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今、自分が出来ること。やれること。それを精一杯やっていかなくちゃ!!

コラム記事【12/28】

2023年12月29日 09時02分23秒 | マリーンズ2023
≪12/28≫


2023年も残りわずか。年の瀬が迫り、1年を振り返ると、印象的なシーンの一つに、ロッテ・佐々木朗希投手(22)の日本選手最速タイ165キロの連発が思い浮かぶ。

4月28日のオリックス戦(京セラ)。五回にレギュラーシーズンでは初めて165キロをマークした。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表として臨んだ3月の中日との壮行試合でマークして以来の記録だった。球数が100球を超えた七回にもマークするなど、この日だけで4度も計測。電光掲示板に「165」の文字が刻まれる度に響くファンのどよめきの声が、スケールの大きさを物語った。

指導する黒木知宏投手コーチ(50)は、佐々木朗の速球について「一つ言えるのは、手足が長く、腕を振る速度が速い。この(腕を振る)速度を出せるというのが、球速を生み出す源になっている」と分析する。

左脚を高く上げ、192センチの体をダイナミックに使うフォームは野球ファンの間ではおなじみ。「手足が長いということは、大きく遠くから腕を振れる。それをうまくコントロールしながら、速度をつけて効率よくボールに力を伝えている。本当に数が限られた、選ばれた人間しかできないこと。筋肉の面や体の柔軟性、全てがかみ合っているからできる」と賛辞を贈った。

ロッテの〝速球王〟といえば、伊良部秀輝氏(故人)がいる。1993年に当時の日本選手最速となる158キロを計測するなど、球界屈指の速球派として知られる右腕だ。現役時代にともに戦った黒木コーチは、「僕が今まで見た投手の中で、伊良部という人は飛びぬけて(直球が)速かった」と回顧する。

伊良部氏は実質的な球の速さだけでなく「早く見せるテクニック」を持っていたという。「(球の出どころを分かりにくくし、ギリギリまで)ボールを隠し、突然ボールを出す。打者に向かって距離をつめるように、飛びながらボールを投げる。そういうテクニックを持っていたので、球速よりもものすごく速く見える。一番、球が速く見える投手は今でも伊良部さん」と言い切った。

速球を投げる上で、伊良部氏と佐々木朗には共通点があるかを聞くと「郎希の球は別もの。比較できない」ときっぱり。「彼がすごいのは、ブルペンでもすごい球を投げること。ブルペンでも平気で157、158キロ投げるので、本物ですよね。突発的にたまたま出ました、ではなく本物。僕らが見たことのない景色をいつも見せてくれるから楽しみですね」。〝令和の怪物〟にはロマンがあふれている。(武田千怜) 

(サンスポ)

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 「最後の最後はチームを勝たせられる投球ができたんですけど、毎年今年もそうですけど交流戦あたりでよくなかったので、悪いところの波をもう少しできるだけガーンとならないように。そこがだいぶ課題かなと思いました」。

 ロッテ・小島和哉はプロ5年目の今季、自身初の開幕投手を務め、3年連続の規定投球回到達、2年ぶりの二桁10勝を達成、25試合・158回1/3を投げ、10勝6敗、防御率3.47も、今季の成績に満足しなかった。

春先はデータを見て投球

 「自分の中でもう少しガッと入っていけるような感じで入っていけた。作りは早かったかなと思います」。 

 開幕直後不安定だった20年、21年を反省し、22年は自主トレ期間も含めて早めに調整したが、今季も継続し開幕から安定した成績につなげた。

 これまでは2月の練習試合から登板し、この時期に武器であるカットボールの投球割合を減らしたり、新球を試したりと意図を持って色々と試すことが多かったが、今季は初実戦が3月2日のオリックスとの練習試合だった。調整面などで難しさはなかったのだろうかーー。

 「特にはなかったですね。もともと僕自身、試合でバッターと対戦してどうだっていうところ。ブルペンで投げて課題は実際に分からなくて、ビタビタにいけば良いんですけど、ブルペンはいいコース、多少甘く入ったら“あ〜違った”となりますが、試合ではそれがいい時もあるので、ただ相手の打てるコースに投げないことの方がメイン。できるだけ試合で反省を出してという感じですね」。

