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人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

方剤:小半夏加茯苓湯

2019-05-30 | 日記


これもそんなにたくさん使わない薬です。
現実に使おうとしたら、首から上に出てくる浮腫に使います。
本当に水腫です。まぶたの腫れとかに使います。
炎症を伴わないものに使います。そのくらいですね。
つわりに使うこともありますが、そんなに多くないです。
これを理解するときに一番大事なことは、
要するに水の病症の一番基本の薬だと言うことです。
水の病症の一番強いと言うか、一番はっきりした薬は別にあります。
それは五苓散です。五苓散に勝る水の薬はありません。
実は水にだけ働きかけるのは不可能なのですが、
表向き水だけをターゲットにしている薬です。
ところが小半夏加茯苓湯は、水の病症が起きる一番基本的パターンを意識しています。

水は何の異常で病症を起こすのか?という事を説明します。
気血水は、よく弁証に使われますが、気血水だけで弁証するのは本当は間違いです。
更に気血水を並べて書くのも間違いです。
三陰三陽みたいに、あるいは太陰、少陰、厥陰みたいに、
気血水があるような書き方をするのは間違いです。
気は生命エネルギーです。血は生命エネルギーを運びます。
水は無生物です。前回にも気の問題はお答えしましたが、
延々とお話しするのは時間がないので、ずっとこの講義が終わるまで、
時間をかけて理解していただきたいと思います。
気は生命そのものです。気血水はすべて物質であります。
決して気は架空のものではありません。

気は生命力そのもので、人間が生きているその事が気で、
気の力を受けて生命そのものを動かしているのが血です。
この気、血の力で動かされている無生物が水です。
だから、水は単独で病むことは絶対にないのです。無生物だからです。
気が病めば水が病む。血が病んでも水が病む。
気が病めば血も病む。気が病まなくても、血単独で病むことはあり、
気血両方とも生命現象です。
でも気が病めば血は影響を受けますが、血が病んでもわずかに気に影響するだけで、
それもかなり経たないと影響が現れません。
そうすると水の病症を起こすのは、一番基本は気が病んで水が病む事です。
その事を意識しているのが小半夏加茯苓湯です。

半夏は気を動かす薬の代表です。気の滞りが起きて水が滞ります。
一応、茯苓は水を動かす薬の代表的なものです。
もちろん水だけを動かすのは不可能です。
水を動かす薬は、全部、同時に気か血か、または気血一緒に動かしています。
一応、茯苓とか白朮は水を動かす薬の代表です。
要するに何らかの気の滞りがあると言うのは、こころが関係します。
こころは体と一体ですね。こころが病めば体が病む、
体が病めばこころが病むと言う様に別々ではないのです。
ただ精神的なものでも、水の滞りが起きます。
物質的な気の滞りでも、水の滞りが起きます。
どこかにガスがあるとか、あるいは、例えば肺の働きがちょっと悪いとき、
気の滞りが起きて水が滞ることがあります。
いろいろな理由で気の滞りが起こったとき、普通は血の滞りが起きるのですが、
血を通り越して、いきなり気の滞りが水の滞りを起こしてくるのが、
小半夏加茯苓湯の状態です。

血がからむと、下半身にいろいろな症状を出しやすいのですが、
血が滞らないと、確かに上半身に水の病症を出しやすいみたいですね。
だから顔のむくみに効くのでしょう。これはあまり使われてはいない薬です。
妊娠初期なんかもそうなんでしょうね。つわりなんかに使われるのは、
そういうことなのかな…。
つわりの出る頃の御婦人の体は、まったく別の体に変るのです。
要するにそれまでの体質が逆転するぐらい、劇的にかわりますね。
当然そういう時は、すごく激しく気の方が変動するのでしょう。
多分、血は変動しないのかも知れないです。
血の変動よりも気の変動の方が激しいので、その為に水が上がってくるのでしょう。
どうもそういう感じがします。とにかく生命そのものに大きな気の滞りが起きたとき、
水だけがパッと反応した時に小半夏加茯苓湯の証になります。
あまり多くは使いません。腹証について。三黄瀉心湯のところで出てきましたが、
衝脈のこと(鳩 尾から上に突き上げる症状)ですが、
これは又、別の機会にお話しします。

振水音(空気と水が一緒にグルグルッと鳴る)についてですが、
水を動かす薬は皆これに似た特徴があります。
水の病症かなと思ったら、必ずお腹を触ってみる事です。
これも繰り返し慣れないとダメです。

最初の時、気の話しを聞かれましたが、タッチングを繰り返すことと返事をしました。
ずっと学びに来ている方は解るのですが、
まだ術者の気の力が足りないと簡単には出せないのです。
気の力が出てくると、腹に触った瞬問、ガスが動き出すようになるのですが、
最初のうちはかなり触らないと出てきません。
慣れないうちはうんと触っているうちに、
何だか解らなくなってしまうことがあるのですが…。
長い問、繰り返し触っているうちに解る様になりますし、
動かすことも出来るようになります。

慣れてくると、手を置いただけで空気と水が一緒に動き、
グルグルッと鳴り、振水音が出てきます。
茯苓合半夏厚朴湯証もそうですね。
非常に特徴的にグルグルッと空気と水が一緒に動くのが感じられます。
最初のうちはうんとなでて、やっと一回聴こえるぐらいですが。
覚えていられるとよいと思います。

第2回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda02.htm


https://mbp-japan.com/ishikawa/kanpou-fukunoki/column/1700201/
http://kenseidou.net/chuuihouzai-kaisetu278.pdf

医薬品情報:小半夏加茯苓湯