goo blog サービス終了のお知らせ 

よい子の読書感想文 

2005年から、エッセイ風に綴っています。

読書感想文231

2009-11-12 05:46:00 | エッセイ
『子どもに教わったこと』(灰谷健次郎 角川文庫)

 出張間に読むものを仕入れに古本屋の100円均一コーナーへ。読んだことのない作家を選ぼうと思い、適当に目についた棚から一冊買うと決めた。好きな作家や興味を注がれた本を選んでいると、知らず知らず新たな“座右の書”発見を阻害するかもしれない、という心配もあったからだ。
 そうして選んだ三冊のうちのひとつが本書である。書店でよく目にする名前だが、手にとることはなかった。
 私が小説をチョイスする漠然とした基準に、やはり『文学界』や『群像』、『すばる』あるいは『三田文学』などに取り上げられるもの、というのがあるようだ。二十歳くらいの私は『三田文学』を定期購読するような純文学至上主義者だったのである。
『子どもに教わったこと』……
 自分自身、大人になりきれているとは言い難いのでこういうのも変だが、少なくない部分で人間は成長と反比例して退化していくのではないかと思う。
 特に感覚的な分野において。大人は強いのでなく鈍感なのであって、慣れていくのでなく鋭敏さを失っていくのではないか。そういう疑問を当初から持つ私には面白い読書だった。
 小学生の作文や詩がいくつか取り上げられている。敏感すぎるその洞察力に、鼻の奥がツンとくるような感銘と衝撃を受ける。それは幼い日の私の代弁であると同時に、いまの私を告発もするからだ。
 本書は97年に出版されたものだが、あたかも著者の危惧が反響したかのごとく、その後『ゆとり教育』というのが試行され、近年また撤回された。
 主旨は良かったのだろうが、文部科学省→教育委員会→学校→現場の教諭と官僚的な指示が下っていく過程で、そもそもの目的を見失ったのかもしれない。憶測に過ぎないが、大きな組織ほどトップダウンの指示は末端を揺さぶる。振り子のように。性懲りもない単なる反動を招かなければ良いのだが。
 話が脱線した。私は子どもと多く接する機会はないけれど、少なくとも我が子の日々の変化や書いたものは、記憶し記録していこうと思っている。退化していきつつある私が教えられることは多い。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。