 開幕してからは、1巡目はストレート中心であったり、追い込んでから投げることの多かったカットボール、チェンジアップを早いカウントで投げたりと、昨季までとは少し違った投球をしているようにも見えた。

 「去年自体が真っ直ぐの次にカットボールの割合が多くて、スライダー、チェンジアップは3つ目、4つ目でした。今年は割合を見ても、いろんな球種を均等に使えている。真っ直ぐが多いですけど、スライダー、カット、チェンジが同じぐらいの割合で23%くらいで投げられている。そこは偏りがないのでいいかなと思います」。

 昨季途中から左打者にもチェンジアップを投げたり、今季は開幕から右打者のアウトコースにシュートで打たせて取るなど、投球の幅を広げた。特に4月18日の日本ハム戦、先頭の松本剛を3ボール1ストライクからの5球目に外角のシュートで内野ゴロに打ち取ったのは良かった。

 右打者のシュートに関しては「うまくいけば、真っ直ぐを狙ってきている時に少しズラして、1球でアウトが取れる」と効果的な球になっている。その一方で、「間違いが起きやすい球でもあるので、甘く入った時とか、その辺は気をつけながら投げています」と語った。

 右打者に抜群の威力を発揮していたチェンジアップも、昨季途中から左打者にも投げており、今季も4月18日の日本ハム戦で3回に清宮幸太郎をチェンジアップで空振り三振に仕留めた。

 「一応、データをしっかり見てこのバッターはチェンジアップを使えるとか、球種ごとの長打率の数字があって、できるだけ僕はその少ない数字、長打の出にくい球種を今は使って投球を組み立てているので、あんまり失点が少ないかなと思います」。データを見ながら、その打者がチェンジアップが有効かどうかを確認。

 4月終了時点で4試合・24回2/3を投げて、2勝1敗、防御率2.19。「去年よりも(勝ち星が)つくことに越したことはないとは思いますですけど、それでもやっぱり防御率も安定していて、あとは四球だけしっかり改善していけたらなと思います」。 

苦しんだ6、7月

 「5イニング以上投げるのは週1回なので当たり前じゃないですけど、最低7回はいつも投げないとな、と思っています」。

 5月に入ってからも安定した投球で、10日の西武戦、7回2失点で昨季と並ぶ3勝目、続く17日のオリックス戦は8回2失点で早くも昨季の勝ち星を上回る4勝目を手にした。5月は登板した4試合全てでクオリティースタート(6回以上3自責点以内)を達成するなど、3勝0敗、防御率1.61。

 6月最初の登板となった5日の阪神戦では、5回・103球、8安打、5奪三振、1四球、6失点でマウンドを降りた。

 「いつもあんまり何も考えないで投げている時が良くて、“打たれるかもしれない”という怖さを持って投げる球と、開き直って投げる球って違うと思います。エラーとか出たところで、この回点を取られたら引きずっちゃうだろうなと思って、絶対にこの回だけはやっちゃいけないぞとかちょっと思いすぎたりしていた。そういういつもと違う、邪念じゃないですけど、そういうのが出たら僕にとってはあんまり良くないのかなと」。

 「打たれる時は打たれるし、抑える時は抑えるしという発想がすごく良かったので、前回はその開き直りが少なかったかなと思いました。そこは難しいんですけど、ピッチャーなので相手を抑えたいとか、ゼロで抑えたいという気持ちが絶対にある。あまり自分にプレッシャーをかけることなく、70点ぐらいでいいんだよという気持ちで。球自体はいいと思うので、あまり深く考えないように」。

 阪神戦では0-3の5回に4点を奪い逆転してもらった直後の5回裏に大山悠輔に逆転3ランを浴びた。

 「今年は相手のバッターの分析もすごくするようになって、大山さんに打たれたのは、紙一重だったんですけど、データ的にいったらあの場面真っ直ぐではなく、フォークとかチェンジアップ。そこはまた野球の難しいところというか、打てない球を続けても相手も意識した中だとそれが変わってくる。1ボール2ストライクとかで、いい追い込み方をしすぎて、“自分でうわどうしよう”となったので、意外とあるんですよ。2ストライク0ボールになった後の3球目が難しかったりとか、意外とあるんですよね」。簡単に追い込んだ後の次の1球、プロ野球選手にしかわからない難しさがあるようだ。

