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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

明治の日本人が見たイラン その②

2007-04-25 21:22:58 | 読書/中東史
その①の続き 吉田ら使節団の見たイランの教育現場もお粗末だった。イランでは宗教家が教育を行っており、学校といえば「コーラン学校」、コーランを読めるようにするのが教育の第一目的だった。これは同時代のトルコや他のイラスム圏も変わらない。14世紀に詩人ハーフィズを出したシーラーズには上級学校が10校ほどあったが、ここでは宗教諸学を教えるのみで、文字が解せれば学者として通用したという。  一行はテヘラン . . . 本文を読む

明治の日本人が見たイラン その①

2007-04-24 21:26:17 | 読書/中東史
 先日の記事「イラン人が見た明治の日本」でも書いたが、日露戦争前夜に来日したイラン人がいたように、その20年ほど前に逆にイランに行った日本人使節団がいる。彼らの記録に描かれたイランは現代の異教徒から見てもワンダーランドだが、同時にイランその他のアジア諸国と日本との違いも浮かび上がってくる。 明治13(1880)年、明治政府は外務省御用掛、吉田正春を団長とする使節団をイランに派遣する。前年ガージャー . . . 本文を読む

奴隷購入について

2007-04-09 21:29:18 | 読書/中東史
 奴隷制イコール絶対悪という認識が完全に根付いている現代だが、それが当り前だった昔の人々は、どのような基準で奴隷を購入したのだろう?11世紀のペルシア(イラン)に、奴隷の求め方を細々と書き残した人物がいるが、なかなか興味深い内容だ。その一部を抜粋してみたい。 「奴隷を買い求めたい時には慎重であれ。人を買うのは難しい知識で、立派な奴隷でも知識を持って視れば、その反対であることがしばしばある。大抵の人 . . . 本文を読む

奴隷制社会の実態

2007-04-08 20:27:30 | 読書/中東史
 啓蒙主義の延長にある現代は、奴隷制度が人類史上最大の汚点とされる。そのため奴隷という言葉だけで忌まわしい気持にさせられるのが現代人だ。19世紀まで世界中で奴隷制度は当り前だったが、マルクス史観の影響もあって奴隷=全て虐げられた貧しい人々のイメージが根付いてしまった。だが、史実は必ずしもそうでない。 「アリババと40人の盗賊」なら「アラビアンナイト」でもよく知られた一編であり、私の小学校時の学芸会 . . . 本文を読む

英国のトルコバッシング

2007-04-05 21:26:27 | 読書/中東史
 オスマン朝時代のトルコに英国大使として赴任したストラスフォード・カニング(1786-1880年)という人物がいる。レドクリフ子爵でもあるこの英国貴族外交官は、1842~58年にコンスタンティノープル(現イスタンブール)に大使として滞在、大英帝国の利益を代弁し、トルコ人からは「偉大な大使」として恐れられた。その回顧録で彼はトルコを歯に衣着せず酷評し記している。 「オスマン帝国の記念碑として残された . . . 本文を読む

世界初の共産主義運動

2007-04-04 21:32:51 | 読書/中東史
 共産主義といえば近代思想であり、共産主義原理が取り入れられた初の国家はソ連と答えるのが、世界史試験の基本回答。しかし、5世紀末から6世紀前半既 に共産主義運動が起きており、これを原始共産主義と呼ぶ学者もいる。この運動が発祥したのはローマでも中国でもなく、ペルシア(イラン)だった。 5世紀末頃、サーサーン朝ペルシアにマズダクという人物が現れ、新たな教えを説く。彼はゾロアスター教の僧侶だったが、マ . . . 本文を読む

ペルシア帝国-専制君主国家の実態

2007-04-03 21:19:10 | 読書/中東史
 ベストセラー『ローマ人の物語』では、ローマと世界の覇権を争ったペルシアを、著者の塩野七生氏はよく「専制君主国家」 と表現している。私の手元にある国語辞典(小学館)で「専制君主」を引くと、「自分の考えだけで政治をとる君主」とある。『ローマ人~』の読者の中には元 老院の意見を無視できないローマ皇帝と違い、ペルシアは文字通りの専制君主国家と思われた方も少なくないかもしれない。しかし、ペルシアの実態 . . . 本文を読む

アペルタ―少し外れた人たち

2007-03-08 21:21:09 | 読書/中東史
 私が塩野七生さんの作品を読んだきっかけは、彼女の小説を見た友人の紹介だった。それ以前から彼女の名とイタリア在住の作家なのは知っていたが、西欧在住の物書きなら犬養通子氏のような典型的な「出羽の守」だろうと思い込んでしまい、読んでなかったのだ。塩野さんの作品で初めて目にしたのが『ローマ人の物語』。これで完全にハマった。 気に入ったのが塩野さんの乾いた独特な個性のある文章。とかく日本には感傷的で情緒連 . . . 本文を読む

地獄で責め苦にあう者 その②

2007-03-01 21:31:35 | 読書/中東史
その①の続き 『アルダー・ウィラーフの書』には、姦通などの性的に関する責め苦が多く見られる。一部抜粋したい。 22.月経中の女と交接した者は、その女の排泄物で責められ、自分の子を食べさせられる。 24.姦通罪の女は宙吊りにされ、彼女の全身に蛇やサソリや蛙などが食らいついている。 60.その身体を大鍋で料理されている男がある。しかし、彼の右足だけは外に出ている。彼は生前多くの既婚婦人と姦通したが、そ . . . 本文を読む

地獄で責め苦にあう者 その①

2007-02-28 21:22:51 | 読書/中東史
 中世ペルシア語で書かれた『アルダー・ウィラーフの書』というものがある。全百一章からなるこの書はゾロアスター教の冥界旅行記であり、その地獄描写が詳細なので知られる。ダンテの「神曲」と類似もあることから、イタリアの詩人がラテン語訳を通じ、この書を知っていた可能性も議論された。この書の成立は9世紀と考えられている。どんな者が地獄行きとなり、彼らがどのような責め苦を受けているか、その世界は興味深いものが . . . 本文を読む