり東芝を経て自由枠でプロに入った。その陰で野球をする弟に、父はいつもそう言って、励ましていた。社会人になっても同じようにエールをくれた。その言葉がずっと香月を支えた。一度は野球を辞めようと思ったがチャンスがある限り、地道に頑張る道を選んだ。そして父が死去した2年後にマリーンズから指名を受けた。プロ入り2年目の2010年には初勝利。その後はなかなか1軍登板機会は巡ってこなかったが、父の言葉を思い返し、歯を食いしばり、練習に明け暮れた。そんな日々が報われ、今季は安定感ある投球で結果を出し、マリーンズ投手陣において欠かせない存在になりつつある。

 「自分は150キロを出せるわけではないのですが、フォームで打者のリズムを崩したり、見えにくいフォームを意識して投げることで生き残っている。このフォームも小学校の時に父から教わったもの。フォームの基本の部分はあの頃からなにも変わっていない。小学校時代のチームメートからもよく言われます」

 香月はマリーンズに入団した際に、その契約金で父のお墓を建てた。母から聞いた父が大好きだったという久留米市内が一望できる山間の場所の近くの墓地を選んだ。今も苦しい時は父の言葉を思い出す。「オマエはどんな時もコツコツやるしかないぞ」。厳しかった父が話しかけてくれるように感じる。これからも一緒につくり上げたフォームと共にマウンドに上がる。野球が大好きだった父のためにも、一歩ずつ前に進もうと決めている。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

(千葉日報)
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