 この登板を境に小島はしばらく苦しい投球が続いた。続く13日の中日戦が7回・6失点、28日のオリックス戦も6回・6失点と2試合連続で6失点を喫した。月が変わった7月に入っても15日の楽天戦では今季初めて5イニングを投げ切ることができず、4回1/3を投げ、6失点で降板。6・7月の2カ月は7試合・38回2/3を投げ、0勝2敗、防御率6.98と苦しんだ。

 投球面では、開幕から右打者のアウトコースに投げていたシュートをこの時期、あまり投げなくなった。

 「あんまり投げていないですね。データを見ると、打たれている球がシュートが多かったので、結局真っ直ぐの被打率が高くない感じでした。ならば投げる必要がないかなと思って、カウントが悪い時にはあんまり使わなくなりました」と、シュートを投げなくなった理由を説明した。 

調子を取り戻した8月

 「しっかりしなきゃという気持ちがだいぶありますけど、歯がゆいこの2ヶ月くらい過ごしているので、自分にとても腹が立っている。チャンスをたくさんくださっているので、なんとか期待に応えられるようなピッチングができたらなと」。

「基本中6日で投げていた方が流れが掴みやすいですし、8月からは6連戦が続く。8月に入ったら“基本、中6日でいくよ!”と言われていたので、6月、7月までは登板が空いて配慮というか、気を遣って登板の間隔を組んでくれていたのかなと思います」。

 8月最初の登板となった6日の楽天戦は敗戦投手になったが、7回2失点と試合を作った。13日の西武戦、6回無失点に抑え、5月24日の西武戦以来となる6勝目。

 20日の楽天戦では7回・112球を投げ、3失点だったが、本人は「2点取ってもらった後なので、そこは最低でも流れてきにいったら2点で止めないといけないところだった。5回の(逆転打を打たれた)浅村さんのところは配慮が足りなかったというか、もっと慎重に行っても良かったかなと」と初回に2点を先制してもらいながら、5回に3点を失い一時逆転を許したことを反省した。

 続く2-3の6回は二死三塁から辰己涼介を132キロの縦スライダーで三振に仕留め、ピンチを出した。「吉井さんと話をした時にももう少しスライダー改善できるんちゃうかと感じだったので、いろんな人に聞いてみて練習で投げたりして、試合で投げたのは初めてだったですけど、良い感じでした」と、7月30日のソフトバンク戦で初めて投げ、三森大貴を2打席連続で縦のスライダーで空振り三振を奪うなど、オールスター明け、“縦のスライダー”が投球を支える球種の一つになった。

 「種市、ペルドモさんとかにスライダーを教わってからすごくいい感じで投げられています。それによって前よりもまっすぐに近いカットになりました。真っ直ぐも遅かったので、最近はまた上がってきたんですけど、その辺はスピードも大事な要素かなとちょっと思ってきてはいます。だんだんいい感じに思ったようにで始めたので、そこは良い兆候だと思います」。ペルドモや種市篤暉からスライダーのアドバイスをもらったことで、ストレートやカットボールの球速も戻ってきた。

 これまではどちらかというと、カットボールやチェンジアップを決め球に使うことが多かったが、今季は追い込んでから縦のスライダーなど様々な球種で抑えた。

 「そうですね、いい追い込み方しても、右バッターだったらチェンジアップが絶対頭にあると思うので、チェンジアップをそれでも投げるのか、それを外して違う球種で組み立てるのか。バッターの反応を見て投げている感じなので、いい追い込み方をしても追い込まれたら右バッターは絶対、チェンジアップケアが入ってくる。そこでそれを超えるようなチェンジアップを投げられていたり、相手が意図していない球で打ち取ることが今は悩むところでもあり、うまく生かしたいところだなと思います」。

 小島は勢いを取り戻した。「去年は勝ちを意識したらすごく苦しかった。今年は意識していなかったですけど、最近は自分の勝ちというよりか、チームが勝てば内容が悪くてもそこは反省して、次に活かせればという発想に切り替えました。いいピッチングをして勝てなかったら悔しいですが、多少打たれても勝てばいいやと割り切れる気持ちになってきています」。8月13日の西武戦から9月5日のソフトバンク戦にかけて自身3連勝。

