ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新潟中越沖地震チャリティーバレエガラ第一部の残り

2008年10月02日 | Weblog

順序が逆になりましたが、以下、第一部からの上演演目順にご紹介。(☆は新し目のモダンバレエ。パンフに振付記載無いものあり)東京特派員Aさんからの寄稿です。

*「眠れる森の美女」寺島ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ

寺島さんは、2部の海賊の方が良かった。王子は、サポートや繋ぎ部分時の脚の膝の緩み加減や位置など気になり、舞踊スタイルがアカデミックに見えない。ボリショイというよりレニ国風の舞踊スタイルに見えた。そう思えば、マナーも良く愛もあるデジーレ。メルクリは古典より、後半のモダンや闘牛士の踊りの方が良かった。

 

  「薔薇の精」さいとう美帆、アントン・コルサコフ

(タランダ監督は、照明・音楽他にも神経を使い、ガラでも劇の場を作ることを疎かにしない。演目間の切替や、演目順の選択も巧い。前の演目の感動を、次の演目の始まりで削いだ時が一度も無かった。結果、世を覆うほどの大スターの踊りではなくても、一つ一つ作品が心に入ってきた。)

テープ演奏ながら、この演目ではウェーバーの名曲の始まりを、繊細なセンスで小さな音量から上げていき、劇世界へ引き込んだ。簡素な舞台ながら、照明効果で、床に落ちた大きな窓の影も、ロマンティックで幻惑的な場を暗示させる。

コルサコフの薔薇の精は、珍しいダークレッドの衣装。白いキャップを被った白ドレスのさいとう美帆の乙女と、腕を組み仲良く踊る。薔薇の精はジャンプやや高め。真摯な姿勢が品を生んだ。腕や脚の振りは、本格的な「薔薇の精」の踊り方を知る人には、物足りないかもしれない。乙女は、王子様に出会った様な憧れの目で、薔薇の精を見上げて踊る。目を開けていて、眠っている乙女には見えにくいが、見下ろすコルサコフと目線がかみ合い、二人の交流に引き込まれた。この作品は、本来こう踊るのが正しいかどうかは別として、私的にはウェーバーの音楽に、二人の淡い恋の雰囲気が合っていたと思う。

 

☆「Ne me quittes pas~ 行かないで If you go away」アンナ・パシコーワ

派手顔で見栄えのするプロポーションを持つパシコワ。青いノースリーブのロングドレスで、手を、脚を振り上げ、伸びやかに踊った。振付より、ダンサーの存在感だけ感じた踊り。

 

*「白鳥の湖」2幕 ダリヤ・スホルコワ、シリル・ピエール

一転して、王道を行く古典バレエが新鮮。演目の組合わせが巧い。スホルコワは派手さはなくても、端正な自分の白鳥をきちんと踊った。白のオデット。王子は衣装が灰青色の衛兵風の上着にタイツで、ジークフリートに見えない。が、2幕ジークフリートのストーリーの伝わる演技を心をこめて行い、プリマと台詞の聞こえるようなやりとりもあって、途中から気にならなくなり。版は、王子と白鳥の想いが客席によく伝わるように、若干の改変を加えてあり、大変よく出来ている。(インペリアルバレエの版?)ほんとに、ジークフリートと白鳥姫の世界を感じた。感動。

 

*「ドン・キホーテ」~ジプシーの踊り 高橋 晃子

8月の東京バレエ団の「ドンキ」でのジプシーの踊りは、「ジプシーの哀しみ」を伝える踊り。対してこの高橋さんのジプシー娘は、時に暗い現実を、はねかえす明るさ、そんなものを感じさせる笑顔で踊った。そう、きっと本来のジプシーの踊りとはこうなのだと合点。ロシアンのキャラクテールの踊りの迫力には及ばなくても、きめ細かい表現で人物像を浮かび上がらせたのは、日本人的繊細さなのでしょう。ロシアのバレエアカデミーで学んだ日本人らしい踊り。

 

*「ライモンダ」アダージョだけ ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ

ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ

御大ステパネンコ!今日は白銀色のチュチュ。胸元の色気以外は、今日は女っぽくなかった。メルクリとの前回世界フェスの時の方が、出てきただけで場を圧するスターオーラは強め。でも来てくれただけで嬉しい。メルクリのジャンは、あの白いボリショイ服に白マント。世界フェスの時より、マント長くした分もたついて見えた。《ついでに過去のダンサーとの比較。》★本日のメルクリのジャンの白マント姿感想→コスプレ。★フィーリンのジャンの白マント姿→宝塚風★ウヴァーロフのジャンの白マント姿→別世界。世俗的な感じが無い。バレエ特有世界。

 

  「くるみ割り人形」アリヤ・タニクバエワ

 

  「シェヘラザード」ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

本日の白眉!素晴らしい!官能的で、完成されたアダージョ。ルジマトフと踊る時のマハリナと違い、ゾベイダが幸せそうに笑う。マリインスキーのクズネツォフは、女性と性の悦びを共有できるいい男を演じると、ダントツですね。ゾベイダが腰を動かす、金の奴隷の両手が、上体が、それに感じて動く。身体の一部を動かす度に、互いの身体が何かを感じて踊ってる。滴るほどのエロス表現があっても、ダンスが手抜きにならないのもいい。舞踊的にも「ザ・シェラザード!」。ストーリー上も、今まで見た中で一番オーソドックスに、王の寵姫が内緒で金の奴隷と愛し合ってる感じ。官能的なペアは他にもいるけれど、男性が女性と官能の悦びを共有して、女性に至福感があること、男性に女性の身体への尊敬や崇拝が見えること、エロス表現が自然で嘘がないこと、エロエロだけど、見て嫌な感じがしないのは、きっと品があること、その点で、稀有なダンスを見ました



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