ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

チャリティーガラ第二部

2008年10月01日 | Weblog

チャリティーガラ、第二部を東京特派員Aさんより寄稿頂きました。写真は芸術監督タランダのサイン

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第二部

☆「アダージオ」音楽:JSBach/ピアノ協奏曲より アンドレイ・メルクリエフ

清新な感じのモダン。白シャツ黒ズボンの青年が、舞台を走り抜けていくような振付。心情を訴えるソロ。(手作り公演で、パンフのモダン解説まで手が廻らなかった模様、筋や意味の説明なし。)

☆「マタ=ハリ」ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

マハリナのためのバレエ。クズネツォフとの名コンビは、やはり色っぽい。男と、妖しく官能的な女スパイの愛あるダンスか?クズネツォフが後ろからマハリナを抱きかかえ、マハリナが脚、股を開いたり閉じたりする動きが、かなり官能的な振付にも見え。その割に生臭くないのは、マリインスキーの伝統と、クズネツォフ効果?

*「海賊」~奴隷のパ・ド・ドゥ 寺島まゆみ、芳賀望

芳賀さんは荒くれ風に、もじゃもじゃの顎鬚・髪、ハーレムパンツ姿。踊り全体より決め技で、本日の技巧担当に。深く深~くプリエした低い位置からジャンプ。単にジャンプが高いというより、低位置から、次に飛び上がった位置の差が大きい。素人目に良くわからないけどプリエからは難しそうと思っていたら、盛大な拍手。本人嬉しそう。チュチュ姿の寺島さんは、男性の扮装や踊りとのコントラストで姫らしさが際立つ。受けてハイになってる男性のサポートが荒くても回転が乱れない。芳賀さんが観客に受けても泰然とした風情、端正な踊りにも姫らしい気品が。荒くれ者と姫の異種の組合わせが、楽しい。最後は姫が男性から顔を背けるポーズで終わる、ギリシャの「海賊」。(ボリショイのトルコの「海賊」は、設定違いますね)

☆「il pleut」松崎えり 大嶋正樹

現代服の男性と女性。二人がすれ違い、行き違う(?)モダンバレエ。ストーリーがあるが、私にははっきり判らず。(わからなくてもいいものかも?)最後に女性がぱったり倒れて終わる。二人の心の機微、行き違いを描いているのか?。内容を知りたくなった。

*「カルメン」振付:G.タランダ、編曲:ロディオン・シチェドリン

アンナ・パシコワ、イリヤ・クズネツォフ

装置は椅子等で、赤い照明。振付はアロンソ版に似た印象。物語前半の場面。踊りの脚が目立つ場面はなし。ホセを誘うカルメンとの、二人絡んだ踊りの多いアダージョのみ。パシコワは派手顔、長い手足の肢体に赤いレオタード姿・片腕の長手袋が映える。いかにも美しくてセクシーで、自分の魅力に男は参ってしまうと信じている、若く自信家な女の子の魅力に満ち、見た目も含め説得力充分。ただ、チェルノブロフキナのカルメンのようなカリスマ性や舞台を覆いつくす存在感、唯一絶対の女という感じは無い。カルメンとしてはそこが弱いが、男性側の演技が補った。クズネツォフはこんな彼女を愛してメロメロになり、堕ちて行く男を演じて、文句なしの説得力。相手変えても色っぽい。二人のアダージョには日本人にはないものを感じた。クズネツォフのホセは絶品だ!と、唸らされ。(オーラはそんなに強くないので、それを求める人には不向き。)

しかし帰りの電車の中で、アロンソ版や原作のホセとしては、いい男過ぎるかも、とも思い。(原作のホセはプティ版のような色男ではないし、出自と仕事への誇りを悪魔カルメンのせいで失ったと嘆く、古いタイプの四角い男。私見ですが、私は原作を読んで、ホセは官能的な男ではないと捉えてます。それが得意な人なら、関係した後、ああも簡単にカルメンに振られないのではと。ところがクズネツォフのホセのアダージョの巧さは、役の形象として、私にはどうにもセックスの巧い男をイメージさせるので。←あ、全くの主観ですが)でも、キャラ的には現代最強のホセの一人。

<「ロメオとジュリエット」バルコニーのパ・ド・ドゥ オクサナ・クチュルク、イーゴリ・イェブラ

(赤い照明で自惚れが強い美人カルメンの舞台の後に、青い照明で、心の綺麗な美人のジュリエット登場にほっとする。演目転換と、装置転換によるコントラスト、適役を配すタランダ演出の妙。)可憐な白いドレスのクチュルクは、満天の星の下、全身と顔の表情で瑞々しい恋の情感を見せた。踊りこんでいるのか、起承転結でも練り上げた演技。男性ファン達からブラボー。クチュルク以上のジュリエットは過去には居るが、現在見られるうちでは、割合役に合ってる感じ。ロミオのイェブラは、出待ちで見ると、びっくりするほどハンサム!でも私的には、クチュルクの舞踊の情感が、終始舞台を支配したように見えた。(美系好きには、ロミオは受け良し。)イェブラも過不足の無いパートナー。舞踊的には、後半音楽が高まるパートで、逆に振付が単調になってしまい、振付的に盛り下げる形に。パンフにはラブロフスキー版とあり、ネットでワシリエフ版と書いたものもあり。だが、どちらにも見えず。何版採用にしても、振付の難度を下げて踊った模様。

「瀕死の白鳥」ユリア・マハリナ

マリインカのロパートキナは、踊りの段取りがボリショイのプリセツカヤと同じ。対してこのマハリナは、最初、背面からでなく正面を向いて登場。キーロフ本来の瀕死は、たぶんこの形。最後は思いきり仰向けに背を仰け反らせて死ぬ。地上的で官能的な個性のマハリナが、天上的なバレリーナの道を歩んだ困難。その半生を思いながら見た。

この後「ドン・キ・ホーテ」で盛上がり、そしてカーテンコール~皆で勢ぞろいで盛上がって終わったと思ったら、さらに巨漢ゲジミナス・タランダ芸術監督が、足踏みするような陽気な踊り「ガウチョ」を披露。御大ステパネンコは、フィナーレで皆が拍手されてる時は2拍に1回しか手を打たないのに、タランダには女の子のようにたくさん拍手。彼女らしくて面白かった。

 



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