 7勝目を手にした8月29日の日本ハム戦では「8、9回をしっかり投げてというのはマストだと思うので、まずは完璧ではないですけど、しっかり長くは投げられたので良かったです」と、8回・122球を投げ、5安打、7奪三振、無失点に抑えた。

 この日は初回一死一、二塁で万波中正をインコースのストレートで見逃し三振に仕留めるなど、右打者、左打者にガンガンインコースを攻めた。「要所で投げる球がいいコースに行けたので、あれがまた一発で決まってこないとあれなんですけど、コントロールよく投げられたのかなと思います」と振り返った。

 4-0の6回二死走者なしで清宮幸太郎を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた139キロフォークも良かった。ペルドモ、種市篤暉からスライダーのアドバイスをもらった効果で、ストレートとカットボールの球速も戻ってきたが、フォークのスピードも上がっていた。「真っ直ぐもスピードが出ていましたし、カットもいつもより2、3キロ速かったです。右に投げるフォーク、左に投げるフォークのイメージは若干違うので、浮かないようにというのがスピードが上がっていたと。フォークはあれですけど、いい高さに投げられていたと思います」。

長いイニングを投げる

 小島は8月6日の楽天戦から6試合連続でQSをクリア。夏場以降、長いイニングを投げて先発の役割を果たした。

 近年、小島を取材していると『しっかりと考えて長い回を投げることを一番に考えてやっていきたい』、『“こいつならいくら投げさせても大丈夫だな”って思って投げさせるように頑張りたい』と、長いイニングを投げたいと口にすることが多くなった。

 長いイニングを投げたいと思うようになったきっかけ、こだわりなどあるのだろうかー―。

 「僕がローテ入った最初とか石川さんとかが長いイニングを投げてくれたおかげで、5回、6回でへたっても、中継ぎがつぎ込めて勝ちをつけてもらったような勝ち方をずっとしていました。それを今度は僕とかができれば、中森がチャンスをもらって投げられているので、楽な気持ちでまずは5回とかを考えて投げられる」。

 「また、僕とか種市が投げる試合は必ず勝たないと順位が上がっていかない。谷間で投げるような若い森、中森が投げるときに準備万端の状態で、それがチームで戦っていくことだと思うので、そういうことが理想論ですけど、そういうことができるようにと思ってやっています」。

 今季プロ5年目で7月に27歳になった左腕は、先発ローテーション投手としての自覚も出てきた。プロ1年目から指導する小野晋吾投手コーチも、「去年苦しい中で投げてなかなか勝ちがつかなかったことを経験しているので、気持ちの強さを去年の経験を生かされている。自覚、やらなきゃいけないと思って常にやってくれている。成長はすごく感じますね」と、小島の成長に目を細める。

大事な試合で最高の投球

 勝利しなければCSが出場できないという大事な一戦となった10月10日の4位・楽天戦の先発を任された。初回に一死満塁のピンチを招くも、岡島豪郎を遊併で切り抜け、ガッツポーズ。

 これまでどちらかといえばポーカーフェイスで投げることの多かった小島だが、夏場以降は感情を表に出すことが多かった。その理由について「いつもは(感情を表に)出すような感じではないんですけど、ちょっとでもチームに勢いがつくようにはどうしたらいいかなとか、色々考えています。ただ僕が“よっしゃ!”というだけで、勢いがつくわけではないですが、自分の心も素直な感じを出した方があまりストレスがかからないというか、いいものはいいし、悪いものは悪いと思うので、全部完璧を求めすぎないようにと思っています」と教えてくれた。

 2回以降も毎回走者を背負いながらもスコアボードに0を刻み、2-0の4回二死三塁で太田光を空振り三振に仕留めた後も拳を握った。小島はこの大一番で7回、6安打、無失点に抑え自身2度目の二桁10勝目を手にし、成長した姿を見せた。

 「調子自体はめっちゃいいわけでもなくて、めっちゃ悪いわけでもなかったんですけど、一番は内容ではなくて勝てばいいと思っていた。なおさら初回はゼロで行けたのが一番大きかったのかなと思います」。

