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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

アラブの売国奴 その①

2010-10-04 21:12:33 | 読書/中東史
 題名からイスラエル軍やモサドに協力、金銭のため同胞を裏切るパレスチナ人を連想された方が殆どだろう。もちろんその類のパレスチナ人は現代も不足しないし、彼らに限らず同胞を裏切る輩は古今東珍しくない。ただ、これから書くのはパレスチナ人が故郷を追われることになった背景である。アラブにはユダヤ人と協力した者やユダヤ人にパレスチナの土地を売った地主もおり、それがユダヤ人の大量移住とイスラエル建国に繋がった。 . . . 本文を読む

トルコの言語革命 その③

2010-08-21 20:43:33 | 読書/中東史
その①、その②の続き しかし、「民衆トルコ語」にさえ、長い間に数多くのアラビア語やペルシア語が混入し、本来のトルコ語の単語が忘れ去られていたのだった。例えば「高い」という言葉の本来のトルコ語は「ユクセック」であるのに、民衆でさえ「ガリ」と言い、「東西南北」のような基本的な単語ですら、アラビア語がつかわれていたのである。 これでは、とても「トルコ人の言語」とは呼べない。それゆえ外来語、特にアラビア語 . . . 本文を読む

トルコの言語革命 その②

2010-08-20 21:14:20 | 読書/中東史
その①の続き 何事にせよ徹底的にやらねば気のすまないケマルは、1929年1月1日以降、一切のアラビア文字による出版の禁止を命じた。当然のことながら、守旧的な知識人たちはあまりにも無茶だと反対するも、ケマルは完全に無視する。この強硬策がとられなかったなら、新しい文字の国民への定着は、かなり遅れていただろう。また、ケマルは囚人に対して、刑期を終えても簡単な文字の読み書きが出来なければ出所させず、その代 . . . 本文を読む

トルコの言語革命 その①

2010-08-19 21:10:54 | 読書/中東史
 トルコ革命を断行し、トルコを世俗国民国家に変貌させた初代大統領ムスタファ・ケマル。そのケマルの行った一連の革命の中でも、書き言葉のみならず話し言葉さえ変えたことは最大級の改革のひとつだった。トルコ帽や女性がヴェールで顔を覆うことの禁止よりも、言語革命の方が計り知れない影響があったと思われる。 1928年、ケマルは憲法修正案を議会で可決させ、ついにイスラム教を国教とするという条文を憲法から削除させ . . . 本文を読む

トルコの一休和尚 その②

2010-05-07 21:26:44 | 読書/中東史
その①の続き ホジャの物語には草原の征服者ティムールに関るものが少なくない。ティムールはアンカラの戦い(1402年)でオスマン朝軍を壊滅させ、一時的に帝国は滅亡寸前にまで追い込まれている。ティムールと戦ったバヤズィト1世は、1396年、欧州諸国連合軍との戦い(ニコポリスの戦い)で圧勝、“雷帝”と呼ばれたほど軍事面で優秀な君主だったが、古今の名将の1人ティムールには敵わなかった。アンカラの戦いで捕虜 . . . 本文を読む

ケマルとユダヤ人政商 その②

2009-12-19 20:53:29 | 読書/中東史
その①の続き ただ、ケマルと彼が握っている警察も薄々ながら将軍たちの陰謀に感づいていた。そして、ケマルのイズミル入りの3日前、パレードが予定されていた道路に面した建物を警察が一斉に家宅捜査、その結果、あるアパートの部屋から数個の爆弾と小銃、弾丸などが発見される。直ちに警察は容疑者達を逮捕、厳しい尋問の結果、彼らの自白から野党議員のフルシットが関与していることを突き止めた。逮捕されたフルシットの自白 . . . 本文を読む

ケマルとユダヤ人政商 その①

2009-12-18 21:18:59 | 読書/中東史
 トルコ革命を断行、祖国を近代国民国家に変貌させたトルコ共和国初代大統領ムスタファ・ケマル。アタテュルク(父なるトルコ人の意)と尊称を冠せられる一方、あまりにも急激な脱イスラム改革は宗教勢力ばかりか、かつての同志の間からも強い反動を招く。ついに反動派はケマルの暗殺を決行しようとするが、この陰謀にはあるユダヤ人政商も加わっていた。 反動派にはケマルと共に救国戦争というべき希土戦争を戦い抜いたラウフ将 . . . 本文を読む

シュメールの諺

2009-11-23 21:26:57 | 読書/中東史
 私の本棚に『世界の歴史2:古代オリエント』(岸本通夫著、河出書房)という本がある。父が買った本であり、昭和43(1968)年初版と古いが、内容は色褪せていない。その中にシュメールの諺がいくつか紹介されており、シュメール語で書かれた古代メソポタミアの人々の心情は四千年の隔たりを感じさせないほど、現代人と共通するものがある。以下、挙げてみたい。 -病人はなおよろし。陣痛こそ禍なれ。-富は持てば持つほ . . . 本文を読む

欧州から善人と呼ばれたエジプト君主

2009-10-10 20:28:31 | 読書/中東史
 19世紀から第二次大戦後の革命までのエジプトは、ムハンマド・アリー朝が支配していた。名目上この王朝はオスマン帝国領であり、エジプト支配者はワーリー(総督)と呼ばれたが、実質は独立国家状態だった。中でも第4代総督サイード・パシャ(在位1854-63年)に対する西欧人の評価は高く、彼は「善人」とまで呼ばれた。しかし、彼の統治時代、エジプトは植民地化が決定付けられる。 サイード・パシャは王朝の開祖ムハ . . . 本文を読む

侵略者の末路

2009-06-21 20:56:49 | 読書/中東史
 4年前、十字軍をテーマとした映画『キングダム・オブ・ヘブン』が公開され、ご覧になられた方もいるだろう。映画のラストでエルサレム開城の後、主人公とサラディンによる合意で、キリスト教徒たちは無事に西欧に帰るという結末になっていた。しかし、中東に侵攻してきた西欧人キリスト教徒全てが聖地から去ったのではない。イマードゥッディーンという名のサラディンの書記は、聖地に留まろうとしたキリスト教徒たちのその後を . . . 本文を読む