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コラム記事【7/8】

2024年07月09日 02時32分23秒 | マリーンズ2024
≪7/8≫


 8試合連続二塁打。マリーンズの岡大海外野手が6月30日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で連続試合二塁打のプロ野球新記録を樹立した。 

 ベンチでその瞬間を嬉しそうに見届けていたのは金子誠戦略コーチだ。2009年、自身がファイターズでの現役時代に7試合連続二塁打のプロ野球記録を打ち立て、ファイターズコーチ時代の21年には同じチームの近藤健介外野手(現ホークス)が記録に並ぶ瞬間を目にした。そしてまた目の前で並ばれ、今度は抜き去られた。最終の5打席目、岡が放ったのは三塁線を抜ける二塁打。自身もやはり、三塁線を突破する二塁打だった。不思議な縁を感じた。

蘇った現役時代の記憶

「記録の事を思い出したのは実は遅かった。7試合連続で並ばれた翌日の朝、新聞記事で読んで、ああ、そういえばそうだったなあ、と。近藤の時は自分でスコアをつけながら二塁打多いなあと5試合目で気が付いたけど、岡の時はそういう報道を見るまで気が付かなかった」と金子コーチは苦笑いを浮かべた。自身の名前が新聞記事に出ているのを目にし、周りから言われて記憶が蘇ったのだという。

「オレは5試合目を打った時の試合後にメディアから『明日、打ったらプロ野球タイ記録ですよ』と言われた。だから記者には『そんなことを言ったら終わりますよ。ほっといてください』と冷たく返したね」と金子コーチは懐かしそうに振り返る。

 09年4月14日、札幌ドームでのバファローズ戦。当時のプロ野球タイ記録となる6試合連続二塁打はバファローズ先発の金子千尋から左中間を抜ける二塁打だった。そして翌15日の同カードは6回無死満塁のチャンスで香月良太投手から走者一掃の二塁打を放ち、当時のプロ野球新記録を樹立した。ちなみにその翌試合は2打数1安打2四球。残念ながら二塁打の記録更新はならなかった。それでも西武ドーム(当時)への移動試合となった17日のライオンズ戦は3安打の固め打ちで好調を維持したのだから凄い。

近藤に並ばれ、岡に抜かれて

 月日は流れて21年10月7日。現役を引退して今度は京セラドームのベンチでコーチとして試合を見守りながら自身の記録に並ばれるヒットを目にすることになる。それが近藤の左越え二塁打。その時もこの記録にまつわる縁を感じたものだが、その3年後にふたたび目の前で遭遇することになるとは思いもしなかった。

 この日の試合はアクシデントから始まった。1番センターでスタメン出場した岡は初回の1打席目で左ひざ付近に自打球が直撃。思わず転倒し、悶絶した。あまりの痛がり方に、ベンチにいる首脳陣は最悪の事態も想定せざるをえなかった。

「記録はもちろん大事。だけど、まずは選手生命というか、無事にプレーをしてもらうことを優先しないといけない。大丈夫かとヒヤヒヤしたね」

共に過ごした1年

 患部の状態次第では途中交代という選択を迫られるかもしれない。様々な事を想定し思考を巡らせながら岡のプレーを祈るように見守っていた。

 金子コーチと岡はファイターズ時代に1年だけ現役を共にしている。金子コーチが引退する年に岡がチームに加わった。ドラフト3位で入団したルーキーを金子コーチは「大学時代は投手と野手の二刀流。足が速い、肩は強い。身体能力が高い。ポテンシャルの塊という印象」と振り返る。自主トレ先として山梨県笛吹市春日居の地を紹介した縁もある。金子コーチは現役時代、毎年この地から一年をスタートしていた。朝は氷点下を記録する時もあるが、その中を走り込んで身体を作り上げた。厳しい環境で精神面を磨いた。だから将来性のある後輩たちにもその地を紹介した。

 コーチとして最も印象に残っているのは、16年シーズンに見た岡の涙だ。

ベンチで泣き出した岡大海

 前半戦最終戦となった7月13日のバファローズ戦(京セラドーム)。0対0で迎えた試合は岡のプレーから動いた。6回一死二塁。右翼を守っていた岡は打球を後ろに逸らして三塁打とされてしまい、先制を許したのだ。結果的にこの回は2失点。その直後の打席で代打が送られた。

「そこまで打撃が“無双状態”で頑張っていたから疲れがあったと思う。守備のプレーでちょっとミスをした。だからというわけではないけど、試合の流れで岡の打席で代打を出すことになった。するとベンチで堰を切ったように泣きだした。それをみんなでなだめた」

 落ち込む岡は、しかし救われた。8回の攻撃。2死満塁。中田翔内野手(現ドラゴンズ)が右中間へ走者一掃の3点二塁打を放ち試合は勝利した。

「3時間は泣き続けていたかな」

「勝ててホッとした気持ち、頼れる先輩が逆転してくれた嬉しさ、自分への不甲斐なさ、悔しさ。色々な感情が出たのだろうね。さらに倍ぐらいの勢いで泣いていた」

 試合後も涙が止まらない。勝利のハイタッチをしながら泣いた。移動のバスがホテルに到着してふと岡の姿を見ると、まだ泣いていた。金子コーチは笑いながら「おまえ長いよ」と声を掛けた。「3時間は泣き続けていたかな」。熱い漢と言われる岡らしいエピソードだ。