 チームは2位でCS進出、自身も2年ぶりに二桁勝利を達成したが、小島は「おまけぐらいに考えていました。誰に勝ちがついても良いと思っていたので、素直に嬉しいです。二桁と規定は先発で基準にしているところが少なからずあるので、それを達成できたのは嬉しかった。本当に勝てればよかったと思いました」と安堵の表情を見せた。

 8月以降は中5日で先発した9月25日のソフトバンク戦こそ7回途中7失点で敗戦投手となったが、10試合・67イニングを投げて、5勝3敗、防御率2.69で、10試合中8試合でクオリティスタートを達成した。

 クライマックス・シリーズでも1勝1敗で迎えたソフトバンクとのファーストステージ第3戦に先発し、6回1/3を投げ無失点と、絶対に負けられない一戦で再び好投した。

 黒木知宏コーチは「開幕投手を託して、チームで一番大事なここを勝たなければいけないという登板に投げて、大事なところで投げて全部もぎ取ってきた。開幕だけはうまくいかなったですけど、小島は中5日であったり、チームを引っ張っていくという意味ではエースとしての自覚であったり、そういう成績を残したというところでは一つ二つ成長した、1つ2つ成長したのかなと思いますね」と手放しで褒めた。

来季に向けて

 6、7月に不調の時期もあったが、その他の月は安定しており、特に負けられない試合で2度も素晴らしい投球を披露した。シーズントータルで見ると2桁勝利、規定投球回到達と、充実のシーズンになったようにも見える。

 「最後は良かったですけど、防御率も話にならないくらいなので、2点台前半とかをしっかり出せるようにというか、結局今年も3.5とかなので。そこは全く満足していないので」。

 今季からデータを見るようになったが、そこは1年通してうまくできたのだろうかーー。

 「前半はそれでうまくいっていたんですけど、後半は対戦する前からバッターの固定概念をつけすぎてしまって、得意だからあまり投げないという感じになっていたので、逆に良かった時はそれで良かったんですけど、悪かった時に相手の苦手なところしか投げなくしまって、あんまりよくなかった」。

 「シーズンの終盤とかはデータとかをあまり入れないようにして、マウンドに上がっていてそのほうが新鮮にバッターの反応を見て投げることができていたので、後半はそれが良かったのかなと思いましたね」。

 「まだ3年しか投げていないですけど、毎年20打席とか対戦するので、それが3年続いたら6、70打席対戦したら傾向も偏ってしまうところがあったりとか。この人はこういうバッターだよねという印象がついているので、攻めやすいところもありますし、逆に向こうもわかっているところもある。そういうところで相手のイメージをもう1個超えられるような球を投げられたりとか、そういうのができたらいいなと思います」。

 また、オールスター明けの投球を支えた縦スライダーについては、シーズンを終えて、「悪かった時に吉井さんにスライダーを見直してもいいんじゃないかと話してもらって、チームでスライダーを投げている人に色々聞いて、一番はペルドモと種市に相談して聞いたときにすごい良かった。2人に聞いて投げた時に感覚が良くて、ぶっつけ本番みたいな感じだったんですけど、だいぶ今年の中で成長したというか、三振数も増えたのでいいアクセントになっているのかな、軌道も真っ直ぐとかとは違うので、その分、後半はカット、チェンジが余計いきてきたのかなというのはありました」と振り返った。

 6、7月の不調を乗り越えるための準備も着手する。

 「今年の取り組みとして、去年、一昨年も夏場に悪い時にガンとなってしまうので、そこを改善しようと思って色々取り組みを変えたりして臨んだんですけど、それがあまりうまくいかなかった。改善の余地があるというか、また色々試してになると思うんですけど、(秋季練習時点で)その辺を今ちょっとどうしようかなと色々考えています」。

「栄養管理士の人に聞いて、疲れを溜めない食事生活の改善の一つだと思いますし、高橋光成とかに色々聞いて勉強になったことがシーズン中にもあった。食事の話もそうですけど、彼は夏入る前にベルーナで夏場にあれだけ抑えるというのはすごいことだと思っていて、そういうのを聞いてこういう取り組みをしているよというのを教えてもらいました。それが合うかどうかわからないですけど、やるに越したことはないと思うので、そういうのをやってみるのもありだなと正直あって、色々専門の人に聞いていいのを取り入れたいなと思っています」。

