goo blog サービス終了のお知らせ 

よい子の読書感想文 

2005年から、エッセイ風に綴っています。

読書感想文910

2024-11-26 21:55:18 | ノンフィクション
『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 岩波現代文庫)

 新聞の書評で見て以来、ずっと気になっていて、ようやく手にできた。
 ウクライナ侵略が、私に様々な自問自答をさせる。本書を手にしたのも、学ぶこと、知ることが足りなかったと省みたのが一因だ。
 ロシアのメンタル(主として、その攻撃性を担保してしまう被害者意識やメシアニズム)について、少しでも理解しようとするなら、ロシアが被った悲劇を知る必要がある。
 最適な選択であった。・・・日本で例えるなら、沖縄における日米の凄惨な殺し合い。民間人を巻き込む、救いのない、殺戮の日々。それがソ連の広大な土地で生起したのだ。
 読むのがツラくなるほどの内容であった。しかし著者は、読者にそういう体験をさせねばと取材を続けた。
 よくぞ、一人の女性が、これだけのものを受け止めたものだと慄然とする。共感ストレスで、聞いているほうもPTSDになりそうではないか・・・
 少女らも動員され、あるいは自ら年齢を誤魔化し銃をとって戦わねばならなかった、いわゆる大祖国戦争。その勝利は、彼らのアイデンティティでありながら同時にトラウマとなって、ロシアのメンタリティーに大きな影響を与えている。
 ウクライナ侵略で、私たちはロシアの兵隊らを、勝手な先入観によって敵視してしまっていた。しかし本書には、個別の、清純に祖国を思う、いたいけな若者たちが描かれている。色眼鏡は叩き割られた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。