 そのシーズン、ファイターズは15連勝を記録するなど、首位ホークスと一時は最大11.5ゲームまで引き離されながら大逆転優勝を成し遂げた。岡の神がかったような活躍も起爆剤の一つだった。

確立した“岡大海スタイル”

 共に歓喜を味わったあの日から8年。岡は移籍7年目のシーズンでプロ野球新記録を達成するなど好調を維持している。金子コーチもまた同じマリーンズのユニホームに袖を通し2年目を迎え、目の前で後輩の新記録を祝福することができた。

 今シーズンの岡の好調の要因について金子コーチはこう分析する。 

「去年と今年、沢山試合に出るようになって、打席の中での読みがよくなっているように思う。整理整頓して打席に入れているイメージ。彼の場合はスタメンだけではなく途中から出るのも上手。代打だけではなくバックアップで代走や守備から出て、そこから打席が回ってきても結果を出している。肩幅があって腕が長いから、ファイターズ時代はどうしても腕が邪魔になるような感じの窮屈な打撃をしていたこともあった。その中で試行錯誤しながら今、岡大海スタイルを確立している」

「ミラクル」を再び

 さらにこんな言葉を贈る。

「オレは二塁打の記録を作った2009年、34歳になる年にキャリアハイの成績を残すことが出来た。岡はまだ32歳。今年素晴らしい一年にして欲しい」

 首位ホークスを追いかけるマリーンズ。その図は16年のファイターズとも重なる。あの時、岡が勝負強い打撃でチームの優勝に貢献した。そして今年もまたキャリアハイを狙う活躍を続けている。ミラクル岡と共に、新たなマリーンズの伝説が始まる、そんな予感が漂う。
 
梶原紀章(千葉ロッテ広報)

(Number)

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≪7/8≫


 「まず私を信じ、夢を実現させてくださったマリーンズに感謝いたします。優勝を目指して戦う準備はできています。また兄のレオネス(22年まで在籍したレオネス・マーティン外野手)がチームに在籍していた期間、彼を支えてくださったマリーンズファンの皆様にも感謝いたします。私も兄がプレーしたZOZOマリンスタジアムのグラウンドに立って、最高のファンの皆様の前でプレーできることを楽しみにしています」。

 7月2日に19年〜22年までロッテで活躍したレオネス・マーティンの弟、アンディ・マーティンの育成選手としての入団をロッテ球団から発表された。

 マーティンは2000年10月14日生まれで藤原恭大、山口航輝、友杉篤輝らと同世代。身長188センチ、体重95キロの右投げ右打ちの外野手だ。

 ロッテに加入する前までマーティンは「17歳までキューバのチームでやっていて、その後アメリカに行ってからはアメリカの高校、大学。その後コロンビアのウインターリーグでプレーして、今年からBC・茨城、今千葉ロッテマリーンズ」という経歴だそうだ。

兄からマリーンズについて「熱狂的なファンが多いというのを聞いてました。言われたことは、グラウンドでは100%自分のことをやれば大丈夫だからといのを言ってもらっていました」と、“熱狂的なファン”が多いことを入団するにあたって教えてもらった。

初めてのマリン

 マーティンは獲得を発表された翌3日の巨人二軍戦で、2-5の9回一死二塁で柿沼友哉の代打で登場し、公式戦初出場を果たす。伊藤が1ストライクから投じたストレートを打ちにいくも中飛に倒れた。

 4日の巨人二軍戦ではZOZOマリンスタジアムで行われた。兄のレオネス・マーティンが守ったライトのポジションでノックを受け、走塁練習、打撃練習で汗を流した。

 練習後の取材で、マーティンは「まずZOZOマリンスタジアムに立てたことを本当に嬉しく思っています」と感謝。「実は以前試合の応援でマリンに来たことがあるんですけど、その時はスタンドからだった。しっかりグラウンドで練習できたことを大変興奮しております。兄がここでプレーしていたので、兄と同じ場所でプレーできたことにすごく嬉しく思っています」と喜んだ。

 「僕は常に全力で100%出し切る選手であるので、ファンの皆さんにそういうところを見ていただけると思いますし、しっかりグラウンドでプレーするところを見ていただきたいと思います」と意気込んだ同日の巨人二軍戦、『7番・指名打者』で入団後初スタメンで出場すると、1-3の2回一死走者なしの第1打席、先発・又木鉄平が1ボールから投じた144キロのストレートを打ちにいき、センターとセカンドの間に飛ぶフライとなるもこれがセカンドのグラブを弾く二塁への内野安打となり、嬉しい来日初安打。

 1-3の2回二死一塁で平沢大河の打席中に二塁盗塁を決め、来日初盗塁をマークした。さらに2-5の6回無死走者なしの第3打席、田中千晴が投じた初球、150キロのストレートをセンター前に弾き返し、マルチ安打を達成した。

 「しっかり練習していろんなことを学んで行って、トップレベルの選手になって千葉ロッテマリーンズの優勝に貢献できるような選手になりたいと思います」。将来は兄・レオネスのように愛される選手になるため、しっかりと結果を残し1日も早く支配下選手登録となり、ZOZOマリンスタジアムで熱いマリーンズファンの声援を受けたいところだ。

(アンディ・マーティン選手通訳=千葉ロッテマリーンズ・細間翔通訳)

取材・文=岩下雄太


(ベースボールキング)


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