 毎年課題を1つ1つクリアしていき、成長した姿を見せる。来季は「今年の後半みたいなピッチングを年間できることが理想ですけど、そんな簡単な世界ではない。悪い時も絶対あるので、そこの悪いところをもう少し改善したいですし、一番は四球が多い。そこを削っていきたい。そうしたら10球削れたら1イニング長く投げられると思いますし、四球でもいいと思って出している四球ではないので、ノー感じな四球がちょくちょく出てくるのが僕の悪い時だと思うので、その辺は改善できたらなと思います」と、さらに進化した姿をマウンドで見せるつもりだ。

取材・文=岩下雄太 

(ベースボールキング)

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 オフの朝はスポーツ新聞の記事に驚いて、いっぺんに目が覚めることがよくある。

 千葉ロッテ・石川歩投手、戦力外通告。それも間違いなく、このオフの朝のショックの1つだった。

 ちょっと頭がはっきりしてくれば育成契約で、退団や引退するわけじゃないんだろう……ぐらいのことは察しがつくのだが、やはり学生野球の頃にブルペンでその全力投球に向き合って、ドラフト1位でプロに進んでローテーションの一角で投げた投手なので、私の中ではちょっと「自慢」みたいになっている。

 2014年に10勝8敗で新人王に輝いてから、ロッテひと筋10年で76勝を挙げて、最優秀防御率にWBC日本代表にも選ばれている石川投手。

 思い入れも違うから、こういう時のショックは、けっこう大きいのだ。

中部大時代の石川投手の印象は…?

 中部大・石川歩投手とブルペンで向き合ったのは、彼が4年生の時だったと思う。

 秋の終わりだったか、春の初めだったか、みぞれの降る寒い、寒い日の午後。確か、テレビ番組での取材だった。
 当時の善久ぜんきゅう裕司・中部大監督が、同じ早稲田大野球部のOBで、以前から石川投手の本格派右腕としての素質について教えていただいていた。

 ストーブをガンガン焚いてもまだ寒いぐらい監督室に、ヌーッと(失礼!)入ってきた石川投手の青白い小顔を、今もはっきり覚えている。

「いや、自分なんて、富山の田舎で野球やっていただけなんで……甲子園出たわけじゃないし、体も細いし、自信なんてぜんぜんなくて……」

 謙虚とか、そういうレベルじゃない。自分の野球に対する確信のなさを、正直に話してくれている。好感が持てた。

 だいじょうぶ! 君のポテンシャルなら、時間をかけて体を作って経験を積めば、上のレベルで絶対投げられる。あまり気が進まない雰囲気の石川投手の背中を押すようにしてブルペンに向かったものだ。

