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拾い読み★2011-151≪コラム記事≫

2011年05月31日 05時14分36秒 | マリーンズ2011~15
プロ4年目のロッテ・唐川侑己に何が?
「勝てる投手」への目覚ましい変貌。


 高校時代、「総合力ナンバー1」と呼ばれた安定感が成熟過程に入りつつある。
 千葉ロッテの4年目、唐川侑己の今季の投球はそれだけ抜群だということだ。
 初登板こそ6回途中4失点で敗戦投手となったものの、4月20日の西武戦から4連勝。5月21日の横浜戦では、勝敗こそつかなかったが7回2失点と最低限の仕事をした。
 そうして迎えた5月28日の巨人戦。登板前日に唐川は、「3年前のことなのでもう忘れました。あの時とは僕も変わっていますから」と冷静に答えてはいた。だが、ルーキーイヤーの'08年に4回途中6失点した相手を全く意識していないわけがない。
 しかも巨人は、球界屈指の攻撃力を誇るチームだ。パ・リーグの若手投手にとって巨人戦は、現時点での力が本物かどうかを知る上で重要なバロメータとなる。
 言うまでもなく、好投すれば自信がつく。'06年のダルビッシュ有がそうだった。この年、交流戦の第2戦で4回KOされながら第4戦では9回2失点の完投勝利。高卒2年目ながらシーズン12勝を挙げチームの日本一に貢献した彼は、一気にエースの座へと駆け上がった。

「変わった自分」を見せつけ、ただでは負けなかった巨人戦。
 結果からいえば、内海哲也の快投の前に味方打線が沈黙したこともあり、唐川は敗れた。
 確かに敗れはしたが、7安打2失点の完投という投球内容からも分かるように、打ち込まれたわけではない。それどころか、彼が言うように「変わった自分」を巨人相手に見せつけることができた。このゲームでの敗戦はいわば、意味のある敗戦だった。
 どこが変わったのか。
 ボールのキレ、変化球の精度。もともと備わっていた制球力もさらに磨きがかかったことは事実だ。
 だが、それら以上に変わった点がある。先発投手として不可欠な、ゲーム中に配球の組み立てを変えられる修正能力が身に付いたことだ。

ミスから自力で立ち直り、試合を作る強さを得た唐川。
 初回、唐川の投球は淡々としていた。
 1番・坂本勇人への初球は鋭いスライダーで空振りを奪ったが、2球目のカーブはど真ん中へ入り二塁打。続く藤村大介にも簡単に犠打を許し、さらには三塁への送球が野選となりピンチが拡大。そして、3番の長野久義には外角一辺倒の投球で簡単に犠牲フライを打たれ、あっさりと1点を与えてしまった。
 2回も先頭の矢野謙次に二塁打されるなど不安を滲ませていたが、3回になると、それまでの外角中心の投球から内角を効果的に使いつつ緩急も巧みに操るようになるなど、唐川に明らかな変化が窺えた。
 若手の場合、本来、捕手や投手コーチの助言で投球内容が変わることは少なくない。しかし彼は違っていた。「別に変えたわけじゃないんですけど」と言いながらも、3回以降の投球についてこう解説する。
「特に誰かに何かを言われてはいません。初回から調子が良かったですし、リズムよく投げられていたとは思います。ただ、外を中心にしながらも、たまにインコースも投げる。回の先頭打者の入り方も慎重に、それでいて思いっきり投げるようにはなりました」

ベンチの信頼があるからこそできる、強気の勝負。
 冷静に己を見定め、状況に適した投球に修正することはできた。しかし6回、若いが故に、とでも言うべきか、自ら慢心をボールに宿してしまう。
 2連打と犠打で1死二、三塁としたところで、この試合で2安打を浴びている矢野への初球。高めへ甘いストレートが入ってしまい、ライトへ運ばれる犠牲フライで重い2点目を献上してしまった。
 わずかな隙だった。唐川自身、その一球をこう振り返った。
「ボールから入るとかもっと慎重になるべきでした。調子が良かっただけに欲を出しすぎたというか、反省点ではありますよね」
 この回、現実的な戦術を言えば、満塁策という選択肢もあったはずだ。しかし、ロッテベンチはそれをしなかった。
「満塁策は頭のなかにはありましたけど、することは考えていませんでした。初球の入り方をしっかりしないといけないという反省点はベンチにもありますけど、彼は何とか切り抜けてくれましたよ」
 そう西村徳文監督は言う。結果的に采配は裏目に出たものの、指揮官は満塁策というベンチワークより唐川の投球を信じたのだ。

「エース対エース」で勝ちを呼び込める投手になる!
 チームから信頼を受けた唐川は、7回以降の3イニングを1安打に抑え完投。防御率も1.46とリーグトップになった。
 しかし、彼に笑顔はない。
「少ない球数(107球)で無四球完投できたことはよかったです。一昨年や去年ならそこで満足していたと思うけど、今年、僕がチームから求められているのはそこじゃない。相手のエースが登板するところで投げさせてもらっている以上、やっぱり先制点や追加点を与えちゃいけないんで……」
 野手に故障者が続出していることもあり、右のエースにのし掛かる期待は重い。しかし、巧みな修正能力を見せ、わずかな慢心も即座に戒められる唐川は、また一歩、チームに勝利を呼び込める投手となった。
「安定した投手」から「勝てる投手」へ――。
 その真価は、これから試される。






ロッテ唐川侑巳の夢「50過ぎたら蓼科のペンションおやじに」

スポーツジャーナリストの安倍昌彦氏はかつて早大野球部でプレー。全国を旅して噂に聞こえた剛球投手の球を直にうけ、ミットの感触を文に認める。ついた名前が“流しのブルペンキャッチャー”。安倍氏が、今季絶好調の投手・ロッテ・唐川侑巳についてレポートする。


唐川侑己がこうなることはわかっていた。 彼の身上は「怒り」だ。初対面は、彼が高校3年になる春の初め。センバツ出場を目前に控えて、雑誌『野球小僧』の「流しのブルペンキャッチャー」の取材をお願いした。
「あいつはね…ブルペンじゃ本気出さないんですよ」――成田高(千葉)の尾島治信監督がそっと教えてくださった。
10球、20球。
案の定、グラウンドの練習をチラチラ見ながら、うわの空で投げ始めた唐川侑己。外角いっぱいに構えたミットの、その通りに来たストレートがスッと落ちた。
「なんだ、これが『成田の唐川』のボールかい、バカヤロー!」
思わずぶつけた暴言付きのゲキ。あっという間に、長い首から上が真っ赤に変わって、それからのボールがすごかった。
この2月、千葉ロッテ・石垣島キャンプ。紅白戦を15分後に控えたブルペン。 先発・唐川侑己投手が肩を作っている。スタンド最前列。投げる彼の、ちょうど斜め前の位置に立って、ウォーミングアップをずっと眺めていた。
目に入らないわけがない。
なのに、無視するかのようにおよそ30球投げきって、マウンドへ向かうその一瞬、チラッとこちらに目を向けたその視線が痛かった。
大人のオトコになった。
「こんちわ」なんて帽子でも取ったら、また「バカヤロー」ぐらい言ってやろうと思っていたが…すっかり、闘う大人の男になっていた。ここ一番で怒りを持って闘えるマグマ。そして、それが投球動作の調和を崩さないメンタルバランス。
50を過ぎたら、蓼科あたりの高原のペンションのおやじになりたい。大きな犬がいて、静かに雪が降ってて…。そんな夢想を語って聞かせてくれた高校3年の頃の彼。 やさしくて、そして強い男。唐川侑己がこうなることは、わかっていた。
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