 リーグ戦に登板した石川歩投手の、しなやかな腕の振りから投げ下ろす快速球を、私は見て知っていた。

「はい、寒いのは平気なんです。向こう(富山)で、こんな時ばかり投げていましたから」

 あいにくの天気を気遣ったら、こんな返事が返ってきた。弱気なことばかり言っているわりに、芯の強さが伝わってきた。大丈夫だと思った。

 シュートがキレていた。

 意識してシュートを投げるピッチャー、彼が初めてだった。速球の軌道でまっすぐに来て、ベースの手前あたりからシュワッと、右打者のふところあたりに食い込む。

 何が、「ぜんぜん自信なくて……」だ。投げ始めると、ファイティングスピリットに火がつく。10球、20球……色白のマスクのほっぺが紅潮している。

 こんな寒い日に、なんだ、根性あるじゃないか。間違いなく、気温10度は割っている。指先がかじかむような日に、低めに集めてくる。

 カーブもちゃんとタテの落差を作って、横ブレもなく、1m87cmの長身からの角度抜群の速球は、地を這うように走ってミットを叩いた。

大学卒業後は社会人の強豪・東京ガスへ

「ありがたいことに、東京ガスさんが声をかけてくださって」

 実直な善久監督が恐縮しておられたが、社会人の強豪・東京ガスでの、最初の2年間は、正直、ちょっと 危なっかしかった。

 期待されて、都市対抗の初戦先発に抜擢されたりしたが、なかなか応えられずにいた社会人の3年目だ。

 何かの大会の、大田スタジアム(東京都)だったと思う。

 次の試合に備えて、スタンドに現れた東京ガスの選手たちの中に、石川投手を見つけた。頭1つ分ぐらい抜けた大きな長身。すぐわかった。

 ちょっと距離があったが、確かに目が合った。「どうするかな?」と思ったら、こっちへやってくる。

 中部大のブルペンで受けて以来、久しぶりの再会だった。

「うーっす」みたいな、迫力のある挨拶から始まったから、驚いた。

 立ち話だったが、いろいろ話した。印象的だったのは、「自分、もう中部大の石川歩じゃないんで」……そんなフレーズを二度、三度繰り返したことだ。

 こちらを見下ろす目の強さが別人だった。うっすらとヒゲも生やしていたように思う。前の年、やはりどこかの球場で目が合った時には、スッと、いつの間にかいなくなっていたのに。

 その年の石川歩投手がすごかった。東京ガスの絶対的エースとして、マウンド上で胸郭を存分に広げて、大きく立ちはだかっている支配感。見下ろしの上から目線で豪快に腕を振り下ろし、150キロに迫る快速球で、高速フォークで、ピンチに三振を続けて奪ってきり抜ける。

 ドラフト会議では、千葉ロッテと読売ジャイアンツの2球団の1位指名が重複。伊東勤監督(当時)がくじを引き当てて、千葉ロッテに進んだ。 

 ちょっと調べてみて、驚いた。

 入団した2014年に新人王を獲得して以来、10年間で76勝を挙げたが、一軍で登板できなかった今年を除いた9年間で、150イニング前後投げたのが7年、しかも、勝ち星より負けが多かった年は2017年の一度だけ。

プロ入り後は「常に先発ローテーションの一角」に

 つまり、常に先発ローテーションの一角として、先発投手に課せられた「相手に先取点を与えない」という使命をほぼ全うしてきたということだ。

 右肩、ヒジ、腰……故障と付き合いながら、投手陣の中心として働き続けた千葉ロッテでのプロ野球生活。

 右肩ベネット骨棘(こっきょく)切除術、後方関節包解離術、関節唇(かんせつしん)クリーニング術……この10月、来季以降の復帰を目指して、石川投手が行った手術も、報道では、なんのことやらよくわからない難解な術式が並んだ。

 投球開始は2024年の春頃ということで、今回の「育成契約」も投げられるようになるまで、支配下枠が1つもったいないから便宜上、球団に預からせてくれ……というのが、ホントのところなのだろうが、投手にとって、これだけ複雑な手術を、来季36歳というタイミングで行うことの「不安と怖れ」は、投手経験者の方に聞くと「おそらく、夜中に目が覚めた時に眠れなくなるほどの怖さ」だという。

「ほんとは、婦人服の服飾デザイナーになりたいと思っていたんですけど」

 ブルペンで、誰が見たって「プロの素材」と目を見張るようなボールを投げた後、確か、そんなことをモソッとつぶやいていた痩身・色白の青年が、社会人野球でもまれて逞しくなって、プロに進んで10年76勝。

 こっちから考えたら、正直、まあ、いいか……と満足してしまいそうな実績かもしれないが、いやいや、まだまだ、「最後のもうひと花」ってものがあるだろう。

球界随一の「技巧派」がプロ生活で培ってきたものは…?

 丁寧に投げる、コントロールを意識して投げる、タイミングを外しながら投げる、淡々と投げる。相手に悟られぬようポーカーフェイスで飄々と投げる。150キロだ、160キロだと、威勢のよい話ばかりが「投の価値観」になりつつある今のプロ球界で、もう一つの「投」の世界の興味深さや奥深さを、実戦の体現を通して、後進の投手たちに見せつけることができるとすれば、そのとても数少ない「実践者」の1人になれる人材だ。

 人間、体に不都合がある時は、休むことが前に進むことだ。

 チームに預けた支配下枠を狙って、年明けから死力を尽くそうとするチームメイトたちが、千葉ロッテには何人もいる。ちゃんと、穴埋めしてくれる。そして体の健康を取り戻した時、もう一度、「預けたもの」も取り戻しにかかればよい。

 来季でプロ生活11年目、一軍76勝のベテランの矜持は、そうそう簡単に折れるものじゃない。そう期待している者が、きっと何人もいるはずだ。

文=安倍